【インタビュー】株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY「英語の体験学習から始まるグローバル人材への第一歩。」
インタビュー
都内を中心に多くの学校が利用する、リアルな英語が体験できる施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」。今回は2施設目となる立川市のTOKYO GLOBAL GATEWAY GREEN SPRINGSのオープンについて、同施設を運営する株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY 教育サービス部 部長 木本様、多摩エリア運営部 TGG GREEN SPRINGS運営室 副室長 藤木様の2名にお話をお伺いしました。
英語をより身近にする「体験型英語学習施設」
本日はよろしくお願いします。
まずは藤木様にお伺いしたいのですが、TOKYO GLOBAL GATEWAYの概要を教えていただけますでしょうか。
藤木:TOKYO GLOBAL GATEWAY(以下、TGG)は東京都教育委員会とともに提供する体験型英語学習施設になります。
主なご利用は学校団体で、学年全体でご利用されるケースが大半を占めます。
学年でのご利用になるため、誰も取り残さないということが非常に重要で、英語が得意・不得意であるとか、どんなレベルの児童・生徒であっても、成功体験を持ち帰っていただけるような工夫や仕掛けを行っています。
2018年に江東区の青海にTGG BLUE OCEANがオープンし、今回新たに立川市にTGG GREEN SPRINGSを新設されますが、そのきっかけは何でしょうか。
藤木:東京都教育委員会が公表した整備計画の公募に対して、当社が事業者として手を挙げたことで実現しました。
具体的には2018年に東京都の東部、江東区でTGG BLUE OCEANがオープンしてご評価をいただきました。そして東京都の西部である多摩地域にも同様の施設の整備を求める声が寄せられ、そうした背景からここ立川で新設されることとなり、弊社が手を挙げたことが経緯となります。
通常の学校で行われる英語の学習があるのに対し、それとは別の組織として施設を構えて運営されていますが、どういった背景から誕生したのでしょうか。
藤木:東京都教育委員会の整備方針としては、「児童・生徒が将来グローバル人材として世界を舞台に活躍するには、英語を使用して積極的にコミュニケーションしようとする態度や豊かな国際感覚を習得する必要がある」との認識の下、「児童・生徒が英語を使用する楽しさや必要性を体感でき、英語学習の意欲向上のきっかけ作りとなる環境を整備」するといった背景がございます。
ありがとうございます。
学校とは異なる施設であることから、授業の進め方やプログラムに自由度があると思うのですが、何か特長的なものはございますか。
藤木:TGGの特長は、環境、プログラム、イングリッシュスピーカー、この3つが三位一体であることです。
このような環境で体験していただくことで、児童・生徒が「伝わるってすごい。」という感動を得て、少しでも英語を好きになり、成功体験を持ち帰ってもらうことが願いです。
TGG BLUE OCEANと同じく、ここTGG GREEN SPRINGSも8名1グループがベースとお聞きしていますが、会話がしやすい、グループ学習がしやすいといった点からでしょうか。
藤木:そうですね。やはり少しでも多く英語による発話をしていただくためにも、少人数制をとっています。それと同時に、より多くの学校にご利用いただけるような料金にする必要もございます。
最大で8名という事ですね。やはり少人数ということはインタラクティブな授業、生徒が発言できるような環境を作りたいという意図ですね。
藤木:はい、そうですね。
全ての児童・生徒が英語を使って楽しめるプログラムと空間づくり
TGG BLUE OCEANを拝見しまして、そちらは教室のほかに様々なシーンを想定した空間が設けられていますが、TGG GREEN SPRINGSはどのようになっているのでしょうか。
藤木:TGG GREEN SPRINGSの特長は、リアルな設えによる演出と、映像による演出を行っていることです。飛行機内の設えはTGG BLUE OCEANと同様に作り込んでいますし、映像による演出としては、部屋の3つの壁面にホテルやファストフードといった場面に応じた映像を投影することで、没入感を高めています。
プロジェクターで投影されたホテルのロビー風景。音の演出も加わり没入感ある空間となっている。
生活シーンの「疑似環境」を作ることで、そのようなシチュエーションに実際なった場合でも躊躇なく発言できる、そういった練習を兼ねた空間なのでしょうか。
藤木:はい。それに加えて、学校ではなかなか再現できない非日常空間を演出することで、楽しみながら体験いただきたいといった想いを込めています。
今回TGG GREEN SPRINGSのお話を弊社にいただいたとき、「学校っぽくない空間をつくりたい」とおっしゃっていたと思いますが、それはあくまで学習の場だけれども、学校とは違う非日常空間を味わっていただく、学校にて英語で話して下さいではなく、違うところに行って違う世界感の中で英語に触れていただく、そういったイメージの空間にしたかったということですね。
藤木:そうですね、学校では体験できない時間を過ごしていただきたいと思っています。
イングリッシュスピーカーは世界67か国約340名が在籍しており、例えば英会話教室に行ったときに、これだけの多国籍の方と話す機会があるかといえば、なかなか難しいと思います。さまざまなイングリッシュスピーカーと触れることで、多文化への理解も深めていただくなど、ここでしか体験することができない環境を目指しています。
施設と人材というハードとソフトの両面からサポートしているということですね。
実際に生徒の使う場所の空間づくりでこだわっていることはございますか。
藤木:大きく二つありまして、一つはすでに申し上げた没入感を高めること、そしてもう一つは臨機応変にレイアウトを変更できることです。
アクティブイマージョンプログラムは、プログラミングや演劇、多摩地域の魅力である木や水といったテーマについて、英語「で」学習します。必ず、グループワークやプレゼンテーションを行うため、席をグループごとに島になるように配置できること、また一方向で昼食をとっていただけることを目指しました。そこでアイリスチトセさんに、グループワークもできて一方向にも向けられるような、レイアウトの変更が可能な家具についてご相談させていただきました。
英語学習だけでなく、そういった地域の特性を知る学習や演劇といったプログラムもご用意されているのですね。
藤木:これはCLIL(クリル)※の考え方を取り入れていて、英語が不得意な児童や生徒でも、プログラミングなら得意である、演劇で表現するのは得意であるなど、英語ではないテーマであれば楽しめることもあり、英語に苦手意識を持っている児童・生徒でも楽しく取り組んでいただきたいと思っています。
※CLIL(Content and Language Integrated Learning):内容言語統治型学習。他のテーマについて習得する言語で学ぶ手法で、実践的な語学を習得しやすいとされている。
青海は他府県からの学校も来られていますが、立川でも東京都以外からの来館を想定されていますか。
藤木:ぜひご利用いただきたいと思っています。近県、例えば神奈川県、山梨県、埼玉県の学校はアクセスも好く、すでにご予約や内覧会へお越しいただいています。
青海のTGG BLUE OCEANの予約状況を拝見しましたが、結構先まで埋まっていますね。
藤木:おかげさまで認知度が高まっていることもありますね。
他県からご利用になる学校は、修学旅行で旅程に組まれるケースが多いです。
ディズニーランドへ行った翌日にTGGへお越しになる場合もございます。私どもは「楽しんで体験いただけるものか?」と心配しますが、TGGはご利用前後の児童・生徒の表情の差が大きくて、ご利用前は学習施設という前振りもあり、どちらかというと暗い表情でお越しになりますが、体験して帰る頃には明るい表情とともに「思っていた以上に楽しかった!」と声をかけていただくことが多いですね。
それこそアトラクションのような非日常を体感できるからでしょうか。
藤木:そうですね。またご利用校の先生方からも教えていただきますが、イングリッシュスピーカーのフレンドリーさが児童・生徒を楽しませていると考えます。
児童・生徒がイングリッシュスピーカーにハイタッチして帰っていく光景もよく目にします。最初は緊張していたけれども、半日も経つと生徒の表情ががらりと変わっていくことが見てとれます。
こういった施設が全国に波及していくといいですね。
藤木:実は北九州市では、私どもとは別にセイハネットワーク株式会社様が、北九州グローバルゲートウェイを運営されており、TGGの運営スタイルやメソッドをご活用いただいています。
御社の中で培ったものを展開していくということですね。
藤木:そうですね。当社の運営に限らず、全国の児童・生徒の皆さまが各地域で同じような体験ができるようになればいいですね。
身近にダイバーシティを体感
運営される中で、実際にTGG BLUE OCEANで体験された学校から様々な感想や意見を頂いているかと思うのですが、今回TGG GREEN SPRINGSの運営にあたり、何か反映した点などありますか。
藤木:TGG BLUE OCEANでは8名に対して同じイングリッシュスピーカーがずっとサポートしますが、より多くのイングリッシュスピーカーと話してもらいたいという願いから、TGG GREEN SPRINGSでは部屋によってサポートするイングリッシュスピーカーが代わります。それにより、より多くのイングリッシュスピーカーと話していただきたいと思っています。
学校でのご利用の他に社会人や一般の方にも使用できるようですが、プログラムというのは異なるのでしょうか。
藤木:学校向けのプログラムも一部活用しますが、体験する方が異なれば内容も変える必要がございますので、専用のプログラムも提供していきます。
平日および土曜日は基本的に学校が利用して、個人向けとしては日曜日(現在は1回/月)にご利用いただけます。
社会人の方々はどういった目的で来られていますか。
藤木:さまざまございますが、海外旅行前に英語に慣れておきたいといったニーズを感じます。他にも幼児・小学生向けもご用意する予定で、近くで海外体験ができるような場所のため、身近に英語に触れて楽しめるということでご利用になります。
英語に身近に触れられる、とてもいい施設ですね。
では、ここからは木本様にインタビューさせて頂きます。
改めて、施設の目的や意義について教えて頂けますか。
木本:英語を使う楽しさや必然性をより感じてもらうために、勉強という形ではなく、そこに行けば体感できる、英語で楽しく対話ができる、そういうシーンを提供する施設です。
学校が利用する施設でもあるので、東京都教育委員会が設定した施設整備に要項があったのですが、学校利用のための要素は次の4つです。
・英語を使う楽しさを体験し、英語学習の意欲を高めるプログラム
・デジタルコンテンツを活用した非日常の近未来を感じる施設
・多くのイングリッシュスピーカーと直接対話
・多摩の魅力を発信し、世界に発信するきっかけとする体験
ALT(Assistant Language Teacher)ってご存じでしょうか。
一般的に学校での英語の授業は黒板の前に外国人の先生(ALT)がいて、児童・生徒は板書したり聞いたりしていると思うのですが、ある先生に伺いましたら、各児童・生徒とALTが英語で会話する1年間の量を測ったところ3分程度だったそうでした。
ここに来ると3分どころではなく、1日中対話をするので、利用者からは「たくさん会話ができた」、「発話する意識が高まった」などといった感想をお聞きします。
イングリッシュスピーカーにも話をたくさん聞いてあげる、各個人の英語レベルに合わせて発話をするような指導をしており、そういったところが評価されています。
国内外で求められるグローバル人材
来館時に渡されるTOKYO GLOBAL GATEWAY パスポート
ありがとうございます。ここからはTOKYO GLOBAL GATEWAYのビジョンなどについて教えて頂けますか。
木本:ビジョンについてですが、TGGは未来のグローバル人材の育成を目指しています。
この施設もグローバル人材の育成を掲げて運営を行っています。
その為にここにお越しになる方々に3つの感動を与えることが、我々の使命としています。
具体的には、ご来館いただいた皆様に英語で「伝わる」感動、「わかる」感動、そして3つ目が、一人で学ぶのではなく、8名1組で仲間と一緒に英語を使ってやり遂げる「協働する」感動を提供することです。
大人になれば海外で活躍する児童・生徒もいると思いますが、その時に自分一人での英語力では解決できない問題でも、仲間と一緒に力を合わせれば成し遂げられることが大半です。それは日本人とかも知れないですし、外国人とかも知れない。仲間と何かを達成することが大事で、そのためのツールとして英語があるということを学んでいただきたいのです。
国内に目を向けると日本は世界一と言われる少子高齢化社会で、非常に高齢化が進んでおり、このままいくと人口の約4割が65歳以上になると言われていて、東京都でも高齢化が進んでいます。
よりグローバル化が進むことで、今の児童・生徒たちの一定数は海外で活躍するでしょう。その人たちにとって英語は大事なコミュニケーションツールですし、ビジネスで必要不可欠なものとなるでしょう。
一方で、少子高齢化が進む日本に住む児童・生徒にとっても、多くの外国の人たちとの協力や、今以上に力を借りる時代が来ると思っています。その時に海外から来た方に日本語を話してもらうのもいいですが、自分たちがある程度の英語力でコミュニケーションを取れる方がよいと思っています。
海外で活躍するにせよ、日本国内にいるにせよ、様々な形で海外の方たちと一緒に課題に取り組んで解決することはすばらしいことです。
今でも日本は資源の多くを海外に頼っていますし、コロナ禍で顕著になりましたが、海外との貿易や人流が減ると経済も停滞してしまいます。
今の児童・生徒たちはこのような事態を大人越しでなくてもわかっていると思います。
ですから流暢な英語でなくても、日本国内にいても英語が必要なツールになるということを自ずと理解しているのだと思います。
そのためにも、海外に行かなくてもまずはこういった施設に来ていただいて、「あ、なるほど英語って楽しいな」「これからは必要かもしれないな」「外国人って意外と怖くないな」であるとか、実際に英語に楽しく触れることで抵抗感みたいなものを解いてほしい。
これは理屈ではなくて、何時間も外国人の方と一緒に時間を共有すると、体感するようになるのです。
そういったことを楽しく体験できる、そんな施設でありたいと考えています。
そういった機会を提供できる施設は今の日本においてとても貴重ですね。
木本:ご利用される児童・生徒で、最初は緊張している方をよく見ます。
「今日は一日中、英語話さないといけない」という緊張感があるのかもしれません。
ですが先程も申し上げた通り、普段とは異なる空間でイングリッシュスピーカーと対話を続けることで、時間とともに表情が明るくなるようです。
イングリッシュスピーカーも「こういうことが言いたいんだな」と寄り添ってくれるので、
普段学校の英語で苦手意識がある生徒でも、コミュニケーションに意欲的だと話が通じてきます。
学校にないものを補完してくれる、とても魅力的な施設ですね。
最後に学校関係者にお伝えしたいことがございましたらお願いします。
木本:各学校において、グローバル教育とは無くてはならないものだと思っています。
一方で多くの学校は、どういう施策をしようかと試行錯誤を重ねていると思います。
そこで、答えを見つける手段の一つとして、TGGをご活用していただきたいです。
子どもたちにとっていい体験ができるというだけではなく、先生方も後ろで生徒たちの様子を見ながら、「こういう声掛けをすればいいんだ」「この生徒って普段英語に対して苦手意識をもっているけど、こんなに外国人とコミュニケーション取れるんだ」であるとか、学校に帰ってからこういった教育方法をとろうであるとか、ここでの発見がグローバル教育の在り方について検討する、いいきっかけになると考えています。
ここでのご利用体験は単なる点であって、来るまでにどうされていたか、来た後にどんなことをされるのか、これらを繋ぎ合わせて線にされている学校もあります。
実際にTGG BLUE OCEANでは私立、公立、エリアを問わず多数の学校の方に来館されていて、ご協力いただいた学校にご利用前後の取り組みなどをまとめた情報も公開しています。
まずは皆さんにも是非お越しいただき、ここでの体験によって少しでも学校での課題解決のヒントとなれば、そのように願っています。
未来のグローバル人材育成のための取り組みを行っているTOKYO GLOBAL GATEWAYについて、様々なお話を伺うことができました。英語の体験学習をきっかけに、これからの日本の未来を少しでも明るくしていきたい。そんな想いに触れることのできた時間でした。
本日はありがとうございました。