オフィスファニチャー・シリーズ「FOUNDER」
商品開発ストーリー
ひとつの商品が生まれるまでのいきさつ、商品に込められた意図、企画・開発者の想いなどはあまり知る機会がありません。
「Products story」では、こうしたひとつひとつの商品についてひとりでも多くの皆様に知っていただけるよう、商品企画・開発時の裏話をご紹介します。
今回はアイリスチトセの人気商品である「FOUNDERシリーズ」の開発ストーリーについて、
当時本部長として企画・開発の中心にいた大山紘平氏(現 アイリスチトセ専務取締役)へインタビューを行いました。
※感染対策を行った上で取材を行っています。
商品カテゴリを超越したブランド開発
FOUNDERシリーズを開発することになったきっかけを教えていただけますか?
そのカルチャーを否定するつもりはありませんが、一方で最終的にそれぞれの家具を同一のオフィスに納めると、空間全体で見たときにデザインの統一感がでないというジレンマを抱えていました。
これは自社製品、他社製品問わず感じていたことです。
そこでオフィスにひとつの統一感が生まれるように、ひとつのシリーズ家具としてすべてのデザインのルールを決めて統一感のあるものを作ることができれば、より付加価値の高いオフィス空間を生み出すことができるのではないか。そういった想いから本プロジェクトが始動しました。
単品開発ではなく空間を想定した開発で、様々なアイテムに統一感を出すことにしたということでしょうか?
そうですね。
FOUNDERのデザインのベースとして、シリーズ全ての製品群のカラーや質感、マテリアルを統一しています。
天板、ファブリックカラー、フレーム、マテリアル、全てにおいてこだわりを持っています。
また、そうしたデザインへのこだわりももちろんありますが、開発するのであればこれからの働き方を良く分析した中でABW(※注釈)に対応できるように、導入した空間を通してエンゲージメントが上がる要素を取り入れようと考えました。
そういった経緯を経て、FOUNDERシリーズが生まれました。
※Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)
時間や場所に縛られず、その都度仕事内容に応じて、最も効率的な方法を自由に選ぶことができる働き方。
商品コンセプトを統一して一斉に開発するにあたって苦労したことはなんでしょうか?
商品開発部門全員のベクトルを合わせることが大変でした。
一斉に開発を進めるためには「みんなで世の中にまだないようなブランドを作るんだ!」という意識を醸成することが必要です。
これまでは単品開発が主流だった中で、一斉に全てのアイテムに統一感を持たせて進めて行くには、業務としての質、仕組み、技術などが大事だということは大前提ですが、それぞれが同じベクトルを向いて動かなければいいモノは生まれない。そう考えていたので、まず皆の理解を得ていく作業から始めました。
そこで、「なぜこのシリーズ家具を開発する必要があるのか。」そこをしっかりと落とし込むために皆とできる限りコミュニケーションをとりました。
なるべくトレンドのポイントを押さえつつも、あまりごちゃごちゃさせたくもない。
けれど表情があるマテリアルにしたいというこだわりがあったのでとても時間がかかりました。
例えばマットな質感がトレンドではありますが、指紋が付きやすいという課題があったので、「マットだけど指紋が付きにくい。」そういった細部までしっかり配慮ができる素材選定を行いました。
あらゆるメーカーのサンプルを見て研究し、最終的に自社開発まで持っていくまでが大変でしたね。
選定するにあたってどれくらいのマテリアルを見られたのでしょうか?
これでもかというほど見ました。優に100は超えていると思います。
例えば天板も、実際に様々な突板やメラミン化粧板を天板にひたすら貼って試すという作業を繰り返して最終的に選びました。
椅子の座面で使われるメッシュについても、今は時代が変わりトレンドも少しずつ変わってきていますが、当時の最先端の色にすべく色出しについてもとても試行錯誤しました。
最終的に選んだ決め手やポイントはありますか?
世界のトレンドを押さえながらも、日本のオフィスにあうようなマテリアル選定が必要だと考えていたので、そこを突き詰めた上で選びました。
世界のトレンドを押さえるとは言いましたが、日本の企業に馴染むことができるということが大事です。
例えばいきなりビビットな緑色を持ってきても、日本ではなかなか受け入れられにくい色だと思うので、そういったものはジャパンナイズしていきました。
ビビットな緑もヨーロッパだと映えるかも知れないですが、日本には日本人の感覚とその良さがあるのでそこは大切にしました。
FOUNDERに込めた想い
FOUNDERと名付けた理由は何でしょうか?
「FOUNDER」という言葉は、日本語に直訳すると「創設者・創業・立ち上げメンバー」などの意味を持ちます。
これを元に2つの意味を込めて名付けました。
一つ目は、私たちの家具をきっかけに、その企業の創業時の思いなどに立ち返るきっかけになって欲しいという想いを込めています。
統一感のある家具ということで、単品販売というよりオフィス移転やオフィス改修の際に導入いただくことを想定している家具シリーズですが、オフィスの移転や改修は会社にとって改めて「自分」の会社を見つめ直すとてもいい機会だと考えています。
オフィスは働く場であると同時に、企業のアイデンティティや理念を体現できる場所でもあると考えます。
移転や改修を機に、創業当時の熱い想いや「自分」という会社を改めてよく理解することで、新しいステップに行くことができる。そう考えているので、私たちの家具がそうしたきっかけ作りになって欲しいという想いからです。
二つ目は、オーナー家である私自身が、アイリスチトセの本部長(発売当時)として、創業家(FOUNDER)としてアイリスチトセを次のステップへ進めるための、その転機となるブランドにしたい。「自分自身がFOUNDER」という想いから新しい提案型のオフィス家具シリーズとして生まれました。
社内の変化と展望
アイリスグループの東京ライブショールームの家具はFOUNDERシリーズですが、社員の反応はいかがでしたか?
会社に対してのブランディングもそうですし、エンゲージメントが上がるような評価はいただけたかなと思います。
実際に離職率も下がっています。
そもそもこのFOUNDERシリーズは、大前提として発売当時(約4年前)の最新の働き方に対応できるオフィス家具にしたいと考えていました。
従来の働き方ではなく、最新の働き方に対応しつつデザイン的にオフィスに統一を持たせることが狙いです。
その為、開発に着手した約5年前からABW(※注釈)はしっかりと頭に入れて、そこでのフレキシビリティをしっかりと発揮できるようにすることは念頭に置いていました。
アイリスグループも今までは白のスチールデスクを使った固定席でしたが、FOUNDERシリーズの家具を置いたことによって、ABWの働き方ができるようになりました。
それによって、意匠性だけでなくアイリスグループ全体の働き方がひとつステップアップしたような感覚を社員が持つことができていると思います。
FOUNDERを作ったことで会社に変化はありましたか?
そうですね。今までの自分たちの領域ではできないと思っていたことが、できるようになったことは大きいです。
できないと思い込んでいたことが実際にできて、自分たちの可能性ってまだまだあると気が付くことができたこと、それにより開発者全体がレベルアップしたことはすごくよかったです。開発者自身が新しいことに対するチャレンジする習慣が身について、何事にも臆せずにチャレンジできる体質になってきたと思います。
単品でなくあらゆるものを同時に開発していけるようになったことも、FOUNDERを作ったことによって付随して生まれた会社としてのひとつのメリットだと言えます。
発売から4年経ちましたが、今後ブランドとしてこうして行きたいという展望はありますか?
まずひとつは「コロナ対策」です。
緊急事態宣言が解除され、これまではリモートワークだった企業も少しずつオフィスワークに戻りつつあります。
ですが、「安心」「安全」をしっかりと担保した上で、オフィスに戻ってきてもらうという順序があると思います。
そうしたこともあり、第一順序はコロナ対策がしっかり出来る什器であること。
ここについて、FOUNDERシリーズは順次対応しています。
次に「最新の働き方に適応すること」です。
オフィスワークする人と、リモートワークする人どちらもいる「ハイブリッドワーク」が主流になってきています。新しい働き方に変わっていく、そこに適応するラインナップを順次発売していきたいと考えています。
働き方が変わっていくとはどういうことかというと、現在は「リアルとデジタルをいかに融合していくか」というフェーズに間違いなく入っていると考えています。
当初からコンセプトとして持っていたフレキシビリティは、オフィスの中だけのフレキシビリティではありません。
本質的なABWというのは、オフィスだけではなくカフェやコワーキングスペース、シェアオフィスなど、あらゆる場所を選ぶことができる。
リモートワークもその手段の一つです。
センターオフィスとして存在するオフィスに求められるニーズも変わってきています。
私たちのホームページにも掲載していますが、オフィスでしか醸成できないことはたくさんあります。
そういったものに適応し、今まで以上にフレキシブルにコミュニケーションがとれるような世界観を出していきたいですね。
オフィス移転・改修は100点でなくても良い
最後に、このブログを読んでくださった方々に何か伝えたいことはありますか?
このブログの読者の方々がファシリティ系、総務系の方だと仮定してお話するとすれば、オフィスの移転・改修は
「肩の力を入れすぎず、80点ぐらいでいいんですよ。」とお伝えしたいですね。
もちろん100点は目指しますが、肩の力が入りすぎてしまうと移転・改修した後に周りの反応ばかりが気になってしまいます。
オフィス移転・改修はゴールではなくスタートです。
移転・改修というスタートを切った後、そこから自分たちの会社のカルチャーや働き方にいかにマッチさせていくかが重要です。
そうする為に常に改善点を見出し、ずっと進化し続けるオフィスにしていくという心構えでオフィス設計を行い、トライ&エラーを繰り返していくことが大切です。
だからこそ80点ぐらいでいい。
私も担当の方とお会いする機会があるのでとてもよくわかるのですが、皆さん会社の一大ミッションとしてとても構えてらっしゃるので、非常にご苦労が多い姿をお見受けします。
ですが、今私がお伝えしたような考え方ひとつでずっと進化し続けられるオフィスを作っていける。
そうすると、最終的にはご自身のされていることが会社にとって「良い」カルチャーとして変われる、そのきっかけを皆さんが作っているのです。
だからこそ「肩の力を入れすぎず、80点ぐらいでいいんですよ。」と伝えたい。
そして胸を張ってお仕事して欲しいと思います。
デザイン性のみに目が行ってしまいそうですが、こうしてお話を聞くとデザインへのこだわり以外にもあらゆる狙いが散りばめられていることがわかります。そして提案の幅を広げることができただけではなく、会社としても相乗効果を生んだこのシリーズには、多くの可能性が秘められていると感じました。新型コロナウィルスの感染拡大により急速に変化し始めた働き方に沿うべく、日々進化し続けるFOUNDERのコンセプトと開発秘話を伺いました。
本日はありがとうございました!
アイリスチトセは、アイリスグループの総合力を持って
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