ワンフロアオフィスとは?メリットや成功させるポイントを紹介
オフィスレイアウト・デザイン・設計

近年、オフィス環境を改善し従業員の働きやすさを向上させるための手段としてワンフロアオフィスを導入する企業が増えています。
本記事では、ワンフロアオフィスの概要やメリット、そして導入を成功させるためのポイントを解説します。オフィス環境の課題もあわせてご紹介しますので、自社に当てはまる課題に対して、ワンフロアオフィスが解決策として使えるかどうかを検討してみましょう。
目次
ワンフロアオフィスとは

ワンフロアオフィスとは、複数階や複数拠点に分かれているオフィスを一つのフロアにまとめるオフィススタイルのことです。壁や間仕切りがほとんどなく、広いオープンスペースですべての従業員が同じ空間で働きます。
部署間に物理的な垣根のないオフィスを実現することになるため、コミュニケーションの活発化や業務効率の改善、備品の共用化によるコスト削減などが期待できます。
従業員が効率よく働くうえで、オフィスの質は重要な要素の一つです。そのオフィスの質を改善する手段の一つとして、ワンフロアオフィスの性質が注目を集めていると言えます。
ワンフロアオフィスが注目されている背景

近年になってワンフロアオフィスが注目されるようになった背景には、時代とともにオフィスのあり方が変化している事情が存在しています。
例えばオンラインワークが普及したことで、全員が一つの場に集まらず、複数拠点を繋いでミーティングをするといった働き方へシフト。その為従来の大きな会議室の需要が減り、中小規模の会議室が多く必要になるなど、時代に対する適応や、快適に働ける環境づくりの実現が難しいケースも少なくありません。「何が実現を妨げているのか」という課題を発見し、解決することが現代のオフィス運営での重要事項と言えます。
その手段の一つとして、ワンフロアオフィスが注目されています。ただし、すべての企業にとって最適な手段だとは限りません。オフィススタイルの転換を成功させるためには、現在の自社の課題と、改善によってどのような効果が得られるかを把握しておくことが大切です。
オフィス環境における代表的な課題

ワンフロアオフィスを採用すれば万事が改善するというわけではないため、まずは現在のオフィス環境における課題を明確にすることが大切です。現代オフィスが抱えがちな課題をピックアップしてご紹介します。
- 騒音や雑音が気になる
- リラックスできる空間が少ない
- 慢性的な会議室不足になりがち
- 部署間のコミュニケーション機会が減る
- 動線が悪い
- 快適なオフィス空間を維持しにくい
それぞれの課題の詳細を解説します。各課題に対し「自社で表面化している課題か」「これから起こり得る課題か」と考えながら目を通してみましょう。
◾️騒音や雑音が気になる
オフィスでは多くの従業員が働き、さまざまな機器が設置されているため、騒音や雑音が発生することは避けられません。特に、近年ではオンラインミーティングの増加による他人の話し声の問題も課題になりがちです。
騒音や雑音が気になり、業務に集中できない従業員が増えると、生産性が低下する恐れがあります。Web会議中に騒音や雑音が入ってしまえば、会議の進行に支障をきたすこともあるでしょう。
話し声に関しては、オフィス内に集中ブースを設置し、その中でオンラインミーティングやWeb会議を実施することも有効です。集中ブースについて解説しているこちらの記事もあわせてご覧ください。
オフィスに「集中ブース」を設置するメリットとは?設置方法やおすすめブースもご紹介
◾️リラックスできる空間が少ない
多くの従業員が一つの広い空間で働くオフィスはプライバシーが確保しにくく、リラックスできるエリアが不足しがちです。休憩時間などで従業員がリラックスして過ごせる場所が少ないと、ストレスが溜まりやすくなり、業務効率の低下が懸念されます。
これは通常のオフィスはもちろん、ワンフロアオフィスでも発生し得る課題のため、レイアウト変更を考えている場合には特に意識したいポイントとなるでしょう。ソロワークができるスペースや、仕事の合間にリフレッシュできるスペースが求められます。
ソロワークスペースやオフィスの休憩スペースについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
働き方の変化に対応してソロワークスペースを確保しよう!メリットや課題も解説
オフィスの休憩スペースが重要な理由とは?導入のコツからレイアウト事例まで
◾️慢性的な会議室不足になりがち
近年、オンラインミーティングの活用が増えたことで、個室の会議室の需要が高まっています。しかし、オフィス内に十分なスペースや部屋が確保できず、会議室不足になりがちな企業は少なくありません。
会議室やミーティングルームの数が限られると、利用者は部屋の予約が取りにくくなってしまい、会議室不足が慢性化する可能性があります。急なミーティングやプライベートな会話の場所を確保するのが困難になり、業務効率が低下する可能性も生まれるでしょう。
ワンフロアオフィスにおいても会議室の確保は重要な課題になり得ます。集中ブースの導入などをあわせて検討することが必要です。
◾️部署間のコミュニケーション機会が減る
ワンフロアオフィスは物理的な障壁が少ないため、コミュニケーションを促進しやすくなっています。しかし、そのオフィスの働き方や人口密度によっては広すぎる空間がかえって仇となり、部署間のコミュニケーション機会が逆に減ってしまう可能性があります。
もともと少人数のオフィスをワンフロアオフィス化すると人口密度が減り、物理的距離が広がる可能性があるためです。また、部署スペース同士の距離が離れすぎることでもコミュニケーション促進のメリットを得られなくなってしまいます。
コミュニケーション機会を確保するためには、意図的に交流の機会を設ける工夫が必要です。共通の休憩スペースや定期的な交流イベントを設けることも検討してみましょう。
◾️動線が悪い
オフィスの動線は従業員の快適さと効率性に大きく影響します。例えば通路が狭い場合は通行する度に周囲の従業員に気を遣わなければならず、ストレスが溜まりやすくなります。
さらに、動線が悪いと災害時の避難がスムーズにおこなえず、安全性にも影響します。最適な動線を確保するためには、通路を広く保ち、頻繁に使用するエリアを効率的に配置することが重要です。
動線計画の基礎知識や注意事項については次の記事もご覧ください。
オフィスの動線計画でおさえておきたいポイント|企業の成功事例も紹介
◾️快適なオフィス空間を維持しにくい
オフィス環境の快適さを妨げる要因は、おもに次の要素があげられます。
- 快適な室温を維持しにくい
- 空気がこもりやすい
- 照明の明るさが十分ではない
まず、快適な室温を維持することが難しいという問題があります。労働安全衛生法の事務所衛生基準規則では、オフィスの温度を18度以上28度以下になるよう努めなければならいとしており、環境省も冷房時28度、暖房時20度を推奨しています。しかし、室内人口密度や外気・外光など環境の影響により、実際の室温管理は簡単にはできません。
また、適切な換気がされていないオフィスでは、空気の質が低下し、従業員の健康や集中力に悪影響を及ぼす可能性があります。特に人口密度が高いオフィスでは、空気がこもりやすくなってしまうでしょう。レイアウトが原因で換気ができないケースもあります。
照明の明るさが十分でない場合、目の疲労や集中力の低下、頭痛や肩こりなどを引き起こす可能性があります。照明は労働安全衛生法で最低照度が定められていますが、あくまでも目安であり、適切な明るさは作業内容やスペースによって異なる点が快適さの実現を困難にしています。
※出典元:e-GOV法令検索「事務所衛生基準規則」
※出典元:環境省「オフィスでできる節電アクション」
室温・換気・照明の3要素については、こちらの記事もぜひあわせてご覧ください。
オフィスの適切な暖房設定温度│適切な温度に設定する方法やメリットを解説
オフィス環境を改善する必要性

オフィス環境に問題はあるものの「今はこれで業務が回っているからコストをかけてまで改善する必要はないのでは」と考えてしまうことがあるかもしれません。
しかし、働きにくい環境では従業員のストレス増加や生産性低下のリスクが高まり、離職につながる懸念も出てきてしまうでしょう。次の観点から、オフィス環境を改善する必要性を解説します。
- 従業員のストレス緩和が期待できる
- 生産性の向上につながる
- 離職率を低減できる
◾️従業員のストレス緩和が期待できる
オフィス環境が快適でない場合、従業員のストレスを増加させてしまう恐れがあります。従業員のストレス増加は健康面や業務への集中に悪影響を及ぼす可能性があるため、可能な限りストレスを緩和できるオフィス環境の構築が大切です。
オフィス環境のストレス要因としては、室温の管理が不十分、騒音や雑音が多い、動線が悪くて移動が不便といったものがあげられます。一つひとつは些細なストレスでも、長期的に見ると堆積して従業員に強いストレスを与えてしまう恐れがあります。
企業は従業員の健康を守る必要があります。課題がある場合には、適切な室温管理システムの導入、防音対策の強化、効率的な動線設計などをレイアウト段階から見直すことが有効です。
◾️生産性の向上につながる
オフィス環境の改善は従業員一人あたりの集中力を改善し、生産性の向上につながります。近年の日本の求人市場では労働者有利の売り手市場が続いており、従業員の数を増やすより、個々人の生産性を向上させたいというニーズが高まっています。
しかし、騒音や照明などに問題を抱えたオフィス環境では、従業員は集中して業務に取り組めず、生産性が低下する可能性があります。従業員の生産性を向上させるためにも、オフィス環境の改善も必要です。
◾️離職率を低減できる
現代日本は少子高齢化により労働人口が減少し、企業は新たな人材の確保が難しくなっています。また、転職が一般的になり、より良い環境を求めて離職する従業員も少なくありません。一日の大半を過ごすオフィスの快適さは労働者の重要な評価項目にもなります。
離職率を低減させるためには、従業員が働きやすいオフィス環境の整備が重要です。従業員にとっても心地良いオフィスを提供できれば、その会社で働くことに対するモチベーションが向上し、離職率が低下することも期待されます。
オフィスのワンフロアオフィス化は働きやすい環境の提供に役立つ選択肢の一つです。
ワンフロアオフィスに転換するメリット

旧来型のオフィスをワンフロアオフィスに転換すると、次のようなメリットが期待できます。
- 従業員同士のコミュニケーションがとりやすくなる
- コスト削減が期待できる
- レイアウトの変更に対応しやすい
それぞれ詳細を解説します。
◾️従業員同士のコミュニケーションがとりやすくなる
ワンフロアオフィスへの転換による代表的なメリットは、社内コミュニケーションの活性化です。すべての従業員が同じフロアや動線上で仕事をするため、異なる部署間でも自然に会話が生まれやすくなり、業務の伝達がスムーズになります。
部署ごとの壁がなくなることでコミュニケーションコストが減少すれば、情報共有の迅速化も期待できます。多部署間が連携して取り組む業務のスピードが向上し、企業全体の生産性向上も期待できるようになるでしょう。
◾️コスト削減が期待できる
ワンフロアオフィスへの転換はコスト削減にもつながるでしょう。複数フロアに分かれたオフィスは、コピー機などの備品を各所に配置する必要があります。しかし、ワンフロアオフィスであれば備品の共有も簡単になるため、その分備品を減らしコストを削減できます。
固定席の要らないフリーアドレス制の導入もおこないやすくなるため、出社率が低い場合に生まれるオフィススペースの無駄も減らせるでしょう。
◾️レイアウトの変更に対応しやすい
ワンフロアオフィスに転換することで、オフィス環境の柔軟な変更が可能になります。固定の壁や仕切りでスペースを細かく切り分けないようにすれば、従業員の増減や新しい働き方の導入に伴うレイアウトの見直しが容易になるのです。
また、複数フロアに分かれているオフィスでは、各フロアごとに設備や配置を調整する手間がかかりますが、ワンフロアオフィスでは一元的に管理できるためより効率的です。
将来的な人員の増減やテレワーク・リモートワークの推進が見込まれる場合には、現在のオフィスをワンフロアオフィスに転換し、順次対応がおこなえる体制を整えておくと良いでしょう。
ワンフロアオフィスへの転換を成功させるポイント

ワンフロアオフィスへの転換には大きなメリットがあります。転換を成功させ、メリットをより良い状態で受けるためにも、次のポイントをおさえておきましょう。
- 集中できる環境を整える
- リフレッシュルームを設置する
- オフィスデザインの実績が豊富な業者に相談する
- 室温の自動化システムの導入を検討する
それぞれ詳細を解説します。
◾️集中できる環境を整える
ワンフロアオフィスにはプライバシーを確保しづらいという側面があるため、集中力を保つための適切な対策が必要です。パーテーションで適度に間仕切りする、集中エリアやボックス式の集中ブースの導入などが有効でしょう。
ワンフロアオフィスは部署間を超えたコミュニケーションの増進に役立ちますが、周囲の視線が気になり、業務に集中できない従業員が出てくる可能性もあります。集中できる環境を整え、従業員のニーズに応じて利用できる環境を整備することが大切です。
◾️リフレッシュルームを設置する
コミュニケーションを活性化する開けたワークスペースだけでなく、従業員がリラックスして休憩できるスペースを設けることも大切です。休憩時間と労働時間でメリハリをつけられるオフィスであることも求められます。
リフレッシュルームの設置時には、ある程度のスペースを確保することや机、椅子、電源を備えるかどうかを検討しましょう。設備が揃っていれば、休憩時間に休憩スペースとして用いるだけでなく、コミュニケーションスペースやミーティングスペースとしても活用できます。
オフィスにリフレッシュルームを設置する際に意識したいポイントは、次の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
オフィスにリフレッシュルームを設置する際のポイントとは|成功事例も紹介
◾️オフィスデザインの実績が豊富な業者に相談する
オフィスのレイアウト変更には専門的な知識や工事の手配などさまざまな手間がかかります。労力をおさえたうえで、より自社の課題や求めるかたちにあったオフィスを実現するには、オフィスデザインの専門家に相談するのも手です。
実績が豊富な業者は、さまざまなオフィスパターンを経験しているため、企業課題に適したプランを提案してもらえます。動線の設計やレイアウトの最適化に関するアドバイスを受けられるため、効率的で働きやすいオフィス環境を実現できるでしょう。
アイリスチトセはオフィスデザインやレイアウトに関する豊富な実績を保有しております。ワンストップでサポートさせていただきますので、ワンフロアオフィスはもちろん、オフィスで実現したい希望や要望がございましたらぜひアイリスチトセにご相談ください。
◾️室温の自動化システムの導入を検討する
ワンフロアオフィスへの転換と同時に、室温を自動で最適化するシステムの導入を検討してみましょう。
オフィス環境における課題には、室温管理に関するものも少なくありません。従業員それぞれが快適に感じる温度は異なるため、風向きの調整やサーキュレーターの活用などの工夫を凝らしたとしても、全員のニーズを満たすのは困難と言えます。
しかし、室温の自動化システムがあれば、季節や時間帯に応じて室温を調整し、常に快適な環境を提供できます。適切な温度管理がおこなわれることで、風邪などの健康リスクも低減され、従業員の健康維持にも役立つでしょう。
ワンフロアオフィスへの転換に成功した企業の事例
アイリスチトセの実績から、ワンフロアオフィスに成功した企業の事例をご紹介します。ぜひ参考にしていただき、アイリスチトセの利用をご検討ください。
◾️株式会社ポプラ社様

株式会社ポプラ社様の事例では、従来2フロアで構成されていたオフィスをワンフロアオフィスに移転することで、「コミュニケーションが断絶している」「別のフロアで誰が何をしているのかわからない」という課題の解決をおこないました。
これまでおこなっていた仕事内容からオンラインで実施できる業務とできない業務を区別し、オフィスデザインの方向性を出社が必要な業務の効率化に決定。集中作業エリアや一人~少人数用のWebミーティングブースの設置などを実施しています。
ほかにも動線上の問題から取り合いになっていた会議室をエントランス近辺に集中配置して効率よく扱えるようにするなど、コミュニケーションの推進と同時にオフィス機能の大幅な整理を図ったプロジェクトとなりました。
【インタビュー】株式会社ポプラ社「オフィス移転プロジェクト ~コミュニケーションを活性化させる空間づくり~」
◾️株式会社ミュゼプラチナム様

株式会社ミュゼプラチナム様のワンフロアオフィス転換では、社内コミュニケーションを醸成しつつ快適な働き方をサポートすることを目指し、可能な限り壁を設けず全体を見渡せるレイアウトを意識しました。
デザイン面では、オフィス家具コレクション「enKAK (エンカク)」を導入し、人が集まりやすいよう心理的な柔らかさを表現する「en(円)」と、空間をシャープに整える「KAK(角)」を用いております。
ファミレス席や、集中ブース、会話を楽しめるミュゼカフェ(ラウンジ)などを設置し、ワンフロアオフィスのコミュニケーション増加メリットを得るだけでなく、一人ひとりが効率よく業務ができる環境作りを目指しました。
【インタビュー】株式会社ミュゼプラチナム「コミュニケーションの醸成に重点をおいた、社員の活躍を推進するオフィス空間作り」
◾️アイリスグループ目黒オフィス

アイリスグループ目黒オフィスでは、従業員が行きたくなる快適な環境づくりを意識して、植物をふんだんに配置するデザインを採用しました。木材を使い丸みを持たせた家具が、オフィス全体に統一性と温かみをもたらしています。
WELL認証を取得した東京アンテナオフィスのノウハウをいかし、健やかに働けるウェルビーイング視点で環境づくりを心がけています。
目黒オフィスの空間は、大半がアイリスグループの製品で構築されています。アイリスチトセのオフィスづくりは、アイリスグループの総合力を活かしたサポートが可能です。
まとめ:オフィスの課題を明確化しワンフロアオフィスへの転換を検討しよう

現代のオフィスは快適さや動線面での課題を抱えがちです。快適で従業員にとって働きやすいオフィスは企業の生産性や離職率抑制の観点からも重要なため、まずは課題を明確化したうえで、ワンフロアオフィスへの転換などの施策を検討しましょう。
ワンフロアオフィスは、従業員全員が同じ空間で働くスタイルで、コミュニケーションの促進やコスト削減など多くのメリットがあります。プライバシー確保や室温面での課題はありますが、集中エリアや室温自動化システムをあわせて導入することで解決可能です。
アイリスチトセはオフィスレイアウトに関するサポートだけでなく、オフィス家具や個室ブースなどの販売もおこなっております。ワンフロアオフィスへの転換を検討する際は、ぜひアイリスチトセへご相談ください。