【インタビュー】キリンビール株式会社「 -未来のありたい姿に向けた食堂改装-マグネットスペースでコミュニケーションを活発に」
インタビュー
言わずと知れたビールや発泡酒の製造を行うキリンビール株式会社。今回は「ありたい姿実現わくわくプロジェクト」の一環で食堂を、社員が集うマグネットスペースへと改装した同社 北海道千歳工場のプロジェクト内容について詳しくお話を伺いました。
~インタビュイー紹介~
キリンビール株式会社 北海道千歳工場
エンジニアリング環境安全担当
岡野辰哉様
きっかけは「ありたい姿実現わくわくプロジェクト」
本日はよろしくお願いいたします。
それではまず初めに、北海道千歳工場について教えていただけますか。
北海道千歳工場は国内9工場あるビール製造工場のうちの1つで、従業員は正社員やパートナー会社の社員など約150人が在籍しており、三交代制で土曜日、日曜日も24時間稼働していて勤務形態も食事の取り方も異なる様々な方が同じ場所で働いていることが特徴の1つです。
ありがとうございます。
今回はなぜ工場内の食堂を改修することになったのでしょうか。
2022年にスタートした、「ありたい姿実現わくわくプロジェクト」の一環で、今回の改修を行うことになりました。
それはどのようなプロジェクトなのでしょうか。
2022年に各職場から手を挙げた14名のメンバーでスタートしたプロジェクトです。プロジェクト内で議論を進め、20年後にあたる2042年のありたい姿を策定し、従業員みんなの想いが詰まった「ありたい姿のビジュアル化」が完成しました。
2023年には、ありたい姿の実現に向け、具体化して取り進めるために、「ものづくり」・「地球環境」・「地域コミュニティ」・「働きがい」の4つのチームに分かれて、総勢32名で検討を進めてきました。
私は「働きがい」チームに参加しているのですが、チームメンバーと共に今回の食堂改装の企画を立ち上げました。
コミュニケーションの課題の解決に向けた食堂の改装
今回の改装に関して、何が課題として挙げられていましたか。
改装前
改装後
わくわくプロジェクトのメンバー内で課題について話し合った時に、共通して出てきたキーワードが「コミュニケーション」でした。各部署とも同じ工場内ではあるものの、それぞれ別の場所で働いていることもあり、社員同士がコミュニケーションを取りにくいということが要因になっていると考えられます。
そのコミュニケーション課題を解決する第一歩として、先ずは多くの社員が利用する、また、交わることのできる食堂の改装から始めよう、といった形で今回の改装が決まりました。
コミュニケーションの課題を解決する一貫で食堂の改装にいたったのですね。
課題を解決するために具体的にはどんなことをされましたか。
「働きがい」チームメンバーで工場での課題について話し合いました。
工場施設の老朽化が進んでおり、きれいと言えるようなワークスペースがなく、従業員が気持ち良く働ける職場環境とは言えないこと、また勤務場所が部署毎でバラバラであり、従業員が気軽に集まれるようなスペースがなく、従業員同士の活発なコミュニケーションが生まれにくいことが挙げられたため、北海道千歳工場の将来のありたい姿をアイリスチトセ様に伝え、コミュニケーション課題を解決するための食堂改装のコンセプト案とレイアウト案を作成していただきました。
レイアウトには具体的にどんな案が盛り込まれていましたか。
主に3つありまして、1つ目に魅力的なデザインです。従業員が行きたいと思えるようなオシャレな空間になるように、アイリスチトセ様のお力を借りながら、全体レイアウト、家具の種類やカラーの選定をしました。
2つ目が目的に合わせた利用ができる多目的な空間です。食事をするだけのスペースではなく、休憩、打ち合わせ、セミナー、事務作業など様々な用途で利用できるようにしました。
そして3つ目にみんなでワイワイと話ができるスペースにすることです。勤務後のちょっとした飲み会や、ちょっとした雑談ができるようなスペースを作りました。
人が集いやすいような空間づくりを行うことで、コミュニケーションがとりやすい環境をつくったのですね。
他に何か課題はありましたか。
事務所の会議室が少ないといった声が数多くありました。そこで食堂をフリーアドレスのように使用いただき、食事以外にもちょっとしたミーティングや集中したい作業を行うことができる場所にししました。
人が集う場所をテーマに改修していたので、人が自然と集まるようになる場所になればいいなと思い、食堂の名称を「マグネットスペース」へと変更しました。
全員が平等に使いやすいスペースにするために
多様な使い方ができる方が、人が集まりやすくなりますよね。
改修において何か大変だったことはございますか。
全社員が使用できて、集う場にしようとしていたので、全員が必要としているものは何なのか、また、ある一定の社員にだけ利益があるといったような不平等さがないようにしなければいけないという思いが強かったです。
それに対してどのようにして解決されたのでしょうか。
社員にアンケートを取り、多い意見かつ予算的にも可能なものから実現するようにしました。
本当に様々な意見を頂いたのですが、例えばデスクワーク時のPCやスマホの充電ができるようにコンセントを増設して欲しいという意見が多かったので、コンセント付きの席を用意しています。
あとこちらは実現はできませんでしたが、食堂中央のグリーンの床のエリアは人工芝の方が良い、JAZZが流れる環境になると素敵などの意見もありました。
また、食堂改修案を社員に説明した際には、複数人で向かい合って会話ができるファミレス席がとても好評でした。
デザイン面でなにかこだわった点はありますか。
個人的に気に入っているのはマグネットスペース中央にある大きな柱です。当初はこの柱を邪魔に感じていて、この柱さえなければもっと色々なことができるのに…といった思いだったのですが、この柱を木の幹に見立てて、天井に木の影を、床に葉を描きその周りにイスを並べたことで木陰に人が集まって話すことができるようなイメージでデザインいただきました。
遊び心もあって素敵なデザインですね!
実際にマグネットスペースを稼働させて、社員の反応はどうでしょうか。
まだアンケートは取れていないので全社員の意見は聞けていませんが、「食堂がおしゃれになって利用したくなった」、「前より休憩しやすい空間になった」という声を聞くことができたり、またファミリーブース席は集中したい作業がある社員が積極的に使用しているなど、いい意味で想定と異なる利用をされていたりします。
よい反応がたくさんあるようでよかったです。
完成した食堂は社外の方にもお見せしたりすることはありますか。
今のところ、社外向けに発信はしていないものの、採用活動で工場見学に来ていただく際には積極的にこちらのスペースをお見せするようにしています(笑)
2042年のありたい姿に向けて
そうなのですね。
工場の勤務形態はどこも似通っているので、休憩スペースを他社と差別化することでリクルート効果が期待できそうですね!
最後に北海道千歳工場の将来について何かお考えがあればお教えていただけますでしょうか。
「働きがい」という観点での2042年のありたい姿は4つあります。
①新しくなった製造現場では、メンテナンスが行き届きトラブル対応もなく残業もない。
②毎日の製造を勤務時間内で余裕を持って終わることができ、さらに空いた時間で新しい技術に挑戦するために仲間とワクワクする企画を話し合っている。
③ワークスペースは自由席であり、きれいで遊び心がある空間に浸りながら新たな発想が生まれている。
④自分の発想で仕事を進められたり、工場外に技術を展開したりすることにやりがいを感じており、残業もないのでプライベートが充実し、趣味や自己啓発の時間も増えている。
これらのありたい姿の中で、『ワークスペースは自由席であり、きれいで遊び心がある空間に浸りながら新たな発想が生まれている。』というありたい姿を実現するために今回の食堂改装を実施しました。
現在のマグネットスペースはまだ完成形ではなく、さらなる改良の余地があると考えています。今後も利用していく中で、社員の声を聞きながら、より魅力的で快適な場所にしていきたいと思っています。このマグネットスペースが従業員同士のコミュニケーションを活性化させ、働きがい向上の一助となることを願っています。
お話をお聞きして、会社として「未来のありたい姿」が目標としてしっかり定められていることで、現在の課題やその解決方法を明確化でき、今回の食堂改装に至ったのだなと理解できました。
今回のような取り組みが北海道千歳工場全体から、全社に広がっていくと良いですね。
本日はありがとうございました。