【インタビュー】宇都宮海星女子学院「生徒が主役の改修プロジェクト」

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【インタビュー】宇都宮海星女子学院「生徒が主役の改修プロジェクト」

所在地栃木県宇都宮市
クライアント宇都宮海星女子学院中学高等学校
業種学校・教育
完成年月2021年12月

栃木県宇都宮市にある宇都宮海星女子学院中学高等学校様が『ミライの建築デザイナー発掘プロジェクト!』と題し、生徒会を中心に生徒自らが企画、デザイン、進行に取り組んだ自習室改修プロジェクトについてご紹介します。

今回は生徒会顧問 坂田昌教諭 大橋陽子教諭、そして実際にプロジェクトを進めていった同校の生徒会長 福島ひよりさん(2年生)、デザイン企画者である竹内妃菜さん(2年生)にお話を伺いました。

改修プロジェクトメンバー

※感染対策を行った上で取材を行っています。

生徒が主役の改修プロジェクト

今回の『ミライの建築デザイナー発掘プロジェクト!』を始めたきっかけを教えていただけますか?
坂田教諭:今回改修したスペースは元々学校側で自習室として準備をしていた空間でした。
しかし、場所として用意はしたのですが単に椅子と机を置いていただけなので、生徒の学習のためにもより良いものにしたいという話があり、前生徒会を中心に動き始めました。

大橋教諭:生徒会がきっかけなのであればということで、生徒の中から案を求めることになり、デザインはコンペティションという形式になりました。

福島:「生徒会として新しいものを創り出して、それを友人たちと一緒に使っていきたい。」そんな想いのもと前生徒会を中心にプロジェクトが動き出しました。

生徒自らが感じていた課題を解決

デザイン企画者 竹内妃菜さん(2年生)

デザイン企画をされた竹内さんに質問ですが、コンペティションに参加しようと思った理由を教えて頂けますか。
竹内:私は改修前の自習室を放課後によく利用していましたが、机が低く、長時間勉強していると肩が痛くなることが度々ありました。また、テスト前になると満席になってしまい使用できないこともありました。

そうした経緯もあり、一緒に使っていた友人ともっと良くならないかなという話をよくしていました。
そんな時に生徒会がこの自習室改修プロジェクトを企画していることを知り、実際に使用している生徒目線でデザインすることで、在校生の学力向上のための場所づくりに貢献できればいいなと思い応募しました。

満席で使用できないことがあったとのことですが、席数は増えたのでしょうか?
竹内:増えました。新しくなった自習室だと個別ブースもあるため、40人ぐらいが同時に使用できるようになりました。
前の自習室だと、新型コロナウィルスの関係で距離をとる必要があったので、満席になりがちだったのですが、今ではたくさんの人が使えるようになったと思います。

デザインやレイアウトなど、こだわったポイントがあれば教えていただけますか??
竹内:いくつかこだわった部分があるのですが、以前の自習室は生徒自らが行きたいと思うような空間ではありませんでした。
そうした理由から、カーペットや椅子の張地などでカラフルな要素を取り入れて気軽に足を運べるようなデザインにすることにこだわりました。

また、椅子の座り心地も重視しました。
個人スペースもディスカッションスペースもそうなのですが、座面をクッション素材にすることで長時間勉強していても疲れないようにと考えました。
その他にも個人スペースに置いてある椅子は、身長に合わせて高さを調節できるものを取り入れています。

冬になるとよく上着などをイスの背もたれに掛けるのですが、授業中や自習中によく落ちてしまっていて集中の妨げになっていました。そこで自習室にはハンガー付きのイスを一部採用しました。背もたれにコートを掛けたときに襟が背中にあたることが個人的にすごく気になっていたので、そこも改善されて嬉しいですね。

プロジェクトを通して自主性を育む

今回のプロジェクトは、学校、生徒、企業と連携が必要な部分が多くあったかと思いますが、進行するにあたって、皆さんはそれぞれどういった役割分担で進められたのでしょうか?

大橋教諭:特に役割分担をして進めているわけではありませんでした。

坂田教諭:私たち教員は打合せには立ち会いますが、どちらかというと見守り役でした。

大橋教諭:ただ、本校を卒業したデザイナーの方にデザイン面では色々とアドバイスはもらっていました。
生徒たちからすると大先輩で、審査にはその方にも入っていただいて、デザインのどんなところが必要で、どう生かしていけるのかというところを一緒に考えていただきました。

坂田教諭:審査は他のコンペ参加者と、前生徒会のメンバー、先輩デザイナーで進めました。
その際に先輩デザイナーの意見を聞きつつ、最終的には生徒会長をはじめとしたプロジェクトメンバーが、いいと思った今回のデザイン企画者である竹内さんの案が選ばれました。

旧生徒会から始まったプロジェクトですが、生徒会選挙後は新生徒会長に引継ぎをして、新生徒会のメンバーが完成までの話し合いに参加して決めていきました。ここにいる新生徒会長の福島さんも実は応募者のひとりでした。

自習室に置く商品の選定も竹内さんがされたのでしょうか?
竹内:もともと私がカタログを見て選んでいたものと、アイリスチトセの今津さんから提案していただいたものを比べて選びました。
絶対にどちらかの提案を取らないといけないという考えではなくて、自分の考えと企業の方の考えを照らしあわせて、こうすればいいなと思った商品を選んだり、自分の提案でこれは絶対こっちがいいと思ったものはそれを提案させていただいたりしました。

たくさんの想いをカタチに変えていく

このプロジェクトを進めるにあたって、それぞれ皆さんの中でこれが大変だったことや、ここは工夫が必要だったなというエピソードがあれば教えていただけますか?
竹内:「最優秀賞に選ばれた方には実際にプロジェクトに携わっていただきます。」ということは知っていましたが、まさかこんな大がかりで、予算もたくさんいただいて、企業の方とタッグを組んで創り上げていく機会をいただけるとは想像もしていなかったので、初めてそれを聞いた時には不安の方が大きくありました。

こうして振り返ってみると企業の方がいてくださったからこそ、たくさんの人に魅力的に感じてもらえる自分のデザインに沿った自習室を作ることができたので、人生の中で大変貴重な経験ができたと感じています。

難しかったことは、決められた予算のなかで、この大きな空間をデザインしなくてはいけないということでした。

壁紙も本当は貼り替えたいと考えていましたが、予算の関係で最終的には諦めることになり、完成するまではどうなるかとても不安でした。
実際に完成した自習室を見てみると全く違和感もなく、時には優先順位を決めて何かをカットするということも必要なのだと、とても勉強になりました。

坂田教諭:福島さんは会長として前の会長から引き継いで見てどうですか?ある意味とんでもないものを引き継いだと思わなかった?

福島:引継ぎにあたってどういう内容のプロジェクトなのかを前生徒会長から聞いて、じゃあ竹内さんと一緒に他の生徒会のメンバーとどのように自習室を作っていくか?という部分では少し悩みました。

先ほど竹内さんも話していましたが色々な案を練って考えるにあたって、やりたいことはあるけれど決められた予算の中で妥協せざるを得ない点はいくつかありました。

例えば、自習室内のゴミ箱は当初はもっと大きなものを導入したいと考えていましたが、予算オーバーになるため最終的に現在の形に落ち着きました。実際にはとてもこの自習室に合っていて、結果としてよかったなと思います。

「自習室の完成」という目標に向けて、竹内さんや生徒会のメンバーとも意見を交換しながら作業を進めることができ、一人でできないことをみんなでやり遂げた達成感がありました。

プロジェクトを通して得たもの

生徒会長 福島ひよりさん

年末に納品されてからまだ間もないのですが、出来上がった自習室に対して感想はありますか?
福島:個人の学習スペースでは、目の前の仕切りが高いので人の目を気にせずに学習に集中することができるのでよく使っています。
ディスカッションスペースのこの机は個別のスペースよりも大きいので資料を広げたり、友達と一緒に勉強したりするときによく使っています。

竹内:完成するまでの数か月の間、ゼロの状態から少しずつ出来上がっていく過程を見ていたので、初めはとても不思議な気持ちでした。

完成が近づいてくると段々実感がわいて来て、「自分が思い描いていたものが形になるってこういう事なんだ。」ということを自分の身体で体験することができたので今もすごく嬉しい気持ちです。

実際に生徒が使っているのを見て、何か思うことなどありますか?
福島:私の妹もこの学校に通っているのですが、放課後に妹とその友達がよくこの自習室を使用していると聞いています。以前の自習室よりも快適で、部活のない日は毎日通っているようです。
イスも先ほど竹内さんが話していたように、コートをかけられるようにハンガー部分があるので、かけやすくて床に置かずに済むところが気に入っていると言っていて嬉しくなりました。

竹内:使ってくださる姿を見ることももちろん嬉しいですが、この自習室がどんどん出来上がっていくのを見てたくさんの在校生が「わぁ!」「すごい!」と自分にとって励みになったり達成感を味わったりできるような言葉をたくさん言っていたと聞いて、この企画に携わることができて本当によかったなと心から感じました。

学校側としては今回のプロジェクトを通して何か感じられたことなどありますか?
坂田教諭:やはり私たちにとっても初めての経験でしたので、正直上手くいくのかなという不安はありました。
生徒たちに対する不安ではなく、この学校の施設に関わる職務ではない私たちが生徒会の顧問として関わりながら、大きな予算を動かして何かをするということも初めての経験でした。また、高校3年生の使用に間に合わせるために短期間で話をまとめていくことも必要でしたので、期限内に上手くいくのだろうか…という不安でした。

蓋を開けてみれば工事に関してもスケジュール通りに進みましたし、生徒たちも満足してくれているのでとても嬉しく思っています。

この自習室は床がカーペットになっているのですが、自然と入口のところで生徒たちが上履きを脱いで、ここをキレイに使おうと意識してくれているところも嬉しいですね。

そしてプロジェクトに関わる教員として、やはり自主的に考える力を身に着けて欲しいと思いながら取り組んでいました。

入口付近にある黒板についても非常に大きいものを今回は採用していますが、当初、生徒会のメンバーは通常のサイズにすることを検討しました。予算のことを気にして、大きなものにしたいという自分たちの考えをセーブしてしまったのだと思います。
最終的には自分たちで考え抜いて、大きなものを購入することに決めました。
今はまだ書き込みの数は多くありませんが、天井から床まである黒板だからこそ何かイラストだったりアートだったり新しいものを生み出す可能性もあります。これからが楽しみです。

学校として今後、設備面や企業との取り組みなどの展望、こういったことができればということがあれば教えていただけますか?
坂田教諭:私立校ですので、公立校とは違うアプローチで生徒たちが実現したいことを形にできるのかなと思っております。
生徒会の執行部の中にも、コンビニエンスストアの自動販売機を置いてみたいという案や、仕出し弁当を頼んで1ヶ月に1回ぐらいのペースでお食事会をしたいなんてことも案としてはあります。

今回のプロジェクトは大変上手くいきましたので、こういった形でまた企業様と提携していきたいなと考えています。

『ミライの建築デザイナー発掘プロジェクト!』についてお話を伺いました。
生徒が主体となってプロジェクトに携わることで、生徒(ユーザー)自らの思いがカタチとなり、自習室が生徒にとっても学校にとっても愛着の湧く素晴らしい空間に生まれ変わりました。
生徒を尊重し見守る先生の眼差しと、取材時にも終始しっかりと自分自身の考えを述べる福島さん、竹内さんの姿がとても印象的でした。

本日はありがとうございました!

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