ダイバーシティとはなにか簡単に解説|基本から推進のポイントまで

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ダイバーシティとはなにか簡単に解説|基本から推進のポイントまで

ダイバーシティという言葉がビジネスシーンで用いられることが増えてきました。しかし、実際にはどのような意味を持つ言葉なのか、企業の取り組みとして何をすべきか、疑問を持つ方もいるでしょう。

近年のビジネスシーンにおけるダイバーシティは人々や働き方の多様性に関する取り組みであるため、とても重要視されています。経営への反映は欠かせない取り組みと言えます。

この記事では、ダイバーシティの意味や、その実施・推進に関することがらを解説します。今回紹介する情報を、ぜひそのプロセスの参考としてください。

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ダイバーシティとは

ダイバーシティは、多様性を意味する言葉です。ビジネスシーンでは多様な人材を社内で受け入れ、組織の生産性を高める戦略のキーワードとして使用されています。

「多様性」と聞くと社会運動的なイメージを持つかもしれません。

しかし、企業においてはCSR(企業の社会的責任)を果たすだけでなく、イノベーション(新しい価値を創造すること)の促進を促す取り組みでもあることに注目が必要です。

ダイバーシティに基づく経営戦略は、企業に多様な価値観を与え、成長のきっかけをつくります。現代における採用事情やグローバル化した社会でのビジネスに適合するためにも、ダイバーシティの重視は欠かせないと言えるでしょう。

 

■ダイバーシティの属性

ダイバーシティを理解するためには、ダイバーシティを構成している人々の属性を把握することが大切です。

その人が生まれ持ち、外見からある程度推察できる性質である「表層的属性」と、その人の内面的な部分に関わる「深層的属性」の2種類から例示します。

表層的属性 深層的属性
  • 年齢
  • 性別
  • 国籍
  • 人種 など
  • 価値観
  • 宗教
  • 学歴
  • 嗜好 など

これらの属性は文字通りに多様なものです。特に深層的属性は、その人に特有の経験や教育、言語などに基づくことから、人の数だけ属性があるとも言えます。

どんな属性でも、定型的なパターンで対応を試みることはダイバーシティにそぐわないやり方です。たとえば、採用を「20代で大卒の日本人男性」に限定するようなことは、かえって多様な属性の否定につながります。

こうした属性が生む不平等、たとえば年齢による差別やジェンダーの不平等を解消し、個々人の属性を尊重して受け入れ、「属性の違い」を積極的に活かすことが企業のダイバーシティにおいて重要な要素です。

 

■インクルージョンの違い

多様性に関連して、インクルージョンという言葉もビジネスシーンで用いられています。ダイバーシティが一つの組織内に多様な人材がいる状態を表すことに対し、インクルージョンは、組織内にいる多様な人材が一体となって働いている状態を指します。

インクルージョンはより人材の活用に重きを置いた考え方ですが、企業にとってはどちらも必要な考え方です。

ダイバーシティによって獲得した人材をインクルージョンによって活用する、という考え方から、ダイバーシティ&インクルージョンというキーワードとして用いられることも少なくありません。

インクルージョンについては、下の記事でより詳しく解説しています。ダイバーシティと同じく重要なキーワードであるため、あわせて把握していきましょう。

インクルージョンとは?事例や実行ポイントまでわかりやすく解説

ダイバーシティが重要視される理由・背景

グローバル化やIT化、労働人口の減少、競争力の低下、女性の社会進出の推進など、日本企業を取り巻くさまざまな社会変化により、ダイバーシティを考慮した経営の重要性は高まり続けています。

この項目では、ダイバーシティが重要視される理由や背景を多角的に解説します。

 

■労働人口減少の対策

日本では2008年頃から労働人口は減少傾向にあります。その減少を補うために、より多様な人々が働けるようにするダイバーシティ関係の施策が注目されるようになりました。

労働人口の減少の対策は、男女の雇用差別の解消とも直結しています。女性は出産や育児があるためキャリアを形成できない、という従来の日本社会の考え方では企業の維持や成長を担う人材を確保できないという問題からも、ダイバーシティの推進は必要となっています。

加えて、労働人口の不足により、外国人労働者や障がい者など多様な人材を確保する必要性にも迫られていることが現状です。そうした人々が働きやすく、従来には無かった価値観を会社やビジネスに与えるためにもダイバーシティの観点は欠かせないものとなっています。

 

■多様化する働き方への対応

日本では終身雇用制度が一般的でしたが、現在はキャリアアップのための転職は珍しいことではありません。人材を流出させないために、企業は多様化した働き方への対応が求められています。

終身雇用を前提とした採用や人事のみをおこなう、という姿勢を続けていれば、採用力の低下を招きかねません。男性だから産休や育休を取りにくい、という環境では離職率の増加につながることもありえます。

多様化した労働市場から選ばれる企業になるためには、多様な働き方を認め、誰もが働きやすい環境を従業員に提供する必要があります。人材は競争力の原資となるため、ダイバーシティの推進は企業にとって重要な生存戦略でもあります。

 

■事業のグローバル展開への備え

海外に事業や拠点を展開する場合、日本国内で通用する価値観や知識だけで運営をおこなうことは難しいため、ダイバーシティを考慮する必要性が出てきます。

現地の人材の登用が必要になる場合はもちろん、現地採用をおこなわない場合でも、ビジネスの相手は違う文化背景、属性を持つ外国人となります。

受け入れ体制を整え、現地スタッフが働きやすく、顧客とスムーズな仕事ができる環境・意識を持つことが大切です。

 

■企業の成長促進

多様化した消費ニーズに対応するためには、企業の価値観も多様化する必要があります。市場の変化にスピード感をもって適応し、成長を実現するためにもダイバーシティの推進は重要です。

新卒採用で他の業種や職種を知らない人ばかりで構成された企業よりも、さまざまな経験を持った人のいる企業のほうが、多様なアイデアや知見からイノベーションが起こりやすくなります。企業としての競争力を高め、事業の選択肢を増やすことにもつながるのです。

ダイバーシティの取り組み事例

現在のビジネスシーンに適応し、ダイバーシティを推進することはとても重要ですが、具体的にはどのような取り組みをおこなえば良いのでしょうか。

こうしたキーワードはただのスローガンとして終わってしまうことも多く、会社の人事や制度、ルールに取り入れて実践する必要もあります。ダイバーシティの推進に用いられた取り組み事例を把握し、自社で実行する際の検討材料にしましょう。

 

■女性管理職を増やす

管理職を担う人材のうち、女性の割合を増やすことで男性にはない視点を企業に取り入れる事例は数多く見受けられます。

登用にあたっては、女性に合ったキャリアデザインに基づく育成プログラムが用意されていることもあり、ただ女性を増やすだけでなく、企業が管理職を担う女性の教育に力を入れることが重要視されています。

女性でも活躍できる会社像を提示することは、女性の人材をより幅広く集めることにもつながるでしょう。

 

■育児・介護の支援

育児や介護による働き方の変化が、キャリアデザインや労働環境に影響を与えないように支援をおこなう企業は少なくありません。育児や介護の手当てや、育休の期間を伸ばすなどの事例は多く存在しています。

ダイバーシティを推進する前は、産休や育休でキャリアを諦める女性や、老齢の親の介護のために働き方を変える人は少なくありませんでした。こうした人が変わらず活躍できる環境を整えるために、テレワークや就業時間の短縮など導入が増えています。

また、男性であっても育休や産休を取りやすいかどうかは、現在の労働市場においても注目される要素です。

 

■定年の延長

終身雇用と定年退職がセットとなっていた慣例を改め、能力のある人に長く働いてもらうよう定年を延長する企業も存在しています。

ベテランと言える社員は定年後も即戦力になりやすい人材です。その人の事情を考慮したうえで、活躍できる場を用意することはとても有効な選択肢と言えます。

 

■障がい者の採用職域の拡大

障がい者雇用をさまざまな領域で進め、本人の能力をフルに発揮できるような取り組みをおこなっていくこともダイバーシティの推進につながります。

障害者雇用率制度によって、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障がい者の割合を法定雇用率以上にする義務を課せられています。

この義務からさらに採用を積極化させ、営業や開発、研究、SEなどさまざまな職種でより積極的に障がい者を採用する企業は少なくありません。職場と連携して面談や入社時の教育で、本人が能力をフルに発揮できるような環境づくりに努めています。

 

■新規の就労場所の提供

既存のオフィスに限らない就労場所を用意することで、これまで採用できていなかった属性の人を採用できるようになり、会社の多様性を推進できた企業の例もあります。

遠隔地に住んでいたり、混雑した交通網に強い苦手意識を持っていたりする人にとって、通勤ラッシュを避けられない就労スタイルが強い抵抗感を生んでしまうことがあります。

しかし、テレワークやサテライトオフィスなどを導入することでそうした人も採用できるようになります。

また、シェアオフィスで人員に合ったサイズのオフィスを作ることや、フリーアドレスのオフィスレイアウトで部署間に壁のない環境を作ることも、個人の働き方に関わらずコミュニケーションを取りやすくするために有効な選択肢です。

ダイバーシティを定着させるポイント

これまでの会社風土・社会文化に慣れ親しんだ人にとっては、違う価値観を持つダイバーシティの推進に違和感を感じる場合があります。その原因は、コミュニケーション不足や認識の齟齬によるものと考えられます。

慣れ・不慣れは時間が解決する場合もありますが、だからといって放置するのではなく、ポイントをおさえたダイバーシティの定着プロセスを進めていくことが大切です。

ダイバーシティの推進の過程で生産性が落ちることのないよう、全社的に意識改革に取り組んでいきましょう。

 

■意見を出しやすい環境の整備

社内を意見の出しやすい環境にすることで、多様な意見を受け入れ、改善を続けていく土壌を育てられます。

日報や目安箱などで気軽に意見を出せるようにしたり、ダイバーシティ推進チームに相談窓口を設けたりしましょう。

多様性の実現には従業員一人ひとりの相互理解が欠かせません。日頃の業務や取り組みに違和感や疑問点が生じた場合でも他の人の意見を聞き、尊重ができるように意識改革を進めていくことが大切です。

 

■個人の尊重

従業員の属性だけでなく、その人個人のあり方の尊重が大切です。たとえば、女性向けのサービスは女性が作れば良い、というような企業風土では個々人が尊重されているわけではないでしょう。

当然のことながら、女性にもさまざまな考え方を持つ人が居ます。価値観や経験など深層的な部分も考慮して、人材を活用することが大切です。属性に捕らわれず、その人ならではの強みを活かすことが、新たな価値観やイノベーションの発見にもつながります。

 

■マネジメント層向けの研修

管理職や経営層など、マネジメント層向けにダイバーシティに関する研修をおこなうことが大切です。全社的なダイバーシティ・マネジメントを実現するためには経営レベルでの考慮が欠かせませんす。

一方で、ダイバーシティが現場レベルでのスローガンに留まってしまえば、具体的な行動が伴わない可能性もあります。経営方針、社内規則、人事評価などシステム面での変化によって、より実践的な変化をもたらすことができるでしょう。

 

■新しい仕組みの導入プロセスの透明化

ダイバーシティの仕組みを導入する際には、そのプロセスが従業員に納得されやすいよう透明化されている必要があります。

一方的で不透明な指示は違和感や不和の原因となります。多様な人材の相互理解が要であるダイバーシティでは避けるべきトラブルです。

しかし、すべての従業員の希望を満たせる仕組みを作ることもまた困難です。一部の人にとっては良くないと感じられる内容でも納得をしてもらえるように、ダイバーシティ導入の必要性やそのプロセスに透明性を持たせましょう。

 

■長期的な視野での取り組み

ダイバーシティの推進は長期的な視野で取り組みましょう。長く定着した価値観をすぐに変えるのは難しいことです。ダイバーシティの価値観や考え方が従業員に定着するには時間がかかるものだと想定しておくことが大切です。

また、実行した取り組みが自社にとって最適であるとも限りません。ダイバーシティの推進のやり方が強引であったり、反対に有名無実のものであったりする場合には評価と再試行が必要になります。

多様な価値観を認めるためには、自社に存在する多様な個々人の尊重が必要です。従業員一人ひとりがダイバーシティを理解できるように、時間をかけて会社全体を変えていきましょう。

ダイバーシティに関してよくある疑問

この項目では、ダイバーシティに関してよくある疑問と、その答えをピックアップして紹介していきます。

 

■ダイバーシティの推進で受けられる支援はあるか?

経済産業省がダイバーシティ推進の支援をおこなっています。ダイバーシティ経営について、ガイドラインやツールを提供しているため、利用を検討してみましょう。

また、過去にはダイバーシティ経営に優れた企業を100社選出し、経済産業大臣表彰がおこなわれていました。選定は2020年度分で終了していますが、受賞企業の取り組みが一部動画などで紹介されています。

※参考:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」

 

■ダイバーシティ経営に役立つITツールは?

従業員の管理には、タレントマネジメントシステムと呼ばれるカテゴリのITツールが有効です。従業員の個性・才能・スキルなどのタレント(資質)を集約し、全社で共有できます。

また、テレワークを代表とする多様な働き方を推進するために、グループウェア(ビジネスチャットやスケジュール管理をおこなうシステム)やテレビ会議システム、セキュリティソフトも導入すると良いでしょう。

まとめ:ダイバーシティの推進で次世代型の経営を

労働市場の変化や経済のグローバル化によって、ダイバーシティ経営はこれからの企業に欠かせないものとなっています。競争力の維持やイノベーションのため、多様な属性を持つ人を従業員として迎え入れ、個人個人の特性を活かせる会社づくりを目指しましょう。

ダイバーシティの推進の具体的取り組みにおいては、女性のキャリアデザインや育児者、介護者への対応、働ける人の幅を増やすことが大切です。会社全体が多様な働き方に理解を示せるように、環境や教育体制の整備にも力をいれていくことも欠かせません。

適切なダイバーシティの推進方法を把握して、会社の将来のための改善を進めていきましょう。

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