【インタビュー】ourly株式会社「強い組織にするためのカルチャーづくりと若手の成長を促す働き方とは」

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【インタビュー】ourly株式会社「強い組織にするためのカルチャーづくりと若手の成長を促す働き方とは」

2022年4月に設立された、東京都品川区に本社を置くweb社内報CMSをサービスとして展開するourly株式会社。同社は企業内部のコミュニケーションの活性化を通じて、エンゲージメントの向上やイノベーション創出を支援しています。

今回はインナーコミュニケーションに関するサービスや「働く」を考えて発信しているourly株式会社が、実際にどのような働き方をしているかについて話をお聞きしました。

 

~インタビュイー紹介~

ourly株式会社

取締役COO 髙橋新平

組織の課題解決のために始まった社内報

本日はよろしくお願いいたします。

早速ですが御社の事業内容と、会社設立に至った経緯を教えていただけますか。

事業としては、「ourly」というサービスを通じて社内広報の支援をしています。

最近では、「企業が競争優位を確立しつづけられる理想の企業文化をともに創るサービス」をブランドコンセプトとして掲げて事業活動を行っています。会社にとって企業文化は欠かせないものだと思っているので、自社の理想とする企業文化をクライアントと一緒に定義して、根付かせるためにourlyを使いながら伴走支援する、といった事業を展開しています。

サービス「ourly」は元々、社内を活性化させるために作った自社の社内報が始まりだとお聞きしたのですが、お間違いないですか。

はい。設立の経緯をお話すると、元々親会社である株式会社ビットエーが所謂SES(システムエンジニアサービス)といってエンジニアを派遣するビジネスを13年続けています。採用したエンジニアにクライアントのオフィスに駐在してもらい、サービスを開発するという事業です。

SESという事業は、会社への帰属意識を作るのがとても難しいんです。キャリア採用の場合、早いと入社翌日からクライアントのオフィスに行ってもらったりします。そもそもSESのようなエンジニアは、転職を重ねて年収とキャリアを上げていくというのが慣習的で、離職率が高いんです。

でもそうすると採用コストが高くあり続けるであるとか、第一に会社として、組織として強くならない、という考えから、ビットエーでは創業初期から紙の媒体で社内報を発行していました。代表直下でかなり力を入れていて、弊社代表の坂本も当時は企画に関わっていました。

SES事業を行う会社が社員のエンゲージメントを上げるためには、社内報での情報発信や、会社などでリアルに対面する機会がとても大切になってきます。そこで社内報の他に、月に1回会社で懇親会を開いて飲食をしながら交流を深めてもらったり、部活やサークル活動への補助金を支給して、活動報告を社内報に載せるなどして、帰属意識の醸成に注力していました。

ある時、webサービスの開発を支援している会社なのだからwebでやろうとなり、自社内製でWordPressGoogle Analyticsを使って運用するようになりました。

社内報のアクセスデータなどを可視化できるようになり、社内報のアクセス率や会社の飲み会の参加率、部活などの参加率を横並びで見たときに、どこにもタッチしていない社員の離職率が高いということが統計データ上わかってきたので、そのデータを活用しながら組織改善に役立てるようになりました。

組織も順調に大きくなり、収益も安定してきたところでコロナ禍に突入。あらゆる企業がリモートワークを始めたのですが、先ほどご説明した自分たちが向き合ってきたこの組織課題は、コロナ禍により全業種の共通課題として当てはまるのではないか、という考えに至りました。

そこで2020年の7月に社内報CMSのサービス展開を検討開始し、半年後の2021年の2月にリリースという流れで、新規事業として「ourly」が生まれたという背景になります。

当時運用していた紙媒体の社内報

事業を分社化する形で立ち上がったと思うのですが、親会社から社員を配属するにあたって、社員の線引きに何か基準などありましたか。

線引きは一応ありました。

弊社代表の坂本が当時ビットエーのトップディレクターで、新規事業に取り組もうと意気込んでいたのと、別の子会社(株式会社レッジ)の立ち上げメンバーも同じような気持ちだったので、この二人がビジネス側の主軸となってourlyを立ち上げました。

プロダクト開発はSES事業をやっているということもあり、エンジニアを多数抱えているのですが、日頃の業務ではクライアントワークに従事しています。ただ、エンジニアの中には自社プロダクトの開発に関われることに熱意を持つメンバーもいるので、立ち上げ初期はクライアントの仕事が終わってから本社に戻ってきてもらい、立ち上げに参画してもらいました。

ourlyのユニークな機能の1つとしてプロフィール機能があると思うのですが、それは元々御社でも導入していたのでしょうか?

ourlyのプロフィール機能は社内報のリリースから1年半後に加えましたが、プロフィール自体は元々社内にありました。理由としてはプロジェクトが違うと働くオフィスが異なるので、みんなお互いの顔と名前が全く分からないんですよ。

せめて、会社のイベントや飲み会に来た時に顔と名前がせめて一致しているように、プロフィールツールを自社内製で作っていました。

コミュニケーションを活性化させる仕掛けづくり

そんな事業展開する御社だからこそ、社内組織の活性化に対するソフト面での取り組みや、ハード面でのオフィスづくりでユニークなものがあれば是非聞かせていただきたいです。

コミュニケーションの会社でもあるので、社内のコミュニケーション施策にはかなりこだわっています。具体的には月に一度必ず全社の方針説明と、1か月の活動の振り返りを全社員が1か所に集まって実施しています。

そのあと必ず懇親会があって、企画担当者が意図をもって座席まで決めるということをしています。場だけ設けてしまうと、普段コミュニケーションをしている人たちで固まってしまいがちですので、意図をもって席を指定して、会の途中で席替えも行っています。

オフィス環境では、オープンスペースで打ち合わせするカルチャーがあります。

スタンディングテーブルと打ち合わせできるテーブルが社内に3-4か所あるのですが、オープンスペースで話すことで、作業しながらなんとなく聞こえてきた話について、自分が面白いアイデアをもっていれば議論に参加するとか、参考になるフィードバックができるみたいな事は結構あると思っていて、情報をオープンにするっていう意味でも、できる限りミーティングはオープンスペースで行うということを会社のカルチャーとして大事にしています。

社員が増えるに従って、各セクションの壁はどうしても厚くなってしまうと思っています。その中でも全体感を保つために、情報をオープンにする仕組み、仕掛けとしてオープンスペースでの打ち合わせ推奨をしています。

若手の成長を促す「オフィス出社」

御社は基本的に全員が出社する方針であると伺っていますが、どのような意図があるのでしょうか。 

以前はリモートでも出社でもどちらでもよかったのですが、20237月から原則全員出社に切り替えました。

リモートワークは便利な反面、オフィス出社組とリモートしている人とで意思疎通に差が出てくるようになり、ourlyにとって今後の働くスタイルとして何がいいのかを考えるようになったことがきっかけです。

コロナ以降の数年でリモートワークに関する組織の論文や文献がたくさん出てきたこともあって、代表の坂本と様々な文献を海外のものを含めて読みあさりました。

ourlyがこれから拡大していくにあたって、どの働き方が最適なのかを自分たちの中で結論を持っておくべきだという考えになり調べたところ、専門性が高くてスキルが確立されているシニアなチームはリモートワークの方が生産性高い傾向があり、逆に若手層が多い会社の場合はリモートワークだと生産性が落ちるという結論の論文が多くありました。

もうひとつは若手の時にリモートワーク環境下にいると、成長曲線が上がっていかないという論文がいくつかありました。

理由は、例えばミーティングや電話で話す言葉遣いなどを先輩が横で聞いていて、「今のはこう直した方がいいよ」といったフィードバックってもらうじゃないですか。結局、オフィスに出社する価値は、フィードバックの回数なんです。リモートにすることによって、フィードバックの機会が減少することで、成長機会も失われてしまうのです。

我々ourlyは平均年齢が約28歳で、他の企業と比較してもかなり若手が多い会社になります。フィードバックをたくさんもらえるオフィス環境は、若手の成長の手助けに繋がると判断し、坂本と話し合って全員出社を決めました。

そして、リモートワークがしたいという意見をもっている社員の為にも、これらの話をしっかりとしました。

私自身、会社が成長していくためには、濃くて強いカルチャーを作ることが必要で、それは出社しないと作れないなというのが実感としてもありました。

カルチャーは誰かが作ってくれるものでもなく、経営陣が作るものでもなく、全員の貢献のもとでしか作り上げられないので、濃いカルチャーを作るために、今のフェーズでは全員出社にしています。

将来ourlyの事業が安定的に伸びるようになって、ourlyのメンバーもシニアなメンバーが増えてきたら、リモートを選択できる会社になる可能性もありますが、今のフェーズではそのような意思決定をしました。

とても共感できる話ですね。

全員出社について皆さまは納得していただいていると思のですが、出社したくなるような工夫などありますか?

新しいメンバーが入ってきたときに、1週間分ランチ代を補助しています。その方は既に在籍している社員3人を誘うというルールで、一緒に行った社員も含め、ランチ代が補助される仕組みになっています。

出社することで得られるメリットでもあるので、単純に「強制出社」ということではなく、出社にもメリットがあるという実感を得てもらえるようにしています。

これはコミュニケーションの観点でも設計していて、新しく入る方は「これは誰に聞けばいいんだろう」とか「この資料はどこにあるんだろう」となった時に、「でも忙しそうだしな…」みたいな感じで業務が止まるじゃないですか。この時間ってかなり無駄だと思っていまして。

1週間、つまり5営業日3人とランチ行ったら、もう15人とランチを通して接点が作れるので、そうすると気軽に聞ける人が増えますし、オンボーディングに役立っていると感じています。

ランチ代が補助される「ララランチ」の様子

ourly株式会社が考える、理想のオフィス環境

今のオフィスで課題に思ってらっしゃることはありますか。

いくつかあります。

まず、社員一人ひとりの生産性を高くすることはとても大切だと感じていて、集中力を維持するために、座って仕事する時間と立って仕事する時間を自由に選択できる昇降デスクなどは将来取り入れたいと思っています。

もう一つは、現状フリーアドレスを採用しているのですが、いつの間にか同じ席に座って固定されてしまっている所があるので、ここは改善したいですね。

また、インスピレーションが湧くような会議室やオフィスを作りたいです。部署を超えたコミュニケーションとか、コラボレーションみたいなところをハード面で実現したいので、将来的にオフィスへの投資は考えています。

気分の切り替えやオンオフが図れる、そういった場所を作っていきたいなということですね。

そうですね。例えば人口芝とか敷いたり、裸足になれる和室であったり、キャンプエリアなどを作ってそこで会議したりしたいですね。オフィスは、クリエイティブかつ生産性が高い場所であるべきなので、両方を高次元に叶えられるオフィスだったら社員も来たくなると思いますし、そういうオフィスにできたらなと思っています。

髙橋様が考える理想のオフィス空間とはどのようなものでしょうか。

いいオフィス空間を作るためには、ハードとソフトのセットが大切だと思っています。ハード面って私は仕掛けだと考えていて、とても大事な要素だと思います。例えば、机の配置を変えたらコミュニケーションが増えた、とかですね。

そういったハード面でのオフィスの構造をどうやって整備して、社員同士のコミュニケーションをどうやって増やすかというところは、めちゃくちゃ面白い問いだなって思うのと同時に、やはりハードだけではクリアできないものもあると思っています。

ソフトというものは、どちらかというとその雰囲気とか、カルチャー部分だと思っています。ourly社内でよく使われる言葉に、“気前よくあれ”というものがあるのですが、気前のよい人のところに人も集まってくるよねっていう考え方から生まれています。

気前の良さっていうのは、自分のちょっとした労力とか時間を割いて人に貢献できることと定義していて、例えば朝来た時に「おはようございます」じゃなくて「○○さん、おはようございます」ってちゃんと名前を呼んで挨拶するのも気前のよさだと思うんですよ。

そういうソフトの部分もセットで、ハードとソフト両方整えることで、良いオフィス空間、仕事空間を作れるのではないかなと思っています。

おっしゃる通りですね。ハードとソフトのセットを備えることで、働きやすい環境が生まれるものだと私たちも考えています。

人々の日常をよりポジティブに

では最後に、働くについての今後の展望や、御社にとって働くとは何かというのをお伺いできればと思います。

我々の働くことに対する軸は、働くことに対してポジティブな認識を持ってくれる人を少しでも増やすことです。

私たちのバリューの中に“why in ourly?”というのがあって、“働くにこだわる”と意訳しているのですが、ourlyのWeb社内報やプロフィールを通じて、「以前より会社のことがより理解できて好きになった」、「会社の理念に共感した」、「社長が遠い存在に思えていたけど近い存在に思えた」というように、ourlyが広がっていくことによって、毎朝、出社する人の足が少しでもポジティブに会社に向かって行ったらいいなと思っています。

ourlyは、皆さんをポジティブにしていくツールだと思っているので、私たち自身、社員1人1人がなぜourlyで働いているのか、そもそも何のために働くのかを社員一人ひとりが言語化して、それを全員で共有して一緒に働くことをすごく大事にしています。

私たちにとって働くということは、そんな意味合いを持っています。

自分たちの会社で働く意義をしっかりと自分事として言語化する、とても大事なことですね。

社員一人ひとりがourlyで働くという意義をしっかりと理解して、世の中で働く様々な人をポジティブにしていこうというourlyの想いが伺えた、そんな素敵な時間でした。

本日はありがとうございました。 

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