【事例あり】フリーアドレスとは？メリット・デメリットや成功させるポイント
フリーアドレス
フリーアドレスとは、従業員が席を自由に選択して業務をおこなうワークスタイルです。テクノロジーの進化や働き方の変化などを受け、ワークスペースをフリーアドレスに切り替える企業が増えています。しかし、フリーアドレスを導入するにあたって、どのようなレイアウトにすればよいのか悩む企業もあるでしょう。そこで、フリーアドレスの概要やレイアウト事例、成功させるためのポイント、導入手順などを紹介します。
目次
フリーアドレスとは
近年、多くの企業がオフィスの在り方を見直すなかで、柔軟な働き方を実現できる「フリーアドレス」に注目が集まっています。まずは、フリーアドレスの概要や導入の背景について解説します。
従業員が好きな座席で働けるワークスタイル
フリーアドレスとは、決められた席を設けずに従業員が空いた席を自由に選んで業務をおこなうワークスタイルです。従来のような固定席とは違い、業務内容や気分に合わせて席を選べるのが特徴です。
ノートパソコンやスマートフォンといったデバイスを持って席に座り、インターネットに接続して業務を進めます。書類や資料などの共有物はキャビネットに、個人の荷物はロッカーに収納するのが一般的です。
フリーアドレスが注目されている背景
多様な働き方を導入し、オフィスの使い方を見直す企業が増えたことで、人数の変化に柔軟な対応ができるフリーアドレスの注目度も高まっています。また、無線LANやモバイル端末の普及など、情報通信技術（ICT）の進化もフリーアドレスの導入を後押しする要因になっています。
フリーアドレスの種類
フリーアドレスには「完全フリーアドレス」と「グループアドレス」の2種類があります。それぞれの特徴を踏まえ、自社に適したものを選択しましょう。
1. 完全フリーアドレス
「完全フリーアドレス」は、部署や部門に縛られず、各従業員が自分の好きな座席を選べるスタイルです。毎日異なる席に座ることで、チームの垣根を越えたコミュニケーションが生まれやすくなります。また、空いている席に自由に座れるため空席が出づらく、オフィススペースを有効活用できるのもメリットです。
ただし、座席選択の自由度が高いがゆえに「誰がどこにいるのか」を把握しづらい点は、デメリットといえるでしょう。
2. グループアドレス
「グループアドレス」は、部署や部門、職種といったグループごとにエリア分けがされ、その中から座席を選べるスタイルです。完全フリーアドレスと比べると座席選択の自由度は下がりますが、固定席よりも自由度が高いのでマンネリ防止につながります。グループごとに座るためチームメンバーの動向を掴みやすく、情報共有やチームマネジメントがしやすいのもメリットです。
ただし、選べる座席が限定される、チームの人数や出社状況によっては空席が生まれやすい、チーム以外の人とコミュニケーションをとりづらいなどの点には注意が必要です。
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フリーアドレスの基本的なレイアウトと導入事例
フリーアドレスの基本的なレイアウトは対向式、同向式、背面式の3種類です。フリーアドレスのおもなレイアウトを、実際に導入している企業の事例をもとに紹介します。
対向式：東洋熱工業株式会社
対向式は複数のデスクを向かい合わせ、一つの島のように配置するレイアウトです。複数のデスクをまとめられるため、部署やチームごとに配置しやすいという特徴があります。
東洋熱工業株式会社では、オフィスの改装を機にワークスペースにフリーアドレスを導入しました。ワークスペース内には対向式の他に、ソファ席を設置。対向式は背後に導線を確保する必要があるため、スペースの中央に配置しました。
同向式：アイリス北目町ビル
同向式はすべてのデスクを同じ向きに配置するレイアウトで、銀行の店舗やコールセンターなどでよく見られます。対向式のように向かいのデスクにいる従業員の視線が視界に入らないため、業務に集中しやすい点がメリットです。
アイリス北目町ビルでは、建物の改装とともに体感型オフィスとしてリニューアルした際に、フリーアドレス席として複数のタイプを導入しました。同向式は従業員が業務に集中できるよう、壁面に向かって配置されています。
背面式：株式会社セゾンリアルティ
背面式は、従業員同士が背中合わせになるようにデスクを配置するレイアウトです。工夫次第で、円形や四角形などのさまざまなパターンで配置することも可能です。部署やチームごとに配置すると、メンバー同士のコミュニケーションがとりやすくなります。
株式会社セゾンリアルティは、フリーアドレスのワークスペース内に対向式と背面式の席を配置しました。従業員と向かい合わせになる部分にはパーテーションを設置し、視線が入らないように配慮されています。
フリーアドレスにおける座席タイプと導入事例
フリーアドレスのワークスペース内には、カウンター席やブース席、集中ブース席（個室ブース席）など、さまざまなタイプの席を設置できます。フリーアドレスの座席タイプと、企業の導入事例をみていきましょう。
カウンター席：中山視覚障害者福祉財団 中山記念会館
カウンター席は、バーカウンターのような高さのデスクとチェアを採用した席です。窓際に設置すると仕事の合間に外の景色を眺められ、リフレッシュ効果が期待できます。スペースの中央に設置すれば、簡易的なミーティングや打ち合わせの場として活用することも可能です。
中山視覚障害者福祉財団中山記念館では、ワークスペースと通路を区切ったパーテーション面に、カウンター席を設置しました。パーテーションは目線の高さまであるため、周囲の視線を適度に遮ることが可能です。
ブース席：株式会社Seven Arcs
ブース席は、一つのテーブルを挟んで二つのソファを対面で配置する席です。まるでファミリーレストランに設置されているような席であることから、ファミレス席と呼ばれることもあります。ワークスペース内ではあるものの、カジュアルな雰囲気でリラックスして仕事に臨めます。
株式会社Seven Arcsは、ワークスペースの側面にファミレス席を設置しました。スペース内にはファミレス席の他に、異なる形の対面式の席が散りばめられています。4人掛けのソファを採用しているため、8人程度のミーティングや打ち合わせに利用できます。
集中ブース席（個室ブース席）：株式会社マツキヨココカラ＆カンパニー
集中ブース席（個室ブース席）は周囲の視線や雑音を遮り、一人での業務に集中するための席です。ブースには、フルクローズドタイプとセミクローズドタイプの2種類があります。
フルクローズドタイプは床と壁、天井に囲まれているため、Web会議に適しています。セミクローズドタイプは、壁や天井の一部がオープンになっているものの、周囲の視線をほどよく遮ることが可能です。複数人で利用できるタイプもありますが、大人数で利用するには適切ではありません。
株式会社マツキヨココカラ＆カンパニーは、フリーアドレスのワークスペース内に集中ブースを設置しました。フルクローズドタイプの他に、セミクローズドタイプも複数設置されています。
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フリーアドレスの導入を成功させるためのポイント
フリーアドレスの導入を成功させるには、事前の準備が欠かせません。レイアウト設計やオフィス環境の見直し、ペーパーレス化の推進など、適切な対策を講じることで、快適で効率的なオフィス環境を実現できるでしょう。
レイアウトを綿密に設計する
フリーアドレスを導入する際はレイアウトが重要です。単にデスクの位置を変えるだけでは非効率になりかねません。適切な座席数を把握した上で、フリーアドレスを導入する目的に合わせたレイアウト設計をしましょう。
ただ、オフィスのレイアウト変更では専門的な知識を要するケースがあるため、導入は社内で完結するよりも専門業者に依頼する方が安心な場合もあるでしょう。
アイリスグループのアイリスチトセでは、オフィス移転トータルサービスを展開しています。物件紹介からオフィスデザイン、内装工事、家具の手配、引越しまでワンストップでサポート。オフィス移転に合わせてフリーアドレスの導入を検討しているのであれば、ぜひお気軽にご相談ください。担当者がお客様の状況に応じてやるべき内容を整え、進行を支援します。
オフィス家具を見直して環境を構築する
フリーアドレスの導入によって従業員の業務効率や生産性を向上させるためには、環境構築も大切です。既存のオフィス家具はフリーアドレスに適さないケースもあるため、導入を機に見直しましょう。ニーズの高まりに合わせ、フリーアドレス向けのオフィス家具が数多く登場しています。
アイリスチトセでは、フリーアドレス向けのオフィス家具を多数取り揃えています。スタンディングワークに対応できる電動昇降デスクや集中ブースなど、代表的なオフィス家具はこちらから御覧いただけます。
ペーパーレス化を進める
フリーアドレスの導入を成功させるには、ペーパーレス化が欠かせません。紙の書類を使用したままフリーアドレスを導入すると、席を移動する度に書類を持ち運ぶ必要がある他、サインや捺印が必要な際に該当従業員を探す手間もかかります。
その点、ペーパーレス化すれば書類の持ち運びが不要になります。契約書や請求書も電子化すると、離れた席の人ともやり取りできて効率的です。
フリーアドレスに役立つツール・グッズを揃える
従業員がどの席を選んでもコミュニケーションや管理に問題が生じないよう、フリーアドレスに役立つツールやグッズを揃えましょう。
| 種類 | 特長 |
| チャットツール | 離れた場所で働く従業員同士が気軽にやり取りできる。 |
| 座席管理ツール | 席の使用状況をシステム上で可視化し、管理をスムーズにする。 |
| パーソナルロッカー | 私物や仕事で使う資料などを入れられる。 |
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フリーアドレス導入の注意点
フリーアドレスは柔軟な働き方を実現できる一方で、運用次第では従業員のモチベーション低下や人材育成の課題を引き起こす可能性もあります。フリーアドレス導入時に注意すべきポイントについて解説します。
従業員のモチベーション低下を防ぐ対策を講じる
フリーアドレスは席が自由なため、人によっては孤独感を覚えることがあります。また、チームメンバーとの接触が減ると、帰属意識が薄れやすいともいわれます。さらに固定席を好む人にとっては、フリーアドレスの導入は喜ばしくないでしょう。
従業員のモチベーション低下は生産性の低下につながるため、導入前後のヒアリングや、フリーアドレスを導入する目的の周知などに注力しましょう。
人材育成の進め方を工夫する
毎日同じ席に座る固定席と違い、フリーアドレスでは同じチームの人と顔を合わせる機会が減ります。特に完全フリーアドレスの場合、近くで上司が見守り適切なタイミングで指導することが難しいため、新入社員や若手の育成に支障が出る恐れがあります。
チャットツールでこまめに連絡をとる、上司が部下の様子をよく確認するなど、人材育成の進め方に工夫が必要です。
フリーアドレスの導入手順
フリーアドレスを導入する際は、目的を明確にし、導入する部署を慎重に選定することで、スムーズな運用が可能になります。また、運用ルールの策定やレイアウト設計、必要なオフィス家具・ツールの準備も欠かせません。フリーアドレスを円滑に導入するための手順を詳しく解説します。
1. フリーアドレス導入の目的を明確にする
フリーアドレスを導入する目的を明確にし、社内で共有しましょう。目的があいまいなまま導入すると、従業員の理解が得られない、フリーアドレスという働き方が浸透しない、従業員がストレスを感じるといったリスクにつながります。導入前に目的を明確化し、社内の意見も取り入れた上で運用していくことが大切です。
2. フリーアドレスを導入する部署を選定する
フリーアドレスは業務内容によって合う・合わないがあります。適しているのは、営業部門や企画部門などの外回りや社外でのミーティングが多い部署です。
反対に、人事部門や経理部門などは機密書類を扱う機会があり、電話対応も多いため、固定席の方が効率的です。フリーアドレスの導入をスムーズに進めるためにも、各部署の業務内容を把握した上で導入可否を決めていきましょう。
3. フリーアドレスの運用ルールを策定する
フリーアドレス導入の失敗例でよくあるのが、「フリーアドレスを導入したのに席が固定化してしまった」というもの。それを防ぐためにも、毎日異なる席を選ぶ、外出先から帰社した際には別の席を選ぶなどの運用ルールを策定する必要があります。
また運用ルールには、私物の管理方法も含めておくと安心です。運用ルールを策定した後はすべての従業員に周知し、ルールを浸透させましょう。
4. レイアウトやオフィス家具、ツールなどを検討する
フリーアドレス導入に向けて、レイアウトやオフィス家具、必要なツールなどを検討し、環境を整えましょう。フリーアドレスの導入に向けた検討の一例は、次のとおりです。
- フリーアドレスの種類（完全フリーアドレス or グループアドレス）を決める。
- 必要な座席数を把握した上でレイアウトを考える。
- 大型のロングデスクやキャスター付きのデスクなど、フリーアドレスに適したオフィス家具を設置する。
- 荷物を置くワゴンやパーソナルロッカーを用意する。
- 座席管理システムやWeb会議システム、チャットツールなどを整備する。
フリーアドレスを導入するメリット
フリーアドレスを導入することで得られるおもなメリットは次のとおりです。
部署やチームを超えたコミュニケーションが生まれる
毎日選ぶ席が異なれば隣の席の従業員も変わるため、部署やチームを越えたコミュニケーションが発生しやすくなります。進捗状況をお互いに把握しやすいだけではなく、今まで話す機会が少なかった従業員同士がコミュニケーションをとることで、新たなアイデアが出る可能性もあります。
オフィススペースの有効活用・コスト削減につながる
テレワークや外回り、出張などをおこなう従業員が多い企業がフリーアドレスを採用すれば、オフィススペースを有効活用できます。
従来の固定席だと在籍するすべての従業員の席が必要になりますが、フリーアドレスの場合は常時オフィスにいる従業員の最大数の席を確保しておけばよいので、座席数を減らして空いたスペースを他の目的に使用することも可能です。
また、座席数の減少に応じて2フロアから1フロアに変更する、面積が狭いオフィスに移転するなどの工夫により、賃料の削減につながります。
レイアウトを変更しやすい
フリーアドレスは座席と従業員が紐づいていないので、レイアウトの変更が容易です。従来の固定席では、席の変更があった際にデスクを動かし、荷物を持って場所を移動する必要がありました。
その点、フリーアドレスであれば席が固定されていないため、レイアウト変更に柔軟に対応できます。また組織や人数に変更があっても、オフィスのレイアウトを変更する必要がありません。
業務効率・生産性の向上につながる
フリーアドレスは従業員が好きな座席を選べるため、主体性の向上や自律的な働き方の促進が期待できます促進に期待ができます。
一人で集中できる座席を選ぶ、他の従業員とコミュニケーションをとれる座席に移動するなど、各々の気質や業務内容に応じたスペースで働けるので、仕事への意欲が上昇しやすいでしょう。仕事に対して前向きな姿勢になることで、業務効率や生産性の向上につながります。
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フリーアドレスを導入するデメリット
フリーアドレスの導入前にデメリットも理解しておきましょう。
誰がどこにいるのかわかりづらい
フリーアドレスでは従業員が自由に座席を選べるため、「誰がどこで仕事をしているのか」がわかりづらいのが難点です。電話や来客があった際、該当の従業員をすぐに探し出せないこともあるでしょう。
さらに座席が上司や部下、部署やチーム単位で固まっていない場合、有事の際の連絡が難しくなり、業務に支障をきたす恐れもあります。そうならないよう、各従業員の居場所がわかるツールやチャットなどのデジタルツールを活用しましょう。
書類や持ち物の管理が負担になりやすい
フリーアドレスでは、荷物の管理が負担になることがあります。固定席であれば自分の席に書類や荷物を置いておけますが、フリーアドレスでは移動時に持ち運び、退社時に片づける必要があります。
荷物を移動させることで紛失のリスクも高まるので、フリーアドレスを導入する際は、荷物の管理についても考えておくことが大切です。
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フリーアドレス導入時はレイアウト設計を慎重に
フリーアドレスは従業員同士のコミュニケーションの活性化や、オフィススペースの有効活用、コストの削減など、さまざまなメリットがあるワークスタイルです。しかし運用を成功させるには、ただ導入して席の固定化をやめればよいわけではありません。
またオフィス面積には限りがあるため、自社だけではイメージどおりのレイアウトが実現できない可能性もあります。オフィスデザインの専門家への相談も検討し、理想的なフリーアドレスを実現しましょう。
アイリスチトセでは、アイリスグループの総合力でプランニングから内装工事までをトータルでサポートしています。コミュニケーションやチームワークなどのさまざまな観点からオフィス環境を分析し、最適なプランを提案します。ぜひお気軽にご相談ください。