OAフロアとは?メリット・種類・選び方を知ってオフィス環境を快適に
オフィスレイアウト・デザイン・設計

OAフロアとは、配線収納の空間を床下に設けた二重構造の床を指します。OAフロア設置により、安全性が高まる、すっきりとした印象になる、レイアウトの自由度が上がるなど、快適なオフィス環境の構築に役立つでしょう。本記事では、OAフロアの概要や設置のメリットからOAフロアの種類、選び方、設置事例まで詳しく紹介します。
目次
OAフロアとは

まずは、OAフロアの意味やフリーアクセスフロアとの違いを確認しましょう。
OAフロアの意味
OAフロアとは、オフィス床下に空間を設け、そこにケーブルやコンセントなどの配線を収納できるようにした二重構造の床のことです。OAは「Office Automation」の略で、機器を活用してオフィスワークを効率化・自動化するという意味合いで使われます。
インターネットの普及によるOA化で、多くの配線が必要になりましたが、オフィスの床に配線が露出していると転倒や断線のリスクがあります。リスク回避の一案として、配線が床下に収納されたOAフロアのニーズが高まっています。
OAフロアとフリーアクセスフロアの違い
フリーアクセスフロアは、床下に配線や空調設備を収納可能な二重床の総称です。なかでも、オフィス(事務所)向けに用いられる製品はOAフロアと呼ばれます。ゆえに、フリーアクセスフロアの一種がOAフロアであり、基本的な性能や機能は同じです。
OAフロアを設置するメリット4選

OAフロアには、オフィス環境をより安全で快適なものにするさまざまなメリットがあります。OAフロアの設置で得られるおもなメリットを紹介します。
1. オフィスの安全性が向上する
床下に配線を収納すると、配線でつまずく危険性がなくなるため、オフィスの安全性が向上します。また、つまずきや転倒などの衝撃で配線が抜け、機器が異常をきたす、データが失われるなどのリスクも回避できます。
2. レイアウトを自由に設定できる
床の上に配線がある状態だと、配線が障害になり家具の配置が制限されてしまいます。しかし、OAフロアを設置すれば、配線を気にしない自由なレイアウトデザインが可能になります。また、レイアウトの変更もスムーズです。
OAフロアの設置により、動線や作業効率を意識したオフィス空間を実現できるでしょう。
3. オフィスがすっきりと整った印象になる
床の上に配線がごちゃごちゃと置かれたオフィスは、機能性に問題があるだけではなく、見た目も煩雑です。配線を床下に収納すれば、見た目にもすっきり整った印象になります。
さらに、配線を気にすることなく従業員が動き回れるため、交流の機会が増え、コミュニケーションの活性化も期待できます。
4. 清掃しやすい
床を清潔に保ちやすいことも、OAフロアのメリットです。配線が床の上にある状態だと掃除がしにくく、配線の周りにホコリやゴミが溜まりやすくなります。配線を気にせず清掃できるOAフロアであれば、清潔感のあるオフィスを維持しやすいでしょう。
OAフロアの種類と施工方法
OAフロアの種類はおもに2種類、「置敷タイプ」と「支柱タイプ」があります。各タイプの特徴と施工方法を解説します。
1. 置敷タイプの特徴と施工方法

フロアパネルと支柱が一体化している「置敷タイプ」には、床とパネルの間にできる空間に配線を収納する「置敷式簡易OAフロア」と、パネル内の溝に配線を通す「置敷式溝配線OAフロア」の2タイプがあります。
どちらも支柱の高さ調整はできませんが、設置が比較的容易かつ短期間で施工可能なので、コストもおさえられます。
ただし、置敷タイプは支柱タイプよりも耐荷重性能が低い場合が多いので、留意しておきましょう。特に、樹脂製のフロアパネルの上に重量のあるものを置かないよう注意が必要です。
<施工の流れ>
- 床面に凸凹がないか確認し、必要に応じてクッションシートを敷いて、平らに安定させる。
- OAフロアを敷き詰める。
- 上からタイルカーペットなどの仕上げ材を置敷する。
2. 支柱タイプの特徴と施工方法

支柱とフロアパネルが別になっている「支柱タイプ」は、支柱の高さ調節により床下空間の広さをカスタムできます。配線の収容量が多い、大規模オフィスで採用されるケースがよく見られます。
アルミやスチールなどの耐荷重が大きい金属製が多いため、重量のある家具・機器などに耐えやすいのも特徴です。
ただし、置敷タイプに比べて施工に時間がかかる、コストが高くなりやすいなどの注意点もあります。
<施工の流れ>
- 支柱の位置や高さを決めて固定する。
- 支柱上にフロアパネルを設置する。
- 上からタイルカーペットなどの仕上げ材を置敷する。
OAフロアの選び方

OAフロアは、設置する場所やオフィスの状況などを踏まえて選ぶ必要があります。設置してから後悔しないよう、選び方のポイントを押さえておきましょう。
配線の収容量
OAフロアを選ぶ際に確認したいのが、配線の収容量です。無線LANを使用している、コンピューターや機器の数が少ないといったケースでは、配線の収容量が少ない置敷タイプで対応可能です。反対に、配線が多いオフィスの場合は、収容量の大きい支柱タイプが適しています。
50人以下のオフィスであれば50ミリメートル以下、50人以上のオフィスであれば50ミリメートル以上が、OAフロアの高さの目安です。
施工期間・費用
OAフロアの施工にかかる期間と費用は、一般的に次のとおりです。ただし、施工期間はフロア面積によっても異なります。
OAフロアの種類 | 施工期間の目安 | 費用相場(1平方メートル当たり) |
置敷タイプ | 約1週間~ | 約3,000~5,000円 |
支柱タイプ | 約2週間~ | 約6,000~8,000円 |
スケジュールや予算とも照らし合わせながら、OAフロアの種類を選択しましょう。
耐荷重
OAフロアの耐荷重は、種類や素材によって異なります。耐荷重は一般的にN(ニュートン)で表示され、目安として、1,000ニュートンは1平方メートル当たり約100キログラムの荷重に相当します。
オフィスにおける耐荷重の目安は次のとおりです。
オフィスの用途 | 耐荷重の目安 |
書庫・家具・複合機などを設置している一般的なオフィス | 3,000ニュートン |
大規模なオフィス/大きな書庫・金庫など重量物を設置しているオフィス/サーバールーム | 5,000ニュートン |
またタイプ・素材ごとの耐荷重の目安は次のとおりです。
オフィスの用途 | 耐荷重の目安 |
置敷タイプ(樹脂製) | 2000〜3000ニュートン |
置敷タイプ(コンクリート製) | 3000〜5000ニュートン |
支柱タイプ(金属製) | 3000〜5000ニュートン |
材質
OAフロアのおもな材質として、樹脂(プラスチック)、コンクリート、金属などが挙げられます。それぞれの特徴は次のとおりです。
<樹脂(プラスチック)>
比較的低コストで、パネルの入れ替えが容易なため、スムーズにレイアウト変更ができます。
ただし、他の材質に比べると耐荷重性能が低く、歩行感も頼りない印象です。また足音が響きやすいので、吸音対策を講じる必要があります。
<コンクリート>
歩行感が安定しており、足音も響きにくい点がおもなメリットです。
重く、比較的高価な材質であり、不要となった場合に産業廃棄物扱いになるため、処分時のコストも高くなるケースがあります。
<金属製>
OAフロアには、一般的にアルミやスチールが用いられます。これらは軽量で、歩行感が安定しているのが特徴。不要になった際は、リサイクルも可能です。
OAフロアを設置する際の注意点

OAフロア設置の際は、施工条件に制約がないか、公的な基準をクリアした製品かどうかを確認しておきましょう。
施工条件を確認する
オフィスが入るビルや建物の施工条件を事前に確認しておきましょう。条件により、OAフロアを設置できないことがあります。
支柱タイプは設置する際に、床に支柱を接着剤で固定します。しかし、建物によっては接着剤の使用に制約を設けている場合や、OAフロアのタイプ・材質が決められている場合があります。
またOAフロアを設置することにより、床が引き上げられるため、床から天井までの高さが短くなる点も留意しておきましょう。特に古い建物は天井が低いものが多く、OAフロアを設置すると圧迫感を感じやすくなるので注意が必要です。
信頼性の高いOAフロア製品か確認する
OAフロア製品は10年以上使われるケースもあるため、設置の際は、公的な基準をクリアしている信頼性の高い製品を選びましょう。品質や性能を評価・認定された製品であれば、信頼性が高いといえます。
<OAフロアの評価・認定制度>
- JAFA性能評価認証制度:フリーアクセスフロア工業会(JAFA)が運営
建築材料・設備機材等品質性能評価事業:一般社団法人 公共建築協会が運営
OAフロアに用いられる仕上げ材

OAフロアはパネル上に床材を敷いて仕上げます。OAフロアのおもな仕上げ材である「タイルカーペット」と「ビニル床タイル」の特徴を紹介します。
タイルカーペット
タイルカーペットは色や柄のバリエーションが豊富で、デザイン性に優れています。貼り・剥がしが簡単なので、レイアウト変更が多いオフィスにも対応可能です。制電機能・遮音機能・防炎機能などさまざまな機能性を備えた製品も多くあります。
ビニル床タイル
ビニル床タイルは汚れが付いてもすぐに拭き取れ、掃除がしやすいので、来客が想定されるエリアや食堂など、特に清潔にしておきたい場所の仕上げ材に向いています。木目調やストーン柄など種類も豊富。おしゃれなオフィス空間を演出しやすいでしょう。
OAフロアの設置事例
最後に、OAフロアを実際に設置している企業の事例を紹介します。OAフロア設置後のイメージをつかむヒントにしてみてください。
株式会社あなぶきハウジングサービス

株式会社あなぶきハウジングサービスでは、地震対策の一環としてOAフロアを設置しています。床下に配線を通すことで、地震発生時の避難で従業員がつまずくリスクをなくし、安全性を高めています。仕上げ材の色調・デザインも、柱や壁に合わせています。
アイリスグループ淀屋橋オフィス

アイリスグループ淀屋橋オフィスでは、ワークスペースの床にOAフロアを採用しています。デジタルツールを多数使用しているため多くの配線が必要ですが、床下にすべて収納することですっきり整然としたオフィス空間を実現。レイアウトの自由度も高まりました。
OAフロアを設置して安全性と快適性の高いオフィス環境を実現

配線を収納可能な二重構造床であるOAフロアを設置すれば、オフィス内がすっきりとして見える他、安全性や利便性も高まります。種類や材質によって特徴やコストが異なるため、設置する場所や収容したい配線量などに合わせて、自社にあったOAフロアを採用しましょう。
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