工事区分とは?オフィス移転時に注意したいA工事・B工事・C工事の違いを解説
オフィスレイアウト・デザイン・設計

工事区分とは、工事における「誰が業者を選定し、誰が発注し、誰が費用を負担するのか」を明確に定めたもので、A工事・B工事・C工事の3つに分類されます。工事区分を理解していないと、オフィス移転や改装の際に思わぬトラブルにつながるケースがあるため、区分ごとの内容を把握しておきましょう。本記事では各工事区分の違いや注意点、内装工事のポイント、事例などを紹介します。
目次
工事区分(A工事・B工事・C工事)とは

オフィス移転や改装を計画する際に必ず確認したいのが「工事区分」です。A工事・B工事・C工事の3つに分類されており、「誰が発注・施工を担い、誰の費用で、どの範囲を工事するのか」が明確に定められています。まずは、それぞれの工事区分について解説します。
工事区分の概要
オフィスの移転や改装に伴い発生する各種工事は、大きく3種類に分けられます。施工主体や費用負担の違いによって、「A工事」「B工事」「C工事」と呼ばれており、それぞれの役割を理解することが重要です。区分を理解しておくと、おもに次のようなメリットがあります。
- 予算計画を立てやすい:工事の費用負担者が明確になるため、予算の計画・管理がしやすい。
- スケジュール管理がスムーズ:工事の責任者が明確になるため、工程を管理しやすい。
- トラブル回避につながる:責任範囲が明確になるため、トラブルを未然に防げる。
一般的に、工事区分は工事区分表や賃貸借契約書に記されています。工事を検討した時点で内容を確認し、どの範囲まで自由に工事ができるのかを把握しておくことが大切です。
A工事・B工事・C工事の違いと特徴
A工事・B工事・C工事の違いと特徴は次のとおりです。
区分 | 業者選定 | 工事の発注 | 費用負担 | おもな対象範囲 |
---|---|---|---|---|
A工事 | オーナー | オーナー | オーナー | 建物の共用部分(外壁、エレベーター、共用トイレなど) |
B工事 | オーナー | テナント | テナント | テナント専有部分で建物全体に影響を及ぼす部分(空調設備、防災設備など) |
C工事 | テナント | テナント | テナント | テナント専有部分で建物全体に影響を及ぼさない部分(内装、配線工事など) |
A工事は、業者選定から費用負担まで、すべてをオーナーがおこなうため、テナントが関与することはほとんどありません。テナントに関わりがあるのは、工事の発注と費用を負担するB工事、そして業者選定から費用負担まですべてを担当するC工事の2種類です。
次の章から、それぞれの工事内容や対象範囲、注意点について詳しく解説します。
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【A工事】の対象範囲と注意点

A工事はオーナー主体で進めるため、基本的にテナントが関わることはありません。しかし、専有部の設備や工事がA工事になるケースもあるので、内容を把握しておきましょう。
A工事とは
A工事とは、建物のオーナーが主体となっておこなう工事です。施工業者の手配や費用の負担はすべてオーナー側でおこなわれ、テナント側が自由に変更できる範囲はありません。
A工事の対象範囲
A工事の対象範囲は、おもに建物の共用部分や構造部分です。
<A工事のおもな対象範囲>
- 建物の外装・外壁
- 共用トイレ
- エレベーター
- エントランス
- 廊下
- 階段
- 消防設備
- 給排水設備(共用部) など
A工事の注意点
テナント専有部であっても、賃貸借開始時から設置されている設備は、A工事として扱われるケースがあります。その場合、テナント側で自由に工事できないことがあるため、注意が必要です。事前に工事区分表を確認し、対象範囲を把握しておきましょう。
また、A工事では基本的に、費用や工事手配に関してテナントが負担するものはありませんが、共用トイレやエレベーターなど、テナントが日常的に使用する設備も工事範囲に含まれるため、工事のスケジュールや実際の対象設備を把握しておくことも大切です。
【B工事】の対象範囲と注意点

B工事ではオーナーが業者選定をおこないますが、費用は基本的にテナントが負担します。事前に詳しい内容を理解しておきましょう。
B工事とは
B工事とは、業者選定のみオーナーがおこない、工事の発注や費用負担などはテナントが担う工事です。オーナー主導で進むA工事と異なり、テナントの要望が反映される点が特徴です。B工事でオーナーに業者選定の権利があるのは、ビルの安全性や保守性に影響を及ぼす可能性があるためです。
なお、B工事ではテナントが費用を負担しますが、原則として工事対象物の所有権はオーナーに帰属します。
B工事の対象範囲
B工事の対象範囲となるのは、共用部に接する専有部のインフラや、建物の機能に関わる変更部分が中心です。
<B工事のおもな対象範囲>
- 空調設備
- 防災設備
- 防水設備
- 給排水設備
- 電気設備
- テナント専用の照明や電源の増設(幹線からの分岐)
- 共有部のセキュリティ設備 など
B工事の注意点
B工事は、業者選定がオーナー、費用負担がテナントと担当者が異なることから、トラブルが生じやすい工事です。特に多いのがコストに関するトラブルで、B工事ではオーナーが施工業者を指定する=テナント側は施工業者を選べないため、「予想外の費用が必要になる」「価格交渉がしにくい」などの問題が浮上することがあります。テナント側の費用負担が大きくならないよう、必要に応じて相見積もりや事前の費用確認を依頼するとよいでしょう。
その他にも、「工期が予定よりも長くなる」といったトラブルが生じるケースもあります。テナント・オーナー・施工業者で密なコミュニケーションをとり、認識を統一しておくことが重要です。
【C工事】の対象範囲と注意点

C工事は、A工事やB工事よりもテナントの要望がとおりやすい工事です。ただし、C工事ならではの注意点もあります。
C工事とは
C工事とは、業者選定から費用負担まですべてをテナントが担う工事です。そのため工事の自由度が高く、内装やレイアウトを自由に設計・構築しやすいのが特徴です。テナントのニーズを反映しやすい工事区分といえます。
C工事の対象範囲
C工事に該当するのは、専有部分の内装や設備工事など、建物全体に影響を及ぼさない範囲です。
<C工事のおもな対象範囲>
- 床・壁・天井の張替え
- オフィス家具の配置・設置
- LAN配線の配置
- 照明器具の取り付け
- コンセントやブレーカー、照明の増設 など
C工事の注意点
自由度の高いC工事ですが、工事の内容によってはビル管理会社やオーナーの承認が必要です。トラブルを防ぐためにも、承認が必要な工事内容かどうか、事前に確認しておきます。
また、C工事で導入した内装や設備は、退去時に原状回復を求められることが多いため、将来的なコストも見越した設計を意識しましょう。
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原状回復工事の基本を解説!費用をおさえてスムーズに移転完了させるポイント
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内装工事の費用目安

オフィスの内装工事にかかる費用は、坪単価10〜40万円程度が目安です。費用はデザインや材質にこだわるほど高くなる傾向があるため、工事内容と予算のバランスを意識することが大切です。
また、同じ施工内容でも業者によって費用に差が出る場合があるので、複数社に見積もりを依頼し、比較してみましょう。
内装工事の流れ

一般的に、内装工事は次の流れで進みます。
▼STEP1:目的・コンセプトの明確化
「企業イメージの向上」「働きやすさの追求」など、内装工事の目的・コンセプトを明確化し、それに合ったデザイン方針を設定します。
▼STEP2:施工業者の選定
複数の業者を比較し、実績・費用・対応範囲などを確認します。設計から施工までワンストップで依頼できる業者を選ぶとスムーズです。
▼STEP3:打ち合わせ・内装デザインの決定
業者と打ち合わせをおこない、コンセプトや要望を伝えた上で内装デザインを決定します。工事内容・費用・スケジュール・保証内容なども確認しておきましょう。
▼STEP4:契約・工事開始
契約締結後、工程表に基づいて工事が開始されます。進捗を随時確認し、必要に応じて修正を依頼します。
▼STEP5:検査・引き渡し・什器搬入
工事完了後に施主検査を実施し、問題がなければ引き渡し後に什器や設備を搬入します。
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オフィス内装工事の種類・費用相場・流れ|おしゃれなデザイン事例も紹介
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内装工事の業者選びのポイント

オフィスの内装工事を成功させるためには、信頼できる業者選びが重要です。後悔しないために押さえておきたい、業者選びのポイントを紹介します。
1. 実績や対応力を確認する
内装業者を選ぶ際は「実績は豊富か」「対応は丁寧か」など、過去の実績と担当者の対応を確認しておきましょう。似た業態の施工実績があるかどうかも重要なポイントです。
また、初回の打ち合わせや問い合わせへの対応スピード、提案内容のわかりやすさなども、信頼できる業者かどうかの判断材料になります。
2. デザインから施工までワンストップで依頼できる業者を選ぶ
スムーズな進行と完成度の高い空間を目指すなら、設計から施工までをワンストップで任せられる業者がおすすめです。工事ごとに異なる業者に依頼すると、伝達ミスやスケジュールのズレが生じやすくなります。設計意図を正確に反映した施工を実現するには、一貫対応が理想的です。
アイリスチトセでは、オフィス空間の企画・設計から内装工事、引越しまでをトータルにサポートします。レイアウト設計や動線設計に加え、働き方や企業イメージに合った空間づくりを提案しているため、内装にこだわりたい企業におすすめです。内装に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
アイリスチトセへのご相談はこちら
内装工事の成功事例
内装工事を検討する際は他社の事例が参考になります。おしゃれな空間づくりや働きやすさの向上、コミュニケーションの活性化などに成功した企業の内装工事の事例を紹介します。
内装全体の配色を揃えておしゃれな空間に|株式会社大和電業社

電気設備・計装工事をおもな事業とする株式会社大和電業社は、2023年1月に新社屋を竣工。採用力の強化と従業員満足度の向上を目的に、デザイン性にこだわったオフィス内装を実現しました。
内装全体の配色をグレー・黒・ウッドで統一する、天井は木目調にする、エントランスの壁をグリーンウォールにするといった工夫を取り入れ、おしゃれな空間をつくりあげました。
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【インタビュー】株式会社大和電業社「社員と会社をつなぐオフィス」
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内装で働きやすい空間を整備|福島コンピューターシステム株式会社

福島コンピューターシステム株式会社は、リモートワークの浸透を受け、働き方の多様化に対応できるオフィスを目指し、2023年に本社をリニューアル。木の温もりを感じるデザインやオフィス緑化、社員が自由に使えるリラクゼーションエリアの導入など、心地よく働ける空間を整備しました。
さらに、壁面には企業から従業員へのメッセージを記載し、企業理念の浸透やエンゲージメントの向上を目指しています。
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【インタビュー】福島コンピューターシステム株式会社「オフィス改装は人への投資 ~自由な働き方がもたらすリクルート効果とは~」
https://www.irischitose.co.jp/blog/interview/fcs/
コミュニケーションの活性化に成功|株式会社ポプラ社

2024年2月、株式会社ポプラ社は本社および一部グループ会社のオフィスを目黒に移転しました。社内のコミュニケーション活性化を目指し、2フロアからワンフロアへと変更。それに合わせて、レイアウトや内装も一新しました。
ポプラ社の歴史に沿った本や話題の本、新刊、グッズなどを置くエリアを設けたことで、社内はもちろん、顧客とのコミュニケーションも活発になりました。
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【インタビュー】株式会社ポプラ社「オフィス移転プロジェクト ~コミュニケーションを活性化させる空間づくり~」
https://www.irischitose.co.jp/blog/interview/poplar/
工事区分の違いを理解してスムーズなオフィス移転を実現しよう

オフィス移転や改装を計画する際は、A工事・B工事・C工事の工事区分を理解しておくことが大切です。工事の業者選定、発注、費用負担を誰がおこなうのか把握しておくことで、予算やスケジュールなどに関するトラブルを回避しやすくなります。事前に確認すべきポイントも多いため、早めに専門業者と連携しながらスムーズな準備を進めましょう。
アイリスチトセでは「オフィス移転・改修のトータルサービス」を提供しています。移転の場合は、物件探しからデザイン・プランの提案、内装工事、家具の配置、引越しまでワンストップでサポートします。内装工事のみを検討中の方も、ぜひ一度ご相談ください。
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