【インタビュー】豊田市役所_「集約」と「共用」で変わる庁舎のかたち~働き方改革と防災を両立する豊田市の挑戦~
インタビュー

「集約」と「共用」を軸に、働き方改革を進める豊田市庁舎。
フリーアドレス化や窓口集約に加え災害における安全性を高める庁舎づくりに関してインタビューを行いました。
インタビュイー紹介:
目次
都市と自然が共存する「日本の縮図」豊田市
本日はよろしくお願いいたします。
はじめに、豊田市の特徴について教えていただけますか。
市の特徴として愛知県で一番面積が大きい市になりまして、人口も41万人と多く、いわゆる中核市という位置づけです。
本市には世界的に有名な自動車企業があり、同社を中心にものづくりの市というイメージで浸透していますが、市域の約7割が森林で「日本の縮図」のような地域特性を持っており、都市部と山村部がうまく共生しています。
また、豊田市では子育てのしやすさに注力しており、保育料を独自で安価に設定したり、第二子以降の保育料を無償化するなど、子育て世代に充実したサービスを提供しています。
「2025年版共働き子育てしやすい街ランキング」全国7位に選出されたことから、これらの認知を高めるために、積極的な広報活動を行っています。

未来の働き方を見据えたパイロットオフィスの挑戦
ありがとうございます。
続いて本題になりますが、今回庁舎の什器の入れ替え・レイアウト変更に至った経緯を教えていただけますか。
既に一部の所属で実証としてフリーアドレス化を導入していますが、今回レイアウト変更を行った南庁舎の3階は、そのもう一つ先の未来を見据えた働き方の検証と、職員自身の働き方への意識改革と言いますか、発想をガラっと転換するいいきっかけになるような、他のフロアの先駆けのパイロットオフィスにしたいと思ったからです。
これをきっかけに多くの方に現地で見てもらって、「これいいね」と広がって庁舎全体の機運を高めていこうという試みになります。
什器もそうですが、それ以外に働き方で何か変えたことはありますか。

このフロアは全部で6つの課が在籍しているのですが、今まで課単位でしか取り組んでいなかったフリーアドレスをフロア全体で導入し、執務スペースの最適化と、事務や物品等の共用化・集約化を実施しています。
今まで課ごとにあった窓口を1か所に集約化させ、呼び出し機能を利用するなど、働き方としては大きく変わったのではないかと思っています。
一般的に市の職員の方々は書類が非常に多く、フリーアドレス化しにくい、といったお話もお聞きします。
運用において何か工夫されている点などございますか。
まさにそうでして、正直フリーアドレスが合う課とそうでない課があり、どちらかというと馴染まない部分が多いです。
なので、当初はフリーアドレスを実証として導入していたのですが、そうではなく、職員の働き方を変えるためにデスクを入れ替えるんだという、発想の転換をさせていただきました。
今までは昭和からずっとある引出し付の机で座る場所が固定されており、結局書類が山積みになり、情報管理においてリスクがあったり、仕事も滞ってしまったりということがありました。
それをより柔軟に働き方を変えられるフリーアドレス用のデスクに入れ替えることで、固定でそこに座っていてもいいけれど毎日ロッカーに荷物を片付けて帰りましょう、であるとか、休みで空いてる時はそこの席を使って打ち合わせや作業をしたりとか、そういう職員の働き方に対する意識改革を促すためにも、今年度中に全庁的にデスクについては先行して入れ替えていきたいと思っています。
袖机もなくなるので、そこの書類をどうにかしないといけなくなりますし、行動変容のために環境から変えていくということですね。
そうですね。紙の方が視認性がいいですし、窓口でお見せする資料など紙として残すべきものももちろんあります。どうしても手元に必要なものは残せばいいと思っていますし、全部が全部ペーパレスに、というのも難しいと思うので、デスクの入れ替えに併せて一度書類の整理整頓をしていただきたいと考えています。デスクを変えるということは、そういう価値があるのかな、と。
働き方もそうですが、様々な環境が目まぐるしく変わる中で市民のニーズも多様化してきています。
その反面、中長期で見れば人は減っていきますし予算も限りがあるという中で、市民サービスをより向上させるためには、まず職員自身が働き方を変えて、業務の効率化をより目指していかなければいけないと思います。

改装前の執務室

改装後の執務室
窓口は“分散”から“集約”へ―庁舎の未来像
先ほど窓口を集約化させ、市民サービスを向上させるという話がありましたが、3階に限らず各フロアにも導入していくのでしょうか。
はい、そう思っています。
今は課ごとに窓口があり、その後ろに各課の職員がずらっと待機して事務仕事をしているイメージだと思いますが、将来を考えた時に、果たしてそれが一番正しいのかというと、そうではないと私は思っています。
将来的にこれが現実的かどうかわりませんが、ワンフロアに全ての窓口を集約させて、待機してる職員は別のフロアで仕事をしており、何かあった時に遠隔で担当者が対応する、というような形に将来的にはなっていくのかなと思っています。
そういう意味でも、窓口の集約化はすごくキーになってきます。
ただ、繁忙期などの際はそれぞれ手続きによっては難しくなってくるので、必要最大数は確保しつつ、繁忙期は窓口を増やして、そうでないときは少し縮小する、みたいな運用をしていきたいです。
豊田市庁舎は3棟ありますが、最終的に窓口業務を一つの棟に集約できれば、そこだけに警備を配置して、それ以外のところは基本的に業者等の関係者のみの来館になるので、予約制にして入館証を発行するであるとか、そういったところにも舵を切ることができそうです。
その前提として集約化というのはとても大きいと思っています。

「集約と共用」を実現するための試行錯誤
その他に行った工夫やこだわった点など、何かございますか。
「集約と共用」をテーマとして掲げています。
この3階には法規部門や人事部門といった、市役所の中でも割と秘匿性の高い情報を扱っている部署が在籍しており、テーマ実現のためのハードルは決して低くありません。ただ実現によるメリットであるとか、働きやすさや業務負担の軽減というところを継続して伝えて、とにかくやってみよう、ということで現在も推進しています。
レイアウトについてもまずはグループアドレスのような形で、ある程度所属ごとにまとまるよう座席を配置しています。運用の中で席配置を調整しつつ、他の所属と連携をとるようなケースも結構あるので、運用と検証を繰り返しています。
どうしても慣れない職員が多いので少し抵抗はありますが、とにかくやってみて、「やってみたらできた」という成功体験につながればいいかなと思っています。

庁舎の使命は「守ること」—防災対策の考え方
次に、今回のレイアウト変更に合わせて当社の耐震制震書庫を導入されましたが、庁舎としての防災対策 ― 職員向けや市民向けなど ― 何かありましたらお伺いしたいです。
市役所の使命として、市民の生命と財産を守るということを第一に、そのための自然災害や人為災害のリスク軽減に取り組んでいます。よって庁舎の耐震対策についても、とても重要な事項だと考えています。
現在、庁舎内の至る所に壁に沿うように書庫を固定しているのですが、それだと震度7の地震が来た時に耐えられないという課題がありました。
そこで、今回働き方改革起点でレイアウトを変える中で、書庫の揺れによる転倒リスクも考慮し、「何があっても安全に」と考え書庫のレイアウトも議論させていただき、転倒のリスクの低い、そして書庫を集約させた御社の耐震制震書庫を採用させていただきました。
仰る通り、地震の際に職場で一番従業員の怪我のリスクが高いのは、高さと重量がある書庫です。
職場において「防災といえば備蓄」のイメージが強いですが、優先すべきはそこで働く職員の安全なので、書庫の転倒リスクを減らすということはとても大事ですよね。

いつ有事が起こるかわからないので、どなたが来られても安心できるという部分は、庁舎として持っておくべき機能だと考えます。
仮に書庫が転倒し市民にけがを負わせてしまった、職員が怪我して、結果として市民にサービスできなかった、ということが起こると市役所の存在意義にも関わることになるので。
ただ、役所はどうしても書類や書庫が多くまだまだ不十分な部分があるので、これをひとつのきっかけとして見直していきたいと考えています。
民間オフィスと違って、庁舎がいわゆる機能不全を起こしてしまうと、職員へのリスクだけでなく市民にもご迷惑がかかるので、それを防ぐ対策というのはとても大事ですね。
レイアウトを考える上でも、書庫をどうするかという問題が一番大きな課題でした。
今までの感覚論でいくと、どうしても書類を取り出す作業が多いので、書庫はデスクの近くにあった方がいい。ただ、書庫をデスクの近くにレイアウトすると結局壁付けになってしまい、壁にずらっと並べると転倒リスクも増えますし、そもそも見栄えも悪い、といった問題があった中、御社からご提案いただいたのがこの製品でした。
倒れないように書庫を集約したレイアウトにし、更にその上に耐震制震バーがあることで、スペース的にもコンパクトに収まり、見た目もすっきりして綺麗になり、且つ耐震も兼ね備えているというのが、まさに理想としていたものでしたので、非常にありがたかったです。


壁を撤去し、開かれたオフィスへ
フロア自体も見栄えが変わりましたか。
だいぶ変わりましたね。
今までだと執務室の真ん中に書庫の壁が立っていたんです。その壁の奥のエリアに法規部門の部署があったのですが、法規部門は書籍や書類が多いので、長い間書庫の壁がそびえ立っていました。ずっと「あの壁、いつかなくしたいね」と話しており、今回のタイミングでその壁をようやく崩しましたが、壁がなくなると視界が一気に開けて広く見渡せるようになったのでとてもよかったです。
フロア全体で職員の数も多いのですが、書庫を集約しデスクも整然と並んでいる姿を見ると、結構整備されたオフィスになったなと今見ても感じますし、やってよかったと思っています。
各部門の方々のご理解が大前提だと思うのですが、 リニューアル後の職員の反応、もしくは市民の反応があればお伺いしたいです。
フロア全体が整理整頓されて綺麗になったね、というお声はもちろんいただいていますし、結構好印象かなと思っています。
事務の共有化・集約化などの働き方改革の部分については道半ばなので、実際に「働きやすくなった」であるとか「無駄な作業なくなったから業務に集中できる」みたいな部分はまだ検証しきれていないのですが、今まで各課がバラバラ点在していたフロアを綺麗にして集約したことで、スペースが生まれました。
今回、その余ったスペースを新たに会議室やユーティリティスペースみたいな形にしたので、会議室不足が解消したり、会議室を探したり予約したりする手間がなくなり、そういった意味でもやってよかったですね。
それから、個室ブースも入れさせてもらったのですが、好評でして、周りを気にせずにWEB会議ができたり、少人数でわざわざ大きな会議室を使うこともなくなったことで会議室不足の解消になったり、そういったところでもよかったという声をいただいています。
オンラインミーティングの普及により生まれた、民間企業でよく言われる会議室不足問題は、役所でも同じく存在するのですね。
Web会議が普及し、全員が同じ場所に集まらなくてよくなりましたが、執務室だと会話が聞かれてしまう、集中できないなどの問題があるので結局会議室を使まっています。それにより会議室が足りなくなるという声は、全庁的に聞いています。
市民向けとしても、センシティブな内容の対応をしなければいけない案件も増えてきているので、そのような場所に個室ブースのようなものを試験的に導入することを検証してみたいと思っています。

働きやすい環境が、市民サービスを進化させる
最後に、働く価値の向上に向けて現在取り組んでいることや、今後の展望をお聞かせいただけますか。
市民サービスの向上が我々の一番の役目ではあるので、そこに向かっていくのは当然なのですが、大前提としてサービスを提供するためにも、まずは職員が働きやすく、生き生きと働ける環境づくりを我々が取り組んでいくべきだと思っています。
併せて、環境が目まぐるしく変わり市民ニーズも多様化していく中で、それらに対応するためには、いかに事務を効率化させられるかにかかっていると思いますので、基本的にはDX中心に推進しています。
そもそも窓口に来なくてもいいように手続きのオンライン化を進めたり、役所に来庁する際も事前にWEBで予約できたりするなどの取り組みを進めています。
あとは働く環境面で言いますと、今3階で実施しているフロア改装を他の部署にも広めていきつつ、窓口集約化も含めた全体的な庁舎の最適化みたいなところも検討して行きたいです。
役所は割と変化に弱い組織だと感じていますが、丁寧に説明しながら、一つずつ、着実に推進していきたいですね。
働き方改革と防災を両立する豊田市庁舎の挑戦についてお伺いすることができました。
本日は貴重なお話をありがとうございました。