グラフィックレコーディング(グラレコ)とは?書き方や活用法を解説
オフィスレイアウト・デザイン・設計
グラフィックレコーディングとは記録方法の一つです。1970年代のアメリカで活用されたのを機に、世界中に広がりました。近年は日本でも、関連書籍が複数出版されるほど注目されています。
本記事では、グラフィックレコーディングの基本的な意味やメリット、ビジネスシーンで実践するポイントを解説します。
目次
グラフィックレコーディング(グラレコ)とは
ミーティングでの議論内容や提案を、絵や図形などのグラフィックを用いてリアルタイムにまとめる手法です。「グラレコ」と略されることもあります。ミーティングの中から重要となる要素をビジュアル化することで、参加者によりわかりやすく共有できるのが特徴です。また、ミーティングの内容だけでなく、書籍や動画の内容をグラフィックでまとめたものを指すケースもあります。
実際にグラフィックに起こす人は「グラフィックレコーダー」と呼ばれ、クリエイティブな職種として多くの人が活躍しています。
グラフィックレコーディングのメリット
グラフィックレコーディングは、人の思考をわかりやすいイラストで表現するビジュアルシンキングがベースになっています。活用すると、物事を正確かつわかりやすく説明することが可能です。
■議論の全体像の整理
多くの人が参加するミーティングでは、いつ・誰が・何を発言したのかがわかりにくくなる側面があります。その結果、議論の要点や結論が見えにくくなるとミーティングの目的そのものを見失ってしまうかもしれません。
ミーティングを有益なものにするためには、参加者全員が議論の全体像を把握する必要があります。そこで役立つのがグラフィックレコーディングです。
グラフィックレコーディングを活用すると、ミーティングの進行に沿って要点をビジュアル化できます。どのような意見が出たのか、どのように議論が進んでいるかなど、ミーティングの全体像を把握できるようになるでしょう。
また、グラフィックレコーディングには、議事録としての機能を持たせることも可能です。ポップなグラフィックで要点がわかりやすくまとめられているため、テキストだけの議事録に比べて直感的に伝わりやすくなります。
■議論の活性化
グラフィックレコーディングを活用すると、重要なポイントを直感的に理解できるため、参加者が意見を出しやすい環境を作ることが可能です。
また、参加者のイラストを添えて発言をまとめると、まだ発言していない人も顕著に見えてきます。すべての参加者に意見を求めることで、新たなアイデアの創出につながる可能性があります。
■議論に参加する人の意識向上
参加者全員の意識を向上させるためにも、グラフィックレコーディングは効果的です。
一般的なミーティングでは、高い立場の人の発言力が強くなりがちです。そのため、発言すること自体を躊躇する参加者がいるかもしれません。
グラフィックレコーディングは価値のある情報をビジュアル化するため、立場に関係なく、すべての参加者が対等に扱われます。自分の意見が反映されれば、議論に参加しているという意識を持てるため、参加者全員に一体感が生まれるでしょう。
グラフィックレコーディングの書き方と活用法
グラフィックレコーディングでは、わかりやすく書くことがポイントになります。書き方と活用法を解説します。
■グラフィックレコーディングの目的を明確化
まずは誰にどのような目的で記録するのかを明確にしましょう。どのように表現すれば伝わりやすいのかを考えます。
グラフィックレコーディングをおこなうおもな目的は、次のとおりです。
- 要点の整理
- 振り返り
- 対話のきっかけ作り
- 誰かに伝える
たとえば要点を整理したいときは、ミーティングの全体像が把握できるように意識すると伝わりやすくなります。
対話のきっかけを目的にする場合は、誰が・いつ・何を発言したかを残しておくと、議論の活性化につながる可能性があるでしょう。
■内容に合わせてレイアウトを工夫
グラフィックレコーディングは「参加者が直感的に理解できること」が重要です。書くことが目的にならないよう注意しましょう。誰に・どのような目的で作成するのかがはっきりすれば、書くべき要点やレイアウトが見えやすくなります。
状況別のおもなレイアウトパターンは、次のとおりです。
- タイムライン型
- 吹き出し型
- 発散型
タイムライン型
ミーティングのテーマや内容がある程度決まっている場合は、進行に沿って時系列に書き出していくタイムライン型がおすすめです。原因から結果、課題から提案の流れを矢印で表現することで、論理展開が視覚的にわかりやすくなります。
吹き出し型
対談やインタビューの場合は吹き出しを使用すれば、誰が・何を発言したかが一目で把握できます。やり取りをよりわかりやすくするためには、発言者ごとに色を変える、問いと答えの吹き出しをセットで書くなどの工夫をすると効果的です。
発散型
参加者のやり取りをまとめる場合は、発散型が適しています。発散型はテーマを中心に置き、参加者の発言を放射線状にグルーピングしながらまとめるレイアウトです。議論の展開が一望できるため、新たなアイデアが生み出される過程を把握しやすくなります。
■シンプルなグラフィックを意識
グラフィックレコーディングはミーティングの進行に合わせて書く必要があるため、スピード感も重要です。
よりわかりやすく、早く書くためには、できるだけシンプルな絵や図形を使用することがポイントです。簡単なイラストであれば、〇や△、□といったシンプルな図形を組み合わせるだけで表現できます。
たとえば△の下に□を描けば家になり、△の下に縦の一本線を描けば木になります。〇の中に目や口を描き、人の表情を表すことも可能です。また、できるだけ太い線で書くことを意識しましょう。
■作成したグラフィックを共有
グラフィックレコーディングは、書くだけで終わりではありません。参加者や非参加者などのすべての関係者と共有することで、ようやく効果を発揮します。
作成したグラフィックはリアルタイムで共有しながら書くため、その場で議論内容の振り返りや深堀りがしやすくなります。議論を深めるには、参加者の意見や感想を書いたふせんをボードに貼り付けてもらうのも効果的です。
非参加者には、グラフィックをプリントアウトしたものを配布する、データをメールで添付するなどの方法でシェアしましょう。
グラフィックレコーディングの実践のコツ
グラフィックレコーディングは、誰もがすぐにうまく書けるわけではありません。わかりやすくかつスピード感をもって書くためには、事前に知識を深めておくことが大切です。ここでは実践のコツを解説します。
■事前に議論のテーマを勉強しておく
わかりやすいグラフィックを書くためには、議論のテーマに関して一定の知識が必要です。
知識が不足したままでは、うまくグラフィックにまとめられない可能性があります。グラフィックは、テーマの内容を理解してからこそ表現できます。そのため、すぐに内容を咀嚼できるよう、事前にテーマに関する知識を身につけておくようにしましょう。
■グラフィックレコーディングに関する本を読む
日本でもグラフィックレコーディングが注目されるようになり、数多くの書籍が出版されています。書籍のなかには、日本におけるグラフィックレコーディングの第一人者が執筆したものもあります。
たとえば初心者向けの入門書は、グラフィックレコーディングの基礎知識からグラフィックを作成するまでの一連の流れが把握できるので、自社の課題を解決する際に役立つでしょう。
また、グラフィックレコーディングのスキルが身につくワークブックも出版されています。これらの本を活用すれば、ビジュアルシンキングの基本からグラフィックレコーディングに必要な知識までを学ぶことが可能です。
■グラフィックレコーディングの講座に参加する
グラフィックレコーディングの知識やスキルは、オンライン講座でも学べます。オンライン講座なら自宅でも学べるため、近くにスクールがない場合でも利用しやすいのが魅力です。
費用や講義内容はそれぞれ異なるため、自分に適したオンライン講座を選びましょう。
グラフィックレコーディングに役立つツール
グラフィックレコーディングを活用したいけれど「手書きのイラストは苦手」「うまくまとめられるか不安」といった人もいるでしょう。ここからは、おすすめの商品をご紹介します。
■インタラクティブホワイトボード
インタラクティブホワイトボードとは、資料やデータなどの端末情報を画面に表示できるホワイトボードです。必要な情報を直接書き込める機能やデータとして保存できる機能など、さまざまな機能が備えられています。
また、Web会議機能があれば、離れた場所にいる従業員とオンラインでつなぎ、資料を共有しながらミーティングをすることも可能です。
これまでは、おもに教育機関で活用されていましたが、ビジネスシーンでもニーズが高まり、導入する企業が増えています。
アイリスグループでは、Web会議を重視したタイプのインタラクティブホワイトボードを提供しています。話し手を見つけるオートクローズアップ機能や自動ノイズキャンセリング機能など、AIを活用したホワイトボードです。
また書き込んだ画面をそのまま参加者へ配信できるほか、、手書き文字変換機能で手書きの文字や図形をスマートに変換できます。
導入検討の企業へサンプルデモも実施しておりますので、興味をお持ちの場合はぜひご相談ください。
アイリスオーヤマ:AIインタラクティブホワイトボード
■グラフィックレコーディング向けアプリ
グラフィックをスムーズに作成するためには、グラフィックレコーディング向けアプリがおすすめです。
アプリには、アプリ上でグラフィックレコーディングをおこなうものと、紙やホワイトボードに書いたものを取り込んで編集するものがあります。
初心者の方は、スケッチを描く、文字を書き込むといったシンプルな機能の使いやすいアプリを選びましょう。
グラフィックレコーディングの注意点
グラフィックレコーディングをする際には、受け取り手にわかりやすく表現することが大切です。しかし、議論内容が省略されてしまったり、受け取り手に余計な印象を与えてしまったりすることがあります。
■議論内容が省略されてしまうことがある
グラフィックレコーディングでは、ミーティングの進行に沿ってスムーズに対応する必要があります。グラフィックの作成が遅いと参加者の理解が追いつかず、議論を滞らせてしまうおそれがあるためです。
グラフィックレコーディングはあくまでも要点を把握するための手法なので、詳細な内容までは記録されません。記載されなかった内容の中に、有意義な情報が含まれている可能性もあるため、見逃さないようにしましょう。
■「与える印象」を十分に考慮する
グラフィックレコーディングの大きな課題の一つは課題は、絵や文字が受け取り手に余計な印象を与えてしまうことです。たとえば、本来重要ではない箇所を太字や強い色にしてしまうだけで、「重要な要素」として印象を残してしまう可能性があります。
グラフィックレコーダーとして、ミーティングの内容にあわせてメリハリをつけた書き方を工夫する必要はあります。「どこを強調するべきか」をしっかりと考慮したうえで、グラフィックに反映させることが大切です。
■グラフィックでは認識しにくい人もいる
グラフィックレコーディングが登場するまでは、ミーティング内容は議事録としてテキスト情報でまとめられるのが一般的でした。そのため、文字情報に慣れている参加者は、絵や図形を使ったグラフィックを認識しにくい可能性があります。
絵や図形による表現はわかりやすいとされる一方で、参加者によっては余計な情報になってしまうこともあります。より多くの参加者にわかりやすく伝えるためには、グラフィックレコーディングにこだわる必要はないかもしれません。グラフィックレコーダーは、参加者層やテーマに応じて表現を工夫することが求められています。
グラフィックレコーディングの気になる疑問
最後に、グラフィックレコーディングに関する気になる疑問をご紹介します。
■グラフィックレコーディングは依頼できる?
グラフィックレコーディングを職業としている人はいるため、プロに依頼することは可能です。
ただし、プロに依頼すると1時間当たり数万円程度の費用がかかります。具体的にどのくらいの費用がかかるのかは、時間と内容によって変動します。
また、内容を編集してイラスト化したい場合は、別途イラスト制作の依頼が必要になります。
自社でグラフィックレコーディングを書けそうな人材がすぐに見つからない場合は、プロに相談してみるのも良いでしょう。
■グラフィックレコーディング向けの資格はある?
現時点(2023年1月時点)で、グラフィックレコーディングに関する資格は存在しません。プロとして活動しているグラフィックレコーダーもいれば、趣味や副業で実践している人もいます。
それぞれ専門分野や得意分野があるため、依頼する際にはテーマや内容に適した人を選びましょう。
まとめ:自社でグラフィックレコーダーを育てるのも選択肢の一つ
ミーティングの内容をグラフィックに反映させるためには、情報を理解するスキルや情報を再構築するスキルが必要です。そのため、イラストが得意な人でも、誰もがグラフィックレコーディングの高いスキルを持っているわけではありません。
グラフィックレコーディングをプロに依頼する方法もありますが、人によってスキルに差があり、費用もかかります。
自社でグラフィックレコーディングの導入を検討しているなら、小規模なミーティングからグラフィックレコーディングを取り入れ、グラフィックレコーダーを育ててみてはいかがでしょうか。