【インタビュー】ホームサーブ株式会社「従業員は会社のエンジン:コミュニケーションの多様化を意識したオフィスづくり」
インタビュー

2019年設立の、住宅設備の修理をサブスクリプション型で提供しているホームサーブ株式会社。事業の成長に伴い、会社の成長エンジンである従業員のコミュニケーションの多様化を目指したオフィスづくりを目指しました。
~インタビュイー紹介~
ホームサーブ株式会社
代表取締役社長 得永 泰裕
目次
ウェルビーイング(Well-Being)を実現するパートナーとして
本日はよろしくお願いいたします。
では先ず、御社はどのようなサービスを行っているのでしょうか。
当社は2019年に設立し、月々決められたお支払いで住宅設備の修理を提供するというサブスクリプション型の修理サービスをご提供しています。住宅設備は10年を超えると不具合が生じ始める、といわれていますが、その不具合が発生したときに、「誰に頼んで良いかわからない」、「適正価格がわからない」、「予期せぬコスト負担を避けたい」というお客様のニーズに応えるべく『暮らしの「困った」に、あたらしい答えを。』というコーポレートミッションのもと、日本でもこういった新しい仕組みをつくり、お客様が快適に生活をして頂くためのサービスを当社は展開しております。

日本では比較的新しいサービスとなりますが、欧米諸国では、こういった「備える型」の修理サービスがかなり普及しています。当社は、三菱商事(株)とHomeServe Internationalという英国法人それぞれの出資比率50%の合弁会社でして、各地域に根差している電力会社様やガス会社様、自治体様など(以下、総称して「パートナー企業」)と提携の上、共同でサービスを提供するビジネスモデルを展開しております。
これまでは、パートナー企業の「安心感」のブランドを活用し、そのサービスの一部とすることを中心にお客様に我々のサービスをご案内してきていますが、今後は当社個社としての認知度を高めていきたいと考えていますので、ぜひ、今日はこの「ホームサーブくん」を全面に写していただけますか(笑)

会社として大切にされていることがあると伺っていたのですが、それはどんなことでしょうか。
会社のパーパス(存在意義)として、「ウェルビーイング(Well-Being)を実現するパートナーになる」ということを掲げております。
単に経済的な利益を求めるだけでなく、社会的な課題を解決しなくてはならない存在になるということを差別化して、地域のコミュニティとお客様と当社の収益化を三位一体で実現するために、全社でCSV(Creating Shared Value – 共有価値の創造 – )経営の実現を目指しています。
近年、情報が氾濫して、修理サービスを誰に何を頼んで良いのか、幾らが適正なのかわからなくなってきていますよね。残念ながら、情報が溢れかえっていることに乗じて高額な請求や必要のない作業を受ける、という事案も発生しています。当社がお届けしているのは、お客様に代わって目利きをして、地域に根差し信頼できる修理サービス提供会社様をご紹介させて頂くもので、お客様は、月々のお支払い以上のご負担は原則としてありません。安心してサービスを受けたいというニーズは日々高まっており、当社は電気や水回り等の住宅設備の修理サービスを広めていくことで、お客様には、修理サービスを検討するときに感じる様々なご不安をなくして、より安心した暮らしをお届けしていきます。
また、お客様のニーズで見れば、修理サービスのみにこだわる必要はなく、暮らしの手助けの需要は高齢化の進行と共に高まっていると思っています。日々のちょっとした家事代行、例えばハウスクリーニングや、草刈り、地域によっては雪かきなんてことや害虫駆除のようなこともあるかも知れません。どれをどこに依頼すればいいのかがとても見えにくくなっている中で、当社は、暮らしに寄り添った新しいホームセキュリティの形として、暮らし全般で何か困ったときにホームサーブに電話すれば解決出来る、ちゃんとした質で安心いただけるサービスを、適正な価格で、信頼できる業者の方がお届けする。こういった分野にも広げて、生活全般をサポートする存在になっていきたいと考えております。当社ではこれを「Life as a Service」と称して暮らしの隣にいる存在になることを目指しています。

会社の成長エンジンは従業員
ありがとうございます。次にオフィス移転の経緯を教えていただけますか。
現在当社が提供している住宅設備の定額制修理サービスは新しいサービスカテゴリーで、いわゆる「保険」とも、単なる修理サービスとも違う「備える型」の修理サービスです。これを世間で広めていく上では、お客様と向き合い、お客様目線に立って、いかに利便性を感じて当社のサービスをご利用頂けるか、既存の枠にとらわれずにクリエイティブなアイデアを出せるのかが重要だと感じており、そこを意識しながらサービスの拡大をはかっています。
当社においてその成長のエンジンは、従業員の方々です。元々はワンルーム4人の事務所からスタートし、それが設立半年で5人6人7人…となり、神田の味のあるオフィスに移転をして13名に。ここから2021年に再度日本橋にオフィス移転しまして、コールセンターを拡大し約100席と大きくなりました。それでも手狭になったので新潟県新潟市に新しいコールセンターを2022年4月に開設しました。
会社や事業規模が大きくなるにつれて、従業員の働きやすさやコミュニケーション良く、皆で議論を尽くす空間の設計が1つの鍵になってくると思い始めました。そこで新潟のコールセンターは、一般的なコールセンターとは違ったレイアウトを採用して、オペレーター同士がサポートしやすい空間を創り、どうすればコミュニケーションが生まれるのかを意識しながら少し幅広に設計させていただきました。

新潟市のコールセンターオフィス
コミュニケーションの多様化を目指したオフィスづくり
東京の都心で100名になるまでコールセンターを構えていたとは驚きです。
そしてその次のオフィス移転が今回となるわけですね。以前のオフィスとの違いはどんな部分でしょうか。
以前の本社オフィスは、どちらかというと機能性を重視したオフィスでした。
しかし、今後はサービスが拡大して、従業員同士の連携が更に重要になってきますし、それに伴いお客様とのコミュニケーションも多様化していくことが見込まれます。当社の場合、組織が機能割りになっているので、放っておくと日々の業務という意味では自分の周りの機能だけの話になってしまいがちです。
そこで、基点をお客様に置き、お客様に目線を寄せ、どうすればサービスをお客様にお求め頂けるのか、お客様へのご案内やサービス品質をどのように高めていけるのか、自分のタスクのみに集中するのではなくて、会社全体を自分事として部署を横断する目線でしてやっていかなければいけません。
今回、当社のプロジェクトマネージャーがコンタクトをさせて頂いて、アイリスチトセ目黒オフィスにお邪魔をさせて頂いた際にenKAKのレイアウトや社内のオープンな雰囲気や社員の皆さまがお話をされている姿を見て、とてもコミュニケーションが取りやすい空間であると感じてenKAKというシリーズ家具を採用させてもらいました。
もうこちらに引越してきて半年になるのですが、正直なところ、以前の本社の場所が東京駅付近でとても便利なところにあったので、本社機能の引越に対し必ずしもポジティブな声だけではなかったのですが、今では、皆モチベーションが上がっているように思います。当初の反応とは雲泥の差ですね。
初最は増床の計画だったと伺ったのですが、どのタイミングで移転になったのでしょうか。
我々が市場を創るような新しいサービスではありますので、ご加入頂くお客様の伸びによって運営体制も変わってきます。先ずはマーケティングで想定した通りにお客様が加入いただけるかが重要なのですが、あるタイミングから事業の成長にすごく手ごたえを感じ始めました。
そこに確証を持ち始めたのが増床の話をしていた24年5月くらいだったのですが、お客様のサービスの受容性があるとわかったのであれば、対処療法ではなく、先手を打ってオフィス自体の拡大をしようということで、色んな方に来ていただけて、かつ従業員の方がパフォーマンスを発揮しやすいよう、もう一度再設計すべきだと判断して決めました。

「オープン&フラット」を実現するための工夫
以前のオフィスで感じられていた課題はありますか。
以前のオフィスには、いわゆる「会議室問題」というのがありまして。なかなか皆で集えない。もっというとオフィスを結構オープンな感じにしていたのですが、会話が生まれやすいようで生まれていませんでした。
一度フリーアドレス化しようとしましたが、結局皆がそれぞれ同じ席に固定で座り始めて、やはり仲間同士で同じようなメンバーで話すようになってしまい、オープンな空間ではあるものの、そういった状況に危機感を感じていました。
当社のコアバリューである「オープン&フラット」という、入社した年次やポジション関係なく、会社やお客様のことを考えた発言であれば部署や役割を問わずに徹底的に話し合う、という考え方をすごく大切にしています。会社のため、お客様のため、ひいては社会のためにも壁、部署をこえた議論が生まれて欲しいと考えています。
そこに理想と現実にギャップみたいなものが事実としてあって、このコアバリューを浸透させたいというのが1つと、それが従業員間で自発的に生まれやすい空間に再設計したいという思いがありました。

そういう意味でハード面としてenKAKを採用されたのですね。ソフト面で何か仕掛けはありますか。
オフィスをご覧いただくと、いたるところに、くどいほどに当社のビジョンが書かれています。会議室も1部屋ずつコールセンターのお客様への向き合い方を定めるカスタマープロミス(お客様に対する行動の約束)の頭文字である「HOME」(Hospitality、Observant、Match、Expert)をそれぞれとって部屋に名前をつけています。
オフィス空間からビジョンを浸透させていくことで、当社の価値観を従業員の皆さまに大事にしていただきたいと思っているので、このような工夫をしました。

まずは従業員のウェルビーイング(Well-Being)の実現から
リモートワークが普及するなかでやはりインナーブランディングといいますか、社内向けの情報発信を行う機能もオフィスの重要な意義ですよね。
我々がウェルビーイングを実現していきたいと言っていても、従業員の皆さまがウェルビーイングじゃなかったら、お客様に当社の思いを届けることはできないと考えています。
月に一度程度、全従業員が集える社内イベントを開催していますが、例えばコールセンター、オペレーターの方も来やすいようなハロウィンパーティーをやって、そういう楽しさと、ここで働くことにより生まれるエンゲージメントの拡大・向上を意識しています。
オフィスは会社の資産ですが、当社の最大の資産は従業員の皆さまです。従業員の皆さまが力を発揮しやすくなることに対して先行的に投資していく、そういった形で空間を創っていくというのも、従業員の皆さまに対する1つのウェルビーイングの提供の仕方かなと思っています。
ソフト面ということでは、そういったことを意識して取り組んでいますね。
それから、オフィスの設計を決めるにあたっても、上層部のみで決めるのではなく、従業員の皆さまに参加いただき決めていきました。
オフィスにサイクリングチェアを置きたいとかヨギボーを入れたいとか、会社の経営状況がわかるようにして欲しいとか、全ては実現しなくてもそういうことも含めてワークショップを開催し、皆でどのようなオフィスが働きやすいか、働きたいかを経営と従業員一体で設計するように意識しました。

オフィスへの愛着にもつながりますよね。
実際オフィス移転されて、部署同士の横断はより活発的になったと感じられますか。
確実にそのように思いますね。
結局、完全にフリーアドレスというよりは部署ごとにゾーニングで分けて進めているのですが、他部署同士立ち話しをしているところを多く見ますし、あとはファミレス席で話しているところもよく見るようにはなりました。
少し難しい質問にはなってしまいますが、今後の展望も踏まえ、働く価値の向上にむけて現在御社で取り組まれていることや大切にしていることはありますか。
やはり、会社としてオープンであることです。
自分たちのマーケットを自分たちで創っていけるというのは、すごく面白いと思っています。会社の方針として決めたのでこうしてください、みたいなトップダウンでの決め方は極力したくなくて、皆さんとディスカッションしながら色んなことを決めていきたいです。
一般的によくある消費財やサービスとは異なって、自分たちでマーケットを創っていく分、求められるレベルは高くなっていきますが、皆さんが自分でそこに楽しさとオーナーシップをもって、それがやる気につながってくれたらいいなと。

あとはオフィス空間でいうと、今回のように従業員の皆さまが交流できる場を増やしていくのも、オーナーシップを高めるという上でも非常に大切かなと。
報酬は勿論大切ですが、会社の目指す価値に共鳴してくれて、「自分がこの事業を大きくしていく」であるとか、「お客様のために」であるとか、そういった気持ちが一番のロイヤリティになってくると思うんですね。
大げさではなく、我々のサービスに共鳴いただけるパートナー企業が、各々の設立から何十年も守り続けてきた信頼のブランドを提供頂いて一緒に事業をしてくださるって、ものすごいことですよね。
これだけの期待を頂いている分、お客様の不安や不便を解消して安心して過ごしていけるウェルビーイングを感じるお手伝いをさせて頂く、まさに地域が解決できないものを我々だから解決できる、これはオーナーシップのその先の誇りであり、家族にも語れる会社になる、それを自分たちが主役になってつくっていく実感が湧くと、さらにロイヤリティが高まると考えています。

社会貢献を自ら主体となって担っている感覚ですね!
とても心に響きました。本日はありがとうございました。