【インタビュー】ソウルドアウト株式会社「事業の多角化を目指した社内改革とは」~多様性と成長機会に重きを置いた人事戦略~

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【インタビュー】ソウルドアウト株式会社「事業の多角化を目指した社内改革とは」~多様性と成長機会に重きを置いた人事戦略~

地方を中心に日本全国の中小・ベンチャー企業の成長をデジタルマーケティングによって支援するソウルドアウト株式会社。2020年より、「フルフレックスタイム制度」と「フルリモートワーク制度」を導入する同社について、戦略的な組織運営等、幅広くお話を伺いました。

事業構造の変革に伴う多様な働き方の導入

本日はよろしくお願いいたします。

はじめに、御社の事業内容を教えていただけますか。

地方を含む中小・ベンチャー企業の成長をデジタルマーケティング、ソフトウェア、メディア制作・運営、DXの領域で支援し、今年で13年目の会社となります。

ありがとうございます。

では、早速本題に入るのですが、2020年フルフレックス・フルリモート制度の導入に至った経緯、背景を教えていただけますか。

先ほど4つの事業をお伝えしましたが、検討を始めた2019年から2020の頭頃はまだまだ広告代理事業がほとんどという状況でした。

広告代理事業というのは、クライアントの広告活動を代理で行い、それにかかる費用を手数料としていただいて成り立っています。ちょうどその頃、AIが台頭しはじめた時期で、代理店を介して広告運用を行うことに対しての意味や価値が問われ始めたころでした。

そこで、広告代理事業に過度に頼りすぎることは、ビジネスとして不安定であると判断し、事業の構造を変えるということを検討し始めました。

今までは地方に多くの営業所を作り、営業担当を配置し、お客様との距離を近くすることをいち早くやればよかったものの、新しい事業を作るとなるとスピードだけではうまく事が進まないことが分かりました。要するに、「人材」や「組織」というものを変えていかなければならない。そういう意味で人材マネジメント全体を変えようとしたのが実は20192020年の間でした。

その時に会社として重点に置いていたのが、「多様性」と「成長機会」です。多様性というのはいくつかある中で、選択肢が多様に与えられている、いろんなバックグラウンドを持った人が活躍しているとか、そういった意味合いの多様性。もう一つはそういった人たちに成長機会を与えて会社としてサポートしていくということを主眼に置いていました。

例えば旦那さんの転勤などで、これまで縁がなかった地方でキャリアを断絶した女性、子育てを終えてもう一度再チャレンジしたい女性、あとは地域に根ざしたことをとことんやりたいという人を採用するなど、こういった多様性を受け入れていく土壌を積極的に作っていきました。また、選択肢という点では多様な働き方ができるというだけでなく、キャリアパスという面で管理職以外にも、分野に長けたエキスパート(専門職)という道が用意されています。多様な人を受け入れるということが可能な状態をいかに作るかということが、イノベーションを起こす上で非常に重要だという背景です。

フルフレックス・フルリモートで働き方を変えますということではなく、事業構造を抜本的に変えようとした結果、今の働き方があるということですね。

そうですね。たとえば評価の面でも、今までは新卒中心で、どちらかというと成果の優劣というよりは、立ち上げだから成果の差異を認めるよりも、とにかくみんなで頑張っていこうという感じでした。

しかし今後は、新しいことにどんどんチャレンジしていくので、成果に貢献した人をとことん評価することにシフトしていこうと考えています。

働き方に応じた評価方法にする、ということですね。フルリモートやフルフレックスも会社としてのルールや規則で導入されたというより、社員が選択できるという形をとっているのでしょうか。

そうですね。中には裁量労働制の人もいれば、一部固定残業制の人もいます。これは期待する役割によって違いますよね。例えば、産休明けの社員側からすると(会社はフルで働くのを後押ししたいですが)時短という形で時間をロックして働く方が、その人にとって段階的に復帰しやすいという考え方もありますよね。そういうものをしっかり認めていかないといけない。

一律でやるということは本人にはいいように見えるんですけど、本人が「周りに迷惑がかかる」と気を遣ってしまうこともあるので、そこはあくまで選択肢という形で運用しています。

フルリモート・フルフレックスを採用している社員の割合はどのくらいになるのでしょうか。

今ですとだいたい70%くらいになります。

新卒入社の社員は自由な働き方ということ以前に、学ぶことの方が多いので、新卒は基本的に1年半くらいは定時に合わせて出退勤をする働き方をしてもらっています。

そういったところを除くと、75%前後はフレックスを採用しているということになりますね。

会社理解を深めてある程度知識を持った上で働き方を選択できるようにする、と。

そうです。時間を自由に使っていいよ、出社もしなくていいよ、という様な自由度は、自分でやるべきことのアウトプットがしっかり出せるということが前提ですよね。そのため、この権限は本人というよりは上長にゆだねています。新卒が多くてまだまだ学ぶことの多い組織に、フルフレックスと言っても上司や先輩に相談できなくなってしまう。オンラインでは先輩に聞くと言ってもなかなか抵抗があるし、横のつながりが遮断されたりしますから。

習熟度に差があると本人にとっても不幸ですし、そういう意味で若手の新卒にいきなり、というのはなかなかハードルが高いのではないかと思い、当面は出社するようにしています。

働き方の変化に伴う社員の変化と採用への効果

私たちの経験からもとても共感できる部分ですね。

続いての質問ですが、フルフレックス・フルリモート制度を導入してから感じるメリットは何でしょうか。

社員のESEmployee Satisfaction:従業員満足度)は高まったと思います。しばらく働き方アンケートということで3ヵ月に1回くらいの頻度で調査を行っていましたが、やはり社員の満足度は高かったですね。これは多様性を許容するという意味では成功したと思います。         

また、それに伴って採用力も増しました。特に地方在住のエンジニアです。コロナの影響で地方に戻ってリモートにすると言い始めたのは、エンジニアの方が多かったんですよね。最初に動きだしたのが彼らだったので、やはりエンジニアの採用獲得において優位に立てました。彼らにとっても、東京と同じ水準の給料をもらいながら地元に住めるというメリットになりますよね。

そういった人たちを採用するなど、とにかく地方の学生を惹きつける度合いが今まで以上に上がったというところはあると思います。明らかに優秀人材の採用増には繋がっていますね。

エンゲージメント向上への取り組み

ESと似て非なるものとしてエンゲージメントがあると思うのですが、会社に対する帰属意識もそうですし、自分の会社に対する愛着などが、よく言われるとこととしてはリモートにするとそこが下がってしまう。先ほどESが非常に高かったというお話でしたが、そういったエンゲージメントに関する課題感がもしあれば、それに対してどんな取り組みをされているのか、その辺りもぜひお伺いしたいです。

例えば、現場にコミュニケーション手当(社内交際費)を付与し、上下関係で使うのではなく、斜めの関係強化のために使う目的で導入したり、人事主体でシャッフルフライデーという、毎週金曜日に指定の時間に集まった人をシャフルしてランチ(費用は会社負担)を行ったり、月に1回マインドフルネスのイベントを行い、共通の趣味で集まった人同士、自分の部署と関係ない人と繋がることができるように実施しました。    

特定のコミュニティだけではなく、複数のコミュニティを持つことができるようにという意図です。結局オフィスはそこがポイントだと感じます。仲間が集まり、業績以外の会話をしっかりする場面を作る。

納会という大きなイベントもあり、その日だけは全国から東京の会場に集まり、賞賛と感謝、そして普段会えない仲間との他愛もないコミュニケーションをとります。そういった機会を会社として大切にしています。    

1つのコミュニティだけですとそこの関係性=会社になりがちですが、いくつかのコミュニティを社内で設けてそこを回遊できることで、会社の色んな部分に触れられるようになり、帰属意識やエンゲージメントの維持向上につながっていく、そういったものを意図的に行っているということですね。

多様性の受け入れのための採用戦略と評価制度

話は変わりますが、採用でいうとキャリアと新卒はどういった採用バランスなのでしょうか。

今年は、キャリア採用が年間50名、新卒が35名くらいです。来年からは、新卒採用をより強化しようと考えています。当社は特に新しい事業も多いので、新卒を優位に採っていく方が理念への共感や文化の浸透・業績等いろんな意味でいいと考えています。とはいえ、要所要所で事業のコアを担う人材獲得のためのキャリア採用は、引き続き厳選して進めていこうと考えています。

新卒採用に力を入れるにあたって何か強化していること、変えていくことはありますか。

ある一定のやり方でやっていくと35名って案外採れてしまうものなんですよね。ただ、同じやり方で同じ人が選考すると、どうしても同質の人が集まってしまう。私たち人事の仕事として、異質な人間をどう入れていくかとか、異能人材をどう採るかとかが組織を変化させていく上で非常に重要になってくるんです。

そういう意味で、「地方事業家採用コース」というのを新たに切り口としてつくりました。その枠で入ってきた人には最初社長室に配属し、経営企画に近いことをやってもらう。そうして全体のカンパニービジネスや数的知識を最初の2年くらいで養ってもらいます。

そのあと、コーポレート部門で12年、事業側で34年学んだあと、経営企画や事業開発に転換していく採用コースとなります。

また、インターン経由の採用においては、デジタルマーケの領域は案外即戦力になることもあって、今回からは特別ルートでインターンの経験価値を評価するという取り組みもいれています。

こういったことを上手くPRしながら、戦力になる人を色んな形で採用できるように行っています。工夫で人を呼びつける武器を作って、PRをしながら採用していくことで、僕らのブランドも上げていきたいと思います。

以前、あるインタビュイーが「これからは特に技術を持ったスペシャリストはどんどん外に出ていって、在籍しながらも外で仕事をすることで、社外で得たスキルやコネクションなどを社内に還元できるようになり、それが持続可能な経営に繋がる」とおっしゃっていました。そのためには、会社は優秀な社員が外に出ないように強固な壁を作るのではなく、壁をやわらかくしながらも、会社の魅力で引力のようにひきつけることで、それが実現できる。御社の採用戦略は、こういった組織づくりにもつながりそうですね。

そうですね、弊社は副業も解禁にしていますし、当然のように受け入れています。

人事も数名アシスタントがいますが、全員地方でフルリモートでの勤務でしたり、人事のコアな業務は社外のスペシャリストに来ていただいたり。そういう活用の仕方ができるとみんなハッピーですよね。

おっしゃる通りですね。

次に評価制度についてもお伺いしたいのですが、御社特有の評価制度などございますか。

今はまだ移行期なので特有のものはないですね。

ただ、成果を上げた人と能力を開発できた人、この2つはしっかり評価すべきだなと思っています。成果を上げられた人には大きく月給が上がるようにする、一方で上げられなかった人は大きく下がる、そういったメリハリをつけることがポイントです。透明度を上げると言いますか、ここから2.3年くらいでさらに環境変化が激しくなるので、今まで以上に「何にお金を払うのか」を考えていくことが重要だと考えています。

その時に大事なのが、地方でフリーランスにような働き方の人でも、ちゃんと惹きつけられるようにすること。「こういった専門性があるといいんだ」とか、「こういう役職でこのポジションについていると、このくらいのお金がもらえるんだ」ということを客観的に整理していくことです。

客観的にしていくのは結構大事で、評価ってどうしても上司と部下のコミュニケーションを前提にした納得感が大事だと言われますが、もっと透明度を高くすることが重要なんじゃないかと思っていて、これから議論をしていきたいと考えています。

更なる多様性と成長機会の提供に向けて

ありがとうございます。

では最後の質問になります。先ほど採用や評価制度などについてお伺いさせていただきましたが、会社全体の働く、働き方に向けて今後の展望やビジョンについて教えていただけますか。

先ほど申し上げたように「多様性」と「成長機会」に関する考え方は変わらないポイントです。ただ、今ちょうど810年後の未来・世界ってどうなるんだろうということで、2030年から逆算するというような議論をしています。

人事の命題に上がるのはやはり高齢化と少子化です。若手の労働人口が今よりも1015%くらい減ると考えたときに、私たちは何をよりどころにしていくのか。

もっと言うと私たちが大事にしようとしている地方は、もっと淘汰が進むことが予想されていますが、私たちはどこをビジネスドメインにするべきなのか、世の中の問題と私たちの問題は結構リンクしているので、これは非常に切実なテーマだと思っています。

ただ、その時に私たちの強みは何か、よりどころは何かと考えると、地方をなんとかしたいと思っている社員がいること、そういう人たちをアトラクトする環境・武器があること、パーパス含めた制度や組織や人、こういった強みをフルに活かしていくということだと思っています。そういう意味で採用は、若手を確保するという意味においても永続的に磨き続けなければならないと思っています。

そのためには透明度の高い評価制度が整っていること、常にどんな雇用形態になったとしても成長や学べる環境があること、あとはパーパスが常に磨かれ続けていること、この3つがキーになると思っています。

世の中はマッチングだなと思っていて。仕事も常にマッチングしているという考えで、何かで「負」といわれている人、例えば今まで働いていたけどキャリアを断絶した人=働けないと思われた=負。彼らに光を当てる方法を考えると、世の中ってもっともっと生産的になる構図がいっぱいあると思っているんですよ。

そういったところに目を向けて、当社のビジネスとどう繋がるのか、ここを創りにいく。それはもしかしたら外国人かもしれないし、新卒でないかもしれない。

首都圏の新卒採用は大卒というのが前提にありますが、高卒の人はだめなんでしたっけ?高卒は大卒より報酬が低いのが現状ですが、高校を卒業した人でも普通の大卒よりできる人ってたくさんいますよね。

そのような思い込みを排除して、今までマッチングされなかったところにどれだけマッチングするかというのがポイントだと思います。

そういう意味で多様性をもっと強烈に押し出していきたいですし、成長機会があるということを、さっきの制度や教育環境、パーパスのクリア度合でもっと後押しし続けたいと思っています。

大変勉強になります。

いえいえ、まだまだ試行錯誤中ですよ。

今年の新卒内定者にも伝えましたが、彼らが入って5年目になるのが2030年で、ちょうど少子化の波が来ているタイミング。

彼らが社会人5年目になった時は中核社員です。その頃はAIの動きもあったりして社員がやることの価値も今までと変わりますよね。そういう意味でこれから2.3年の舵取りはすごく難しいと思っています。成功法はまだないし、描けているとも思わないので必死にテクノロジーを今勉強していますけど、何がどう変わるのかをもっと考えていかないと、最後は社員を守れない状況にもなりかねません。会社を常に成長させていくのが仕事なのでね。

将来どんなことが危機になるのか、もっと解像度上げて見ないといけない、と考えています。

 

将来を見据えての事業の多角化や、そこでの持続可能な成長のための多様性と成長機会を中心に置いた人事戦略。来たる少子化や様々なリスクを想定したソウルドアウトの戦略的な組織運営に触れることができた、そんなインタビューでした。

本日はありがとうございました。

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