ABWとは?フリーアドレスとの違いやメリット、導入手順を解説【事例あり】
フリーアドレス

ABWとは、業務内容に応じて自由に働く場所を選択できる働き方のこと。テレワークやハイブリッドワークなど新しいワークスタイルを導入する企業の中でも、特に注目されている働き方です。本記事ではABWの概要やメリット・デメリット、混同しやすいフリーアドレスとの違い、ABW導入の手順やポイントを解説します。
目次
ABWとは

ABWは業務内容や各々の状況に応じて働く場所を選べる「働き方」を指します。ABWの定義や特徴、類似するフリーアドレスとの違いを解説します。
ABWの定義・特徴
ABWとは「Activity Based Working」の略称で、時間や場所にとらわれず、働く場所を主体的に選択できるワークスタイル(働き方)のことです。その日の仕事内容に合わせて好きな場所・座席で働けるのが特徴で、オフィス内外を問わず、自宅やカフェなども就業場所に選べます。
<例>
- 個人ワークに集中したいとき:集中ブースや自宅で作業する。
- Web会議をおこなうとき:Webミーティングブースを利用する。
- チームでミーティングをおこなうとき:オープン会議スペースやリフレッシュスペースを使用する。
ABWは、2000年代後半にオーストラリアのオフィスが導入したことを機に広がりました。生産性の向上が期待できるワークスタイルとして欧米でも注目を集め、2010年代後半からは日本でも導入する企業が増えています。
ABWとフリーアドレスの違い
ABWとフリーアドレスの違いは、おもに働く場所と導入の目的です。ABWが働く場所を主体的に選択できる「ワークスタイル(働き方)」であるのに対し、フリーアドレスは固定席を設けずオフィス内の好きな席を選べる「座席ルール」を指します。フリーアドレスではノートパソコンや書類など仕事に必要なものを持ち、好きな席で作業します。
<ABWとフリーアドレスのおもな違い>
ABW | フリーアドレス | |
働く場所 |
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導入の目的 |
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ABWを導入するメリット

ABWを導入すると個人に適した仕事環境を実現できる、優秀な人材を確保できるなど、従業員と企業のそれぞれにメリットがあります。ここでは、ABWを導入するメリットを解説します。
生産性が向上する
ABWを導入すると、従業員は業務内容に合った環境を選べます。
たとえば個人ワークに集中したいときには、周囲の視線や雑音が遮断された場所を選択したほうがよいでしょう。新商品開発に向けたミーティングでは、開放的なオープン会議スペースやリフレッシュスペースのほうがアイデアを生み出しやすいかもしれません。
業務内容に合わせて働く場所を選択することは、作業の効率化や生産性の向上につながります。
従業員のモチベーションアップにつながる
ABWの導入により、企業は従業員それぞれの状況や業務内容に応じた労働環境を提供できます。従業員が働きやすく、快適な労働環境を提供することは、従業員の満足度や仕事に対する意欲の向上につながります。
また、ABWでは働く場所や時間を選べるため介護や育児と両立しやすく、ワークライフバランスの向上にも寄与するでしょう。
優秀な人材を確保できる
ABWの導入により、どこでも就業可能な環境を提供できるようになると、今まで時間と場所の拘束によって就業をあきらめざるを得なかった人も、仕事にアプローチできます。これにより、求職者に魅力を感じてもらいやすい職場になるでしょう。企業にとっても、居住地やライフスタイルを問わず人材を確保しやすくなるため、採用力アップにつながります。
また、介護や育児などプライベートな事情を抱えた従業員にも働きやすい環境を提供することで、従業員の満足度が向上すれば、離職率の低下が見込めます。
コスト削減の効果が見込める
ABWを導入すると、すべての従業員が出社する状況が減るため、これまでと同じオフィス面積は不要になり、賃料のコストカットにつながります。
また、各従業員がさまざまな場所で仕事をするABWでは、ペーパーレス化の推進が欠かせません。紙の資料を廃止すれば紙代やインク代の削減に加え、紙の資料を保管するスペースも削減できます。
ただし、オフィスを縮小するためには、移転先の選定やプランニングなどの準備が必要です。ABWの導入を機にオフィスの縮小を検討する際には、アイリスチトセにご相談ください。移転のプランニングから引越しまでをトータルでサポートします。
ABWを導入するデメリット

ABWを導入する際のデメリットを解説します。よりスムーズにABWを導入するために、課題も把握しておきましょう。
勤怠管理や評価が難しい
ABWの導入より、オフィス以外の場所で働く従業員の労働管理や、評価体制の見直しが必要になります。現状の労働管理では、従業員の労働時間や業務内容を把握しにくい可能性があります。勤怠管理や評価体制の見直し、ABW導入に向けてのルール策定が必要です。
従業員同士のコミュニケーション不足を招く
オフィス以外の場所で働く従業員が増えると、従来のような顔を合わせたコミュニケーションが減ってしまいます。従業員同士がコミュニケーションをとれるよう、朝礼や座談会などの顔を合わせる場を状況に応じて意図的に作る工夫をするとよいでしょう。
次のコラムでは、リモートでのコミュニケーションにおいてツールをうまく活用して取り組んでいる企業の事例を紹介しています。
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【インタビュー】株式会社ファイアープレイス「つながりをデザインする会社が考えるこれからの働き方とは?」
セキュリティ対策が必要になる
ABWによって従業員が社外で仕事をする場合、デバイスの紛失や第三者による盗み見などによる情報漏洩が懸念されます。オフィス内であれば高いセキュリティが保たれますが、カフェや自宅などで仕事をする場合は、リスクが高まるので注意が必要です。
特にフリーWi-Fiのような安全性の低いネットワークへの接続は、情報漏洩の危険性が高いので注意しなければなりません。情報漏洩への対策には、安全性の高いネットワークであるVPNの導入やソフトウエアの認証設定などが効果的です。
ABWの導入手順

ABW導入の手順を、注意点とともに解説します。
1. ABW導入の目的を明確にする
ABWを導入する際には、導入目的を明確にすることが大切です。目的は「生産性を向上させたい」「従業員に主体性を持って働いてほしい」「優秀な人材を確保したい」など企業によりさまざまです。
また、企業によっては、現在抱える課題を解決するためにABWの導入を検討しているかもしれません。その場合は課題を洗い出し、ABWの導入が解決につながるのかを十分に検討しましょう。
2. 従業員の働き方を調査する
ABWの導入を成功させるために、従業員の働き方を調査しましょう。アンケートやヒアリングで従業員の声を聞き、働きやすい労働環境の整備に向けて取り組むことが大切です。
アンケートは、インターネットによるアンケートシステムを利用する方法もあります。従業員から寄せられた意見を定量的に分析することで、現状や課題を把握しやすくなります。
3. ワークスペースのレイアウトを検討する
ABWを導入する目的に合わせて、レイアウトを検討しましょう。たとえばコミュニケーションの活性化を目的とした場合は、オープンなミーティングスペースやカフェスペースを設けると効果的です。
ただし、レイアウト変更の際には動線の確保やセキュリティ面など、専門的な知識が求められます。自社だけで完結せず、専門会社に相談すると安心です。
4. ネットワーク環境やセキュリティを整備する
ABWの導入と合わせて、ノートパソコンやWeb会議用のコミュニケーションツールの導入や、IT環境の整備が必要です。
従業員がオフィス以外でも仕事をする場合は、情報漏洩を防ぐセキュリティ対策やツールの導入に加え、情報の持ち出しに対する教育も実施しましょう。
ABWを導入する際のポイント

ABWを導入する際のポイントを解説します。ABW導入後は従業員の働き方が変わるため、効果が発揮されるよう準備を進めましょう。
導入目的を周知する
ABW導入の目的を明確にし、従業員にしっかりと周知しましょう。ABW導入前の働き方をしてしまう、同じ人が同じ場所に座っているなど、ABWという働き方が定着せず効果が得られないケースもあるためです。
従業員との面談やアンケートをABWの導入前におこない、事前に意見を聞いておくのが理想です。その内容を反映すれば、従業員がABW導入による環境の変化を受け入れやすくなり、成功へとつながるでしょう。
制度を整える
ABW導入により働く場所が多様化すると、個人に目が届きにくくなるため、労務管理や評価が難しくなります。また作業内容に適した仕事場所や、ベストなパフォーマンスを発揮できる仕事場所を、従業員が主体性を持って選ぶ必要もあります。
従業員の評価方法や管理方法を見直す、自発的に取り組むための人事やフォロー体制を取り入れるなど、社内体制を整えることが重要です。これらを整備しておかないと、せっかくABWを導入しても目的どおりに機能しない事態になりかねません。
環境整備をおこなう
ABWを導入する際には、フリーアドレスやネットワーク環境、セキュリティ対策、レイアウトの変更、ルールの整備など、多方面からの環境整備が必要です。
出社していれば気にならなかった社内申請や押印なども、オフィス以外で仕事をするようになると不便に感じることがあります。オフィス以外からも社内申請がスムーズに進められるツールの導入を検討し、非効率的な手間を省けるように環境整備をおこないましょう。
ABWの導入に向く企業の特徴

ABWの導入に向いている企業には、次のような特徴があります。
- 柔軟な社風の企業
意識改革や制度改革に対して従業員が柔軟に対応できる社風であれば、新しい働き方であるABWも受け入れられやすいでしょう。
- テレワークやITツールを導入している企業
テレワークやハイブリッド業務が浸透しており、従業員がITツールを使いこなせる企業であれば、ABW導入もスムーズに進められます。
- 社内コミュニケーションが良好な企業
ABWはコミュニケーション不足を招きやすいのが課題とされています。しかし、社内コミュニケーションが良好で、上司と部下の信頼関係が構築されている企業であれば、コミュニケーション不足に陥りにくいでしょう。
- 営業職がメインの企業
外出の多い営業職が多い企業もABWの導入に適しています。サテライトオフィスやカフェ、自宅など、その日の外出先に合わせた場所で働くことで移動時間の削減につながり、効率的に作業を進められます。
ABW導入の成功事例
最後に、ABWの導入によって働きやすい環境の整備や、仕事の効率化に成功した企業の事例を紹介します。
福島コンピューターシステム株式会社|コロナを起点にABWへシフト

福島コンピューターシステム株式会社では、コロナの流行による出社率の低下に合わせて、社内の環境を大きく変えました。在宅勤務に必要な設備・システムの導入、サテライトオフィスの設置によってリモートワーク可能な環境を整え、働く場所の選択肢を広げました。
また、席数を減らしたことで生まれたスペースに、リラクゼーションエリアを設置。異なる事業部やプロジェクトメンバーなど、普段会うことの少ない社員間のコミュニケーションを活性化するスペースになっています。
誰でも参加できるトークイベントも定期的に開催し、オンライン業務によるコミュニケーション不足の解消を図っています。
福島コンピューターシステムのインタビュー記事はこちら
【インタビュー】福島コンピューターシステム株式会社「オフィス改装は人への投資 ~自由な働き方がもたらすリクルート効果とは~」
株式会社ファイアープレイス|自由な働き方を実践

株式会社ファイアープレイスは、バーチャルオフィスやオンラインツールを使い、自由な働き方を実践しています。社員の働きやすさと効率化を考慮した結果、いつでも・どこでも働ける環境の構築にたどり着きました。
また実際に集まって合宿をおこない、チームの一員となる時間を設けることで、どこで仕事をしていても信頼関係が築ける工夫をしています。働き方に選択肢があることで、ワークライフバランスが充実した成功例です。
株式会社ファイタープレイスのインタビュー記事はこちら
【インタビュー】株式会社ファイアープレイス「つながりをデザインする会社が考えるこれからの働き方とは?」
村田機械株式会社|オフィス改修にともないフリーアドレス化を推進

村田機械株式会社はオフィスの改修にともない、フリーアドレス化を推進した企業です。フリーアドレス化推進により、顧客との対話は個人ブース、Web会議はソファブースと、業務に合わせて場所を選べるようになりました。また、テレワークの従業員が多いため、ABWに近い働き方であるといえます。
改修前にはアンケート調査や各部署の代表メンバーとの定例会を実施し、現場の意見をヒアリング。改修後にもアンケートを実施して、問題点が改善されたか調査しました。
コミュニケーションツールも積極的に取り入れ、テレワーク中心の従業員もオンラインでコミュニケーションがとれるよう工夫しています。
村田機械株式会社のインタビュー記事はこちら
ABWを導入して従業員の労働環境を整備しよう

働く場所・時間を選択できるABWの導入により、従業員の満足度や生産性向上が期待できます。また労働環境が快適であれば、求職者へのアピールになる、従業員の定着率がアップするなど、人材確保にもよい影響を与えるでしょう。
ABWの導入はメリットが多いですが、オフィスレイアウトや労働管理の見直し、セキュリティ整備などが必要になるため、予算内で実現可能か十分に検討することも大切です。
ABWの導入によりオフィスデザインやレイアウトの変更をご検討の際は、専門知識と実績のあるアイリスチトセへお任せください。またオフィス移転を機にABWの導入をお考えであれば、アイリスグループの総合力でレイアウトのプランニングから引越しまで、トータルにサポートいたします。