【インタビュー】福島コンピューターシステム株式会社「オフィス改装は人への投資 ~自由な働き方がもたらすリクルート効果とは~」

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【インタビュー】福島コンピューターシステム株式会社「オフィス改装は人への投資 ~自由な働き方がもたらすリクルート効果とは~」

業務系のシステム開発を行う福島県郡山市のリーディングカンパニー「福島コンピューターシステム株式会社」。今回は2022年12月~2023年6月にかけて行った本社3フロアの改装について、会社のブランディングを担うCBO(最高ブランド責任者)兼、業務革新センター長の田母神正彦さんにインタビューを行いました。

コロナを起点にリモートワークにシフト

早速ですが、貴社の事業内容を教えてください。

弊社は、業務系のシステム開発をはじめ制御・組込系のシステム開発を行なっています。

また、東日本大震災以降は、医療や再生可能エネルギー、ロボット関連分野などの、福島県の復興・振興に繋がる事業に積極的に取り組んでいます。

具体的には郡山市に産業技術総合研究所(産総研)が開所した、福島再生可能エネルギー研究所(FREA)に、「再生可能エネルギーの大量導入を支える新技術」を連携開発する地域のパートナー企業として、弊社の技術者・開発者が参画しています。

ありがとうございます。

では、今回オフィス改装にいたった経緯・きっかけを教えていただけますか。

きっかけとしては2020年の新型コロナウィルスの流行が一番大きいと考えています。

それまで出社率100%の勤務形態でしたが、コロナをきっかけに出社率が常時1020%で推移するようになりました。そのころからフリーアドレスやABWといったワードが社内で議論されるようになりました。

コロナによって半強制的に働き方が変わる中で、会社として働くスタイルや、それに合わせた環境に変えていこうとなったのですね。

新型コロナの流行以降、在宅勤務ができるための設備とシステムを直ちに導入しました。それはかなり早かったと思います。全員がリモートワークできる環境を整備したことで、在宅勤務を基本とした働き方にシフトする様、会社のルールを定めました。

そして運用がある程度定着したことで、本社オフィスのフリーアドレスの整備を行いました。

あとはサテライトオフィスも設けました。それによって本社オフィスだけでなく、自宅に近いサテライトオフィスを活用して就業するというような働き方が可能となっています。

サテライトオフィスはコワーキングスペースのようなところに契約をしているのでしょうか、それともテナントとしてオフィスを構えているのでしょうか。

都内は品川駅港南口(品川インターシティ)にコワーキングスペースを契約し、東京オフィスを設けています。県内では廃校となった小学校(旧石森)を活用した施設にテナントとして田村開発センターを設けています。

出社率が10~20%くらいということだったのですが、今回の改装によって全社員分の席は確保されているのでしょうか。

全社員が一度に出社することはほぼない前提で、2階に60席、3階に63席を設けています。当初の席数から比較すると67割まで落とした席数にしています。よって全員分の席は確保していません。

コロナになってテレワークにシフトした企業の中には、コミュニケーション不足が顕在化したであるとか、それによって出社をベースにした方がいいだろうというような企業も出てきましたが、テレワークを基本とする御社がこのような問題に対して独自に取り組んでいることなどはありますか。

はい、幾つかあります。例えば「ザツダン会」と称した全社員が参加できる自由テーマでのトークイベントを開催するなどみんなで話し合うコミュニケーションの場を定期的に設けています。

また、1on1ミーティングで上司やメンターと関わり合いを増すことで、コミュニケーション不足の解消を図っています。

そういったイベントやコミュニケーションを増やすことでエンゲージメントを高めているということですね。

全てがオンラインでいいかというと、人材育成という点で問題が一部出てきていることは事実です。そういったことを踏まえて、現在計画出社というものを検討し始めています。

100%リモートワークを目指すために、どういったやり方をすればそれが実現できるのか、リアルとリモートのハイブリッドを手探りで模索しているところです。

リモートワークのメリット、デメリットが顕在化し、多くの企業が出社率を増やす方向に動く中で、敢えてリモートワークを基本とした働き方に舵を切った理由はなんでしょうか。

大きな理由には、リモートワークに置いても生産性が変わらなかった(業績が落ちなかった=数値的根拠が取れた)点です。

それと、社員がリモートワークを何よりも望んでいることに有ります。

自由な働き方の選択は採用面で大きなアドバンテージ

働き方の変化に伴い実施した、今回のオフィス改装の狙い(目的)を教えてくれますか。

3つあります。1つ目はこのリラクゼーションエリア(4階)を開設したこと。12割の出社率ということで、席数を減らしたことによって生まれたスペースを有効活用することです。

2つ目は、フリーアドレスを導入したことで、以前は席が離れていた社員や、フロアの異なる事業部や、異なるプロジェクトメンバーとのコミュニケーションを活性化することです。

出社率が減ったメリットとして、オフィススペースに生まれた余剰スペースを有効活用したことで、リラックスできる空間やコミュニケーションが図りやすいような仕掛けが生まれたということですね。

はい。あと3つ目がリクルート効果です。出社を基本としない働き方というのはグローバルな人材も含めてロケーションを意識しない採用が可能になります。そういったリクルート効果を1番期待しています。

採用活動を進めていく中で、「在宅勤務はできますか?」と質問して来る学生が非常に多いのも事実です。

例えば2024年度採用に関しては、入学当時からオンラインで授業を受けてきた学生さん達です。

所謂デジタルネイティブ世代です。私達よりオンラインでのコミュニケーションの取り方に慣れていると言いますか、必然的にそういった環境のなかで学んできた学生がほとんどです。

それは今の就活生や新卒ばかりではなく、今年の新入社員も同様です。

その中でフリーアドレス、ABWといった働き方は、今の新卒、新入社員にとってはある意味当たり前なスタイルなのかなと私は考えています。

リモートで仕事ができるというのが採用のメリットの1つだとおっしゃいましたが、他方オフィスそのものは採用のプラスになっていますでしょうか。

働き方改革で言われている「自由な働き方の選択」と合わせて、この改装されたオフィス=ハード面と合わせて見ていただいたときに、「こういう環境で働いていきたい」と思ってもらえる効果は十分にあると思います。

企業側の立場として、どういったメッセージをオフィスに込められましたか。

1つは先ほども申し上げた、コミュニケーションを通してリアルな場の価値を高めることです。もう1つは「自由な働き方の選択ができる」ということを、このオフィスで体現したことです。ここのオフィスに限らず、サテライトオフィスも含めてどこでも自由な時間、自由な場所で働けるということです。

今回リラグゼーションフロアでインタビューを行っていますが、壁面に御社のメッセージが書かれています。これにはどういった意図があるのでしょうか。

ブランディングの1つとして最も重要視していることが、会社の企業理念を浸透させるということです。会社が大切にしたい価値観を共有することで全員が同じベクトルで仕事を進められるようになります。理念が浸透することで「働く意義」を見出し易くなります。

その結果、エンゲージメントやモチベーションの向上が期待できます。さらに、「働く意義」を感じやすい職場で有れば、離職率の低下・定着率にも繋がります。

理念が浸透している企業には、その理念に共感してくれる人が自然と集まると信じています。

オフィスに出社して、そういった自社の理念に触れてもらうことで、浸透させていこうという意図ですね。

確かにここにあれば、このフロアを使用するみなさんが目にしますね。

ポップな文字で「なんだろうこれは」、と必ず目に入ります。入口から入って歩いてくると自然と入ってくるのが企業理念とタグラインです。「創る未来は想像以上」という。

これはアイリスさんからの提案でしたが、すごく良い提案をいただいたなと思っています。

現在、オフィス改装が終わり実際に社員の皆様が働いていますが、社員の意見や反応はいかがでしょうか。

まだアンケートは取っていませんが、概ね好評だと思います。

在宅でなかなか出社できないある社員が言っていました「自分の会社じゃないみたいです。」と(笑)。

こんなにも変わるものなのか、と。そういった意見も聞いています。

SDGsに対する意識の浸透

話は変わりますが、今つけられているバッジや、御社のHPなどでもSDGsに取り組んでいるとありますが、具体的にはどんなことに注力されているのでしょうか。

当社はSDGs17のゴールのなかの10のゴールに取り組んでいます。2025年、2030年までに到達すべき数字目標というものを明確にSDGsブックという形にして全社員に配布し共有しています。

例えばワークライフバランスの中のシニアの活用では、現在65歳までが継続雇用の年齢ですが、当社は2030年までに70までに延長しようということをSDGsの目標にしています。2025年までには67歳の中間目標も設定しています。

会社が抱える経営課題はSDGsを基軸に「それはSDGsに沿った考え方なのか?」と言う観点で決定していると言えます。

ありがとうございます。

その繰り返しにより会社全体にSDGsの意識が浸透しているのですね。

ちなみに今回のオフィス改装を弊社に選定いただいたポイントは何かありましたか。

なぜ弊社にお声がけいただいたのでしょうか。

(本案件は)コンペでした。メーカー、コンサル業者など7社にお声掛けさせていただいて、その中でプレゼン資料をいただき選定しました。

アイリスさんは提案を含めたフットワークが非常によかったことが大きいです。2018年に一度内装の基調を含めてある程度整備したということはお話したと思いますが、あの時は正直大変でした。1人で様々な業者さんと素材から何から全て打ち合わせをして決めるという大変な経験をしたので、今回は完成イメージとキーワードだけを伝え、フリーアドレス・ABWのデザインをして頂きました。

限られた部材や仕様の中から選択するだけでしたので大変楽でした。

各業者との工程調整であったり、業者ごとに打ち合わせが必要だったりと大変ですからね…。

そこをコーディネート含めてコンサル的にお話ができる企業ということで、メーカーにある程度お願いしました。

そういう意味でアイリスさんが一番よかったです。私は今でもこの選択は間違ってなかったと思っています。本当に(当社営業担当の)佐藤さんとお会いできてよかったです。ここちゃんと使ってくだいね(笑)

オフィス改装は人(採用)への投資

働く価値の向上に向けて現在取り組んでいるものなどがあれば教えてください。

在宅が基本で出社しなくてもいい御社があえてオフィスを改装した、その本質的なところもお伺いしたいです。

すべては「リクルート」に結びついてくると考えています。弊社のような労働集約型のビジネスモデルの会社は、人が財産、人がすべてです。

人が売上に直結するということです。

今後働き手が益々少なくなる中で、勝ち抜くためのキーワードは「人の採用」です。人が集まらない企業は存続出来ない。その考え方のもとに採用というところを継続して注力していかなければなりません。

人の教育と採用。そこに投資せずして何に投資するのかという感じです。

今回のオフィスへの投資も、人ではないと言われるかもしれませんが、福利厚生を含めた採用への投資と考えています。

オフィス改装は人(採用)への投資、共感です。

では、最後に一言お願いします。

なかなか3年後、5年後と先が見えない中、私たちはこれが正しいといった明確な答えがない中で、最適解を求めて選択して進めてきたというのが正直なところです。

私たちの会社が5年後、10年後、生き残る企業で有るためにも、誰かが同じく判断し選択し続けていかなければなりません。

未来に引き継ぎバトンを渡していくためにも、今いる社員、これから入ってくる社員に、会社の軸である理念や思いが伝わっていく。そんな風土作りをこれからも進めていきたいと思います。

 

新型コロナの感染対策を機にリモートワークに踏み切った福島コンピューターシステム。オフィス改装は、単なるニーズへの対応ではなく、これからの人材の確保と理念の浸透といった、同社が発展し続けるための礎づくりであることを感じられたインタビューでした。

本日はありがとうございました。

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